桑田佳祐 feat. 佐野元春, 世良公則, Char, 野口五郎 「時代遅れのRock’n’Roll Band」の遊び心。ハマ・オカモトをPVに起用した意図とは?

TBSラジオで毎週金曜日8時30分~午後1時まで放送の「金曜ボイスログ」
シンガーソングライターの臼井ミトンがパーソナリティを務める番組です。

このnote.では番組内の人気コーナー
「臼井ミトンのミュージックログ」の内容を書き起こし。
ちなみにyoutube版では動画も公開しているのでそちらも是非。

桑田佳祐 feat. 佐野元春, 世良公則, Char, 野口五郎 「時代遅れのRock’n’Roll Band」の遊び心。ハマ・オカモトをPVに起用した意図とは?

豪華メンバーのもの凄いコラボ

つい先日、桑田佳祐さんが同い年のロックシンガーたちを率いてシングル曲をリリースしました。
その曲のタイトルが、ずばり「時代遅れのRock’nRoll Band」。

「桑田佳祐 feat.佐野元春, 世良公則, Char, 野口五郎」という名義で、
凄まじい豪華メンツ、凄いコラボです。

ネット記事なんかによりますと、桑田さんが世良公則さんと会ったときに、コロナ禍だったりウクライナ情勢だったり、この閉塞感漂う世の中に対してなにか同い年のミュージシャン同士で発信出来ないか。という話になった
そうで、せっかくだったら同い年のギターボーカル達が勢揃いしてコラボ
したら面白いんじゃないかと思いつき、桑田さん自身が佐野元春さん、
Charさん、野口五郎さんに声をかけて実現したという、スーパーコラボなんですね。

全員66歳、発売日が6月6日、曲名が「時代遅れのRock’nRoll Band」、、
ということで、あらゆる部分に66という数字を引っ掛けてるという桑田さんらしい遊び心も散りばめられているんですが・・・

ロックファンなら頭に浮かぶ「Traveling Wilburys」

ロックファンにとってはですね、ちょっと毛色の違う5人のスーパースターが大集結するといえば、とあるバンドを間違いなく連想するはずなんです。それが、1980年代終わりから90年代初頭にかけてごく一時期だけ活動したスーパーコラボレーションバンド「Traveling Wilburys」でございます。

TheBeatlesのメンバーとして知られるGeorge Harrison、彼がおそらく中心になって結成されたバンドで、他のメンバーはBob Dylan、Tom Petty、ELOのJeff Lynne、そしてロック黎明期から活躍する超レジェンドシンガー、Roy Orbison。

彼ら5人は5人とも揃いに揃っての大スターで、一緒にバンドをやるなんて
ことはちょっとにわかには考えられない話なんですよ。
特にBob Dylanなんて孤高の一匹狼のキャラで売ってますから、当時この
バンドはロックファンの間で大変話題になったんですね。

レコード会社の壁を越えてのリリース

しかも、彼らは所属していたレコード会社がそれぞれに違いましたので、
余計に一緒にバンドやってアルバムをリリースするっていうのは物凄い衝撃だったんです。

というのも、普通、一般的に歌手・アーティストっていうのはレコード会社と専属契約っていうのを結ぶんですね。
非常にビジネスライクに言ってしまえば、歌手っていうのは、契約しているレコード会社の利益に結びつく活動をしなければいけないんです。
だから、所属しているレコード会社が異なるアーティスト同士が、
作品を一緒に作って商品にするっていうのは契約上は非常に難しいことなんですよ。

だって、違うレコード会社のアーティストの作品に参加するっていうことはですよ、自分の所属会社のライバル企業の利益になるようなことをするってことになっちゃうじゃないですか。だから基本的には契約上、アーティストは好き勝手に誰とでもコラボ出来るわけではないんです。

例えば、どうしてもレーベルの垣根を超えてコラボしたいっていう場合は、「専属解放」って言う手続きが必要で、まぁ言ってしまえば、そのレコード会社所属のアーティストをうちの作品でお借りする替わりに、ちゃんと支払うべきものは支払いますし、オタクの会社名もちゃんとクレジットしますよっていうそういうレコード会社間の約束事ですね。

よく、CDやレコードのクレジットの最後の方に、例えば、、
「B.B.King appears by the courtesy of ABC Records」なんて書かれている、
俗に言うコーテシー表記ってありまして、音楽好きにとってはお馴染みの
表記だと思うんですけど、これってつまり、BB KingはABCレコード様の
ご好意によってこのアルバムへの参加が実現しました。っていう意味なんですね。まぁご好意って書き方してますけど分け前は当然払ってるんですけどね、ビジネスですから。

で、George Harrison率いるスーパーコラボバンドであるTraveling Wilburys、これはもう各レコード会社のドル箱スターが集結しちゃってますから、当然専属解放の手続きというか、取り分どうするかっていう事前の取り決めは
相当しっかりと事前に調整されていたんじゃないかと思われます。
契約社会のアメリカの大手レコード会社ですから。

〝覆面バンド〟という驚きの方法でデビュー

ところが、なんと、彼らはレコード会社をまたいでのスペシャルコラボ感を演出するために、覆面バンドとしてデビューするんですね。メンバー全員
偽名で、アーティスト名は伏せてレコード出したんですよ。

つまり、レコード会社の同意をとりつけられなかったので、覆面でモグリでレコードリリースしちゃいました。っていう感じを敢えて演出したんです。でも彼らレベルの世界的な知名度になると、歌声聴いたら一発でわかりますし、そもそも顔出しでPVとかもガンガン流してましたから、覆面バンドっていうのは完全に演出だったって誰にでもわかるわけなんですけどね。

実際に事前にレコード会社間でちゃんと話はついてたみたいですけど、
やっぱりロックアーティストですから、大手レコード会社に歯向かってぶっちぎりました、みたいな感じを出したかったのかもしれません。
特にBob Dylanはそういう演出大好きですからね。あとは世界的なスーパースターが偽名でレコード出すという話題性、インパクトもありますしね。

だからね、今回の桑田佳祐 feat.佐野元春, 世良公則, Char, 野口五郎のコラボも、せっかくなら覆面バンドの設定でプロモーションして欲しかったぁ!って思ったロックファンは多分僕だけじゃないと思うんですよね。誰が歌って誰がギター弾いているのか、演奏で当てるみたいな。

オマージュだらけのPVに注目

でも、80年代はMTVでビデオ流すのとラジオくらいしかプロモーションが
なかったですけど、このご時世テキストでネット検索にひっかかるかどうかっていう、アルゴリズムによるマーケティングが非常に重要ですから、覆面バンドはロマンあるけどなかなか難しいんだろうなぁ、とは思いつつ。
この今回の桑田佳祐さん達のコラボ、Music Videoを見ると、ロックファン心をくすぐるめちゃくちゃTraveling WilburysのPVのオマージュが散りばめられているんですよ。

ギターケース持って集合してマイク1本を5人で囲んで交互に歌うっていう。Handle with Careという曲のPVのオマージュになってるのが、憎いところ。ちなみに、このMVには特別出演として、Hound Dogの大友康平さんが、
やはり同じ66歳ということで特別友情出演、ドラムを担当、WilburysでいうJim Keltner役を担当、で、桑田さんの妻・原由子さんも同い年ということで、キーボード担当。ところがベースを弾いているのが、ハマ・オカモトさんなんです。

31歳のハマ・オカモトさん出演の意図は…

で、なんでベーシストは同い年でないハマ・オカモトさんなのか。。
もちろんハマ・オカモトさん素晴らしいベーシストですし音楽の世界でも
テレビの世界でも大活躍されてますけど、ここまで全員66歳で揃えてきて、発売日も6月6日。何故ベーシストだけ31歳のハマ・オカモトさん??

でも、実はここが桑田さんなりの最大のTraveling Wilburysオマージュなんですよ。ハマ・オカモトさんがやっているバンドって、OKAMOTO’Sというバンドですけど、このバンド、誰一人岡本さんという名字の人はいなくて、芸名として全員が岡本姓を名乗っているんですね。

で、Traveling Wilburysもさっき、スーパースターが全員偽名でやってたって説明したじゃないですか?Traveling Wilburysは、メンバー全員その偽名の苗字がWilburyなんですよ。例えばGeorge HarrisonはNelson Wilbury名義で、Bob DylanはLucky Wilbury名義なんです。
バンドメンバー全員が同じ名字に統一して芸名をつけるっていう点で、Traveling WilburysとOKAMOTO’Sには共通点があるんですね。

だから、MVに登場するベーシストが唐突なハマ・オカモトなんですよ。桑田さんの細かすぎて伝わらないオマージュなんですが、僕は気付きましたってことを自慢したい一心で今日の音楽コラムは桑田さんの新曲
「時代遅れのRock’n’Roll Band」についてお話しました!

曲には<同級生で集まって歌う><タイムリーに世界情勢に声をあげる>
など、敢えて“時代遅れ”とも言われかねないアクションを起こすことで、
“次の世代に向けたエール”と“平和のメッセージ”を届けたいという想いが
込められており、本楽曲を通じて得られる収益の一部は、困難に直面している世界中の子どもたちの未来といのちを守るため「Save the Children」に寄付されるそうです。

桑田佳祐 feat.佐野元春, 世良公則, Char, 野口五郎で、てゆうか野口五郎さんが入ってるとこが最高なのよ。この人ほんとにギター上手くて、途中Charさんとのハモリツインギターっていう見せ場もちゃんとあって・・・それではお聴きください、「時代遅れのRock’n’Roll Band」

youtube版では動画で同様の内容をご覧いただけます。

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