📧スティーブ・ジョブズの遺した教育の重要性と日米教育の違い「リベラル・アーツ」⑤(2019年10月)

ポッターさん

2020年9月18日 22:09

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スティーブ・ジョブズが世界に遺した物はなんだったのか。

これからの時代に求められるものを考えてみたいと思います。

2011年10月5日15時、現代においてこれほど世界にイノベーションを何度も巻き起こした人はいなかったと語られる実業家、経営者が天国へ旅立ちました。
スティーブ・ジョブズ--不世出の天才、奇人、変人…世界初のパーソナルコンピューターApple1を世に放ち25歳にして富裕層の仲間入り。

その6年後に自分が立ち上げた会社を追放され、スター・ウォーズなどのルーカスフィルムが設立したコンピュータアニメーションの会社Pixarを買収・収益化してアニメ界の巨人ディズニーの度肝を抜き、

そして倒産まであと数日まで追い詰められたアップルに戻り、最大のライバルであったマイクロソフトから資本協力をしてもらい(InternetExploreをMacのブラウザに採用)、魔法のように会社を蘇らせ、今日の世界最大の時価総額企業への道を切り拓いた稀代の経営者。

1998年スケルトンカラーのiMacで「パソコンは一人一台」の時代の到来を宣言して Apple再生の狼煙を上げると、

2001年には当時それが新しい常識に成りかけていたP2P※による海賊版の音楽視聴を一掃してiTunes/iPodで合法的に音楽の楽しみ方を変え、

2007年世界初のスマートフォンiPhone、2010年iPadと立て続けに多くの人たちのライフスタイルやビジネススタイルを変えてしまいました。

ジョブズは亡くなる前の晩、自宅のベッドの上でテレビ中継されたアップルの新製品発表会(iPhone4sの発表)を見守り、そして翌日昼過ぎに家族に見守られながら旅立ったそうです。

※NapstarやWinMX、Winnyなどのピア・ツー・ピア、違法のファイル交換ソフトのシステムに使われた技術。後に発展して現在の暗号資産、ブロックチェーン技術の基礎理論となる。

スティーブ・ジョブズが生前に遺した言葉の中に「文系と理系の交差点」というものがあります。
近年で言えば「リベラルアーツ」と呼ばれる概念です。リベラルアーツとは本質的には学問でなく欧米における「教養」の意味に近いと言えます。
しかしこの教養と、日本人が使う知識を単に詰め込んだ「知っている」というものではなく、同じ物事を見ても様々な視点から物事を見ることや物事の 奥行きを観る視力に近く、洞察力のようなニュアンスを含んでいます。

誤解を恐れずに言えば、多くの日本人の中学や高校の進学は何をやりたいか学びたいかが固まらないうちから理系か文系かを選択させ(もしくは数学が苦手だから文系、現代文が苦手だから理系などを選んだり)、「学部」ごとに入学試験を受け、仕事選びは卒業見込みの学部や学科よりも「大学名」が重視されます。

欧米の大学は「大学」そのものに入学をして、日本で言えば1-2年の間にリベラルアーツを学び、その培った基礎・土壌の上に日本における「学部・専攻」であるメジャーを決めます。つまり種を蒔きます。
社会に出る時、つまり収穫する時には学校名ではなく、この会社に入って何が出来るのか、つまり「専攻」が重んじられます。社会が求めるのは「何が出来るのか」「何を学んできたのか」が最も重要であり、次いで学位・大学名となっていくそうです。

欧米の大学教育の賛否(入るよりも卒業する方が大変、日本と比べ物にならないほど授業料が高く、大学院まで進学は当たり前、ダブルドクターまで取らないと業界によっては面接さえしてもらえないなど) 兎も角、この仕組みの違いによって大学で学ぶ内容は社会や企業で役立つ知識や技能重視ということになります。
こうして実用性の高い知識や技能を身につけた優秀な学生たちが卒業を待たずに起業して誕生した会社がGoogleやFacebookです。

日本で多くの大学生が学ぶのはリベラルアーツではなく、日本の社会で働く上での知識、与えられた仕事や知識を身につけてこなすという「一般教養」です。そこに創造力や応用力はまずありません。
しかもこの一般教養は、日本という斜陽社会における教養なので学ぶ側にとって本来は皮肉と教訓であるはずですが、学んでいる学生たちはその先に待つ就職活動のために実に生真面目にそれを社会の常識として一生懸命、コピーロボットのように負の遺産を身につけようとします。

結果、その他大勢と同じリクルートスーツに身を包み、同じような髪型で面接に向かい、上の立場の人間が言うことは正しいと本心を押し殺した指示待ち人間、創造力のない思考停止したアンドロイドのような人格が完成します。

そして日本という社会は空気を読んで皆で手つないで仲良く平成の30年間をかけて沈んでいきました。
空気を読まなかった企業と経営者はこれまでの常識を覆し、対日経平均株価で株価を4倍以上まで伸ばしています。(楽天・三木谷会長による新経連株価指数)

あと10年もすると日本は先進国から外れます。先進国(市場)とは投資の世界において Developed Marketsと書きますが、Developedとは発展しているという意味です。日本はもはや発展していないのですから間も無く先進国でなくなるのです。

「教育は人格の完成を目指す」とは明治時代に作られた教育勅語の一節ですが、戦後の日本の教育はこの言葉をアジアを征服した危険な帝国思想(軍国主義)の一つとして削除しました。
良くも悪くも日本では教育が平成を経てもなお昭和の成功体験から硬直していると言えます。(システムを作っている官僚たちがそういう硬直化した社会で生きているのですから仕方ない面もあります)

日本では多くの大学で文系に分類されている経済学ですが、欧米やごく一部の日本の私大では理系扱いですから、グローバルな社会において日本の人材が十分に活躍できないのもなるほどと頷けます。

太平洋戦争終戦から74年が経ち、とにかく言われたことを黙ってやる、一生懸命やることが評価の基準だった高度経済成長期の日本では国や地方自治体、親会社や元請け会社、上司の言うことを聞いてさえいれば食に困ることがありませんでした。

しかし時代はグローバルな競争力が求められ、年功序列は崩壊、終身雇用も瓦解寸前、祖父母や両親の生き方をなぞるだけでは先細る世の中になりました。
こんな時代に生き残るのは自分の頭で考え、自分の人生を切り開いていくことが出来る人たちです。
間もなくAI(人工知能)に多くの職業が奪われる時代がやってきます。