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梅は勝手に取っているわけではありませんと言いたかった話。

昔、地名に「梅」がつくところに住んでいた。

地名の通り梅の木が多く、6月にはあちらこちらでたくさんの梅の実がなり、ほんのりと甘酸っぱい香りに包まれた。

ある日、町内清掃をしていた私と近所のママ友に梅の木の持ち主のおじさんが、梅を好きなだけ取っていっていいよと言ってくださり、私たちは喜んで梅の木に駆け付けた。

おじさんは、梅がありすぎて困っているから、腐らせてしまうよりもらってくれるほうが助かると言って、私たちに取ってもいい梅の木の範囲を教えてくださった。

おじさんは、しばらく私たちと一緒にいてくださったが、5分もするとすることがなくなったのか、終わったら勝手に帰っていいから、と言い残して軽トラックに乗ってどこかへ行ってしまった。

私たちは、ただでもらっていいのかしらね、なんて言いながらも手は休めずに梅をたくさん取っていた。

そこへ、近所の方が通りかかった。

その人は、私たちを見るなり上から下までジロジロと不審者でも見るような目つきで睨んできた。

無理もない。

おじさんがいないと私たちは勝手に梅の実を取っているおばさんたちでしかなかった。

叫びたかった。

勝手に梅を取っているわけじゃないんです!
ちゃんと許可をいただいています!

おじさん、来年からは私たちのそばを離れないでください。
って、来年も取らせてもらう気満々のずうずうしい私。

でも、夫の転勤で次はなかった。残念。


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