雨戸のせいで
学生時代、よく泊まりに行かせてもらっていた友達の家があった。
普段は2階の彼女の部屋にお邪魔していた。
ある日、どんな理由があったのか忘れてしまったが、1階の客間で彼女と寝ることになった。2階で寝るときは雨戸をつかっていなかったが、1階の客間は雨戸を使っていた。
雨戸が閉められた部屋は当然真っ暗だ。深く寝るには非常に適している。
だが、その晩彼女は私に恋バナをしてきた。私は襲い来る眠気と戦いながら必死で恋バナに花を咲かせるべく頭を回転させ、何とか口を動かしていた。
「トムとジェリー」の一場面のようにまぶたが落ちてくるのを支える棒が欲しいと真剣に思いながら、暗闇の中で必死になって目をこじ開けていた。
が、やがて、限界がきた。
♢
私は北海道出身なので、雨戸というものにそれまで縁がなかった。東京に出てきて、一人暮らしを始めた部屋にも雨戸はあったが使っていなかった。
なぜなら、朝になっても部屋が真っ暗で起きられないからだ。
それなのに、友人の家で深夜遅くまで恋バナに花を咲かせ、限界まで起きていた私に起きたことは、よそのお宅に泊まっていながら、翌日の昼まで寝てしまうという失態だった。
友人のお母さんが「いつもはすぐに起きてくる美和ちゃん、今日は全然起きないわね」と言っていたそうだ。
心配して様子を見に来た友人が、客間の引き戸を開け部屋に光が差し込んだ瞬間、私は飛び起きた。
寝ぐせの付いた頭で、自分がどこにいて何をしているかわからなかった。
「美和~、もうお昼だよ」の声に、恥ずかしさがこみ上げてきた。
「うそ」
それ以来、彼女の家の1階に私が寝かされることはなかった。
今でも時々、雨戸の開け閉めをするとき、この日のことを思い出す。
最後までお読みいただきありがとうございます。
また、次のnoteでお会いしましょう。
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