📧英国は何故EUから離脱をしたがったのか？⑥(2019年7月)

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British×EXIT= Brexit(ブレグジッド)
英国の欧州連合(EU)からの離脱、自殺行為と評価するIMFやEU視点から語られることが多い一方で、離脱を選んだ英国の内情と英国のEC加盟当時の時代背景を振り返ってみたいと思います。

国連に次ぐ世界組織コモンウェルス有する英国

そもそも英国は島国であり、欧州の大陸文化(ドイツやフランスなど)と相容れない風土があります。

グレートブリテン島だけでは経済と産業を維持することは出来ず、海を隔てた世界各地にイギリス連邦(コモンウェルス)と呼ばれる旧植民地など53カ国を束ねる組織を現在も維持しています。
代表国のオーストラリアやニュージーランドは今も国旗にユニオンジャックが残っていますし、カナダやインド、マレーシア、シンガポールもイギリス連邦の加盟国です。

キプロス
マルタ
パキスタン
スリランカ
マレーシア
シンガポール
バングラデシュ
ブルネイ
トリニダード・トバゴ
ジャマイカ
バルバドス
バハマ
グレナダ
ドミニカ国
セントビンセント・グレナディーン
セントルシア
ベリーズ
アンティグア・バーブーダ
セントクリストファー・ネイビス
ガイアナ
南アフリカ共和国
ガーナ
ナイジェリア
シエラレオネ
タンザニア
ウガンダ
ケニア
ザンビア
マラウィ
ボツワナ
レント
スワジランド
モーリシャス
セーシェル
ナミビア
モザンビーク
カメルーン
ルワンダ
トンガ
サモア
フィジー
パプアニューギニア
ソロモン諸島
ツバル
キリバス
バヌアツ
ナウル

これらの国々は元々イギリスの植民地でしたが、独立後の今日もなおエリザベス女王を頂点とした連盟を築いています。
これは国際連合(UN)に次ぐ国際組織の規模を誇り、世界人口における約4分の1 にあたる20億人が加盟しています。EU離脱後に英国がこの旧大英帝国経済圏をどう活用してくるのか、中国の一帯一路と並んで注目を集めています。

英国がそもそもEU（EC)に加盟した動機は？

そもそもEUの前身EC(欧州諸共同体)の更に前、1952年に設立されたECSC(欧州経済連合体)の頃からイギリスは欧州経済との一体化に距離を置いてきました。

各国が植民地を増やすためにアフリカやアジア、そしてアメリカへと渡った16～18 世紀、欧米列強を抑えて世界を制したのがイギリスでした。
イギリスは自国語を植民地と自分たちの貿易交渉のスタンダードにして、
世界の基軸通貨として自国通貨ポンドを金と固定レートで交換することを約束した金兌換制を用いて世界の経済を掌握しました。
しかし19世紀(日本は明治時代初期)に入りノーベル賞に名を冠しているアルフレッド・ノーベルによるダイナマイトの発明が契機となり、石炭から石油へのエネルギーシフトが急速に起きました。

石油を自国で消費量以上に採掘できるのは19世紀当時はアメリカとロシア帝国などに限られ、これらの国々は急速に力をつけていきます。

スエズ運河を巡るロスチャイルド家の活躍と大英帝国の躍進・凋落

石油の取れない英国は石油の採掘が見込めるとされた中東に手を伸ばそうと1834年にエジプトの地中海側、カイロに次ぐ第二の港湾都市アレクサンドリアと紅海(インド洋に繋がるアフリカとアラビア半島に挟まれた海)を鉄道(エジプト最古の鉄道路線)で結ぼうと計画を進めますが、フランスが1859年にスエズ運河の建設をエジプトと組んで始めた事で中断…自分たちが鉄道建設でエジプト人に強制労働を強いていることは棚に上げて、フランス人がスエズ運河建設にエジプト人の強制労働を強いていると国際社会でバッシングを繰り返して建設に反対しました。

その癖、スエズ運河が完成するとこれを嬉々と利用してアフリカ喜望峰周りの約半分の日数で行ける航路として活用を始めます。
(この時代には既にインドに東インド会社を設立して交易で英国は莫大な利益を得ていた)

そして当時のエジプト政府はヨーロッパ各国から行政・司法・軍備の近代化のために債務を借りていて首が回らなくなりつつあることを知り、スエズ運河の管理会社の株式が売り出されるタイミングにロスチャイルド家を走らせ、48時間後にはスエズ運河会社を英国政府のものとしました。

その後エジプトは債務をめぐり英仏による管理下に置かれ、スエズ運河を支配する英国がその後72年に渡って実効支配することになりました。

英国はその後も二枚舌外交ならぬ三枚舌外交で今日のパレスチナ問題(第一次中東戦争)の火種を作り、あの手この手で石油などを確保に奔走しますが、第二次大戦後の膨大な戦時国債に追われ、戦地から離れていて空襲の被害もヨーロッパと比べて少なく経済成長著しいアメリカに世界の覇権を譲ります。
その後の世界の基軸通貨となったアメリカドルもベトナム戦争の長期化で金・ドル兌換制を1971年に放棄します。

スコットランドと英国の成り立ちをゆるがす諸問題

1973年に第一次オイルショックが立て続けに起こるとイギリスはかつてポンドが世界の基軸通貨とした金本位制で行き詰まり崩壊した経験と重ねて、アメリカ経済の凋落と世界のグローバル化を予見し、いよいよECへ加盟を果たします。加盟の目的は中東からのエネルギー資源などの共同調達でした。

ところがこの当時掘削をしていた北海油田の開発に1980年代に入ると成功し、英国は石油輸出国になりました。結果、ECとしての連盟を組むことのメリットがその後急速に薄れていきます。

更に北海油田の開発によって経済的に豊かになったブリテン島北部スコットランドが英国からの独立を主張し始め、1707年のグレートブリテン島統一以来の独立運動は住民投票によって可決。英国議会から1979年に政治的独立を目指しますが、英国議会で否決され火種が燻り続けました。
1997年にスコットランド出身のブレア首相によって再度の住民投票によってスコットランド自治政府による自治が英国議会で認められ、2013~2014年の独立運動の下地となりました。

英国を構成する主たるイングランドからすれば長い歴史と遺恨、そして様々な無理難題を押し付けてくるEUにはできればいつまでも残りたくないが、
スコットランドに独立されては独立した経済を維持できないというダブルスタンダードにあります。
また1980年代に自国で消費する以上の石油を取れるようになった英国ですが、その後は採掘量の停滞・減少と消費量の増大によって1990年代に再び石油輸入国に戻ってしまいます。

英国が共通通貨ユーロに参加せず、自国通貨ポンドを利用し続けた訳と離脱のきっかけ