テレワークをした経験が、働き方や就業不能リスクを考える時に役立つ話
テレワークしてますか?
新型コロナウィルスの感染拡大に伴う外出自粛などによって在宅勤務やオンライン学習などが期せず始まって間もなく4年が経とうとしています。
現在のテレワークやオンライン授業の原型となるのは何でしょうか。
私の記憶にある範囲ですと1980~90年代には大手予備校が衛星中継で名物講師による「サテライト授業」を展開したり、2000年代にはインターネット回線の高速化に伴って中小企業なども会議や連絡事項などを「テレビ会議」が活用されるシーンがありました。
恐らく現在のテレワークの原型はこの辺りと言えるのではないでしょうか。
現在のテレワークやオンライン授業などの良し悪しはこうした時代から殆ど同じ問題が指摘されてきましたが、通信回線の高速化と通信機器の高性能化によって直接会って参加する会議や打ち合わせの"代替案"として多くの人がコロナ禍によって半強制的に経験することになりました。
そしてやってみたところ、思いのほか良かったとする声も多く業務の効率化や働き方に大きな変化が起こるきっかけとなりました。
変化に弱いとされる日本人ですが、食わず嫌いならぬ、やらず嫌いが如何に多かったのかを表しているようでもあります。
コロナ禍の外出自粛などは何も働く世代だけでなく、ゴールデンウィーク・お盆・お正月などの田舎への帰省でもスマートフォンのビデオ通話を用いた「オンライン帰省」として一部にはシニア世代の中でも経験をすることになりました。
我が家では90代半ばの祖父(2022年末に他界)とLINEビデオ通話での近況報告が始まりましたし、〇回忌法要などもビデオ通話で参加が定着しつつあります。
国もこうした状況を鑑み、医師への診察・相談などを「オンライン診療」として2022年4月から初診からの活用が解禁されました。
健康保険証をマイナンバーカードに連携させる取り組みも始まったことで、今後は更に本人確認や治療歴・処方されている薬などの医療情報を取得できることで利便性の向上だけでなく治療の効率化などが期待されています。
私たちFP・IFAの仕事でも、今や保険会社・証券会社の会議・研修はほぼオンラインセミナーとなりましたし、お客様との相談も初対面など一部を除き若い世代を中心にオンライン面談が殆どになりつつあります。
Microsoftのサティア・ナデラCEOはコロナ禍に入った直後の2020年5月にこう述べています。
今までだったら相談者に「Skype」と言っても通じる人には通じるけど、通じない人には「私、Skype使ったことがないので…」と言われていたところが、今や「Zoom」(またはWebExやTemas)の一言で殆どの人に通じるのですからこの2年半の変化はとてつもないものだと思います。
こうした急速な変化はオフィスの在り方にも変化をもたらしています。
大手広告代理店の電通はテレワークの普及などで港区汐留にある本社ビルの必要性が変わったと2021年6月に売却を発表、不動産大手ヒューリックなどが2680億円で買うことになりました。
地方の人口減少による過疎化などとは対称的に人口の流入と企業の集中が続いていた東京でもコロナ禍を機に空室率が一時上昇に転じました。
賃料はやや低下したものの現状は横ばいとなり、東京都がコロナ禍前に行った調査による2025年人口流出超を前に地価への影響も懸念され始めています。
対面の重要性にシフトする企業
一方でテレワークが日本よりも遥かに進んでいると考えられていたインターネット検索の最大手Google(親会社Alphabet)は2021年9月にニューヨークのハドソン川沿い「セントジョンズ・ターミナル」を21億ドル(約2300~2400億円相当)で購入し、オフィスを構えることを発表。2022年1月に引っ越し。
本社こそ西海岸のシリコンバレーに構えていますが、世界的なビジネス都市であり、ヨーロッパにもアクセスのよい東海岸に大きな拠点を構えることで今後の事業への意欲を感じられます。
またAmazon.comやMicrosoft、Apple、Meta(Facebook)、SalesForce.comなどもニューヨークのオフィスや研究施設を拡張したり移転を行っています。
1990年にニューヨークのオフィス需要の48%を占める金融サービス業(保険を除く)が2020年には35%となった一方で、TAMIセクター(テクノロジー、広告、マーケティング、情報関連企業)は16%から25%と拡大し、近い将来の逆転も起こり得そうです。
しかしGoogleをはじめIT系企業はテレワークやオンライン会議が日本よりもずっと進んでいそうですが、本社や大きな会議室、相談スペースなど今更必要なのでしょうか?
彼らの言い分はこうです。
リモートワーク(ハイブリットワーク)の利便性を認めつつ、人と人が直接会ってコミュニケーションを取って行う仕事の"価値の高さ"を再評価する動きは巨大IT企業のみならず世界中で広がり始めています。
テレワークという仕組みはその人の業種と働き方に大きく依存しています。
IT系の職業とは言え、現場に行かなければ仕事にならないこともありますし、営業職とは言え、オンライン面談やオンライン手続きで事が済んでしまうものも中にはあるでしょう。
代表例では理容師・美容師は顧客と直接会わなければ髪を切る事、整える事、髪を染める事などの仕事が出来ません。
スーパーやコンビニ等の業務もレジ打ちなどはセルフレジやAmazonGo(試験店舗)の自動精算機などの普及でやがて省力化されてくるとは思いますが、商品の陳列から消費期限チェック、レジ横フードの調理、清掃やレイアウト替えなど将来的には移行しそうですが、現時点ではまだまだ人に依存せざるを得ない部分も沢山あります。
テレワーク可の仕事は有事の際に有利
ライフプランやリスクについて考える時、このテレワークに仕事を切り替え可能かどうかはとても大きな要素だと考えています。
たとえば大きな病気や怪我などをして療養期間が長引いてしまった場合、通勤や長い時間の労働、現場に足を運ばなければ成り立たない仕事だと完全復帰までに時間を要します。
しかしテレワークに切り替えが可能な仕事の場合には、自宅にいながら働くこともできますし、テレワークを終えて出社することになってもデスクワークを中心に働くことが出来ます。
コロナ禍で期せずして多くの人が経験することになったテレワークは近年注目されている「働けないリスク」における収入ダウンをある程度低く見積もれる可能性があります。
「働けないリスク」こそリスクの移転
過去にも取り上げた事ですが、リスクマネジメントは大きく2つの考え方を組み合わせて検証します。
リスクマネジメントマップとリスクマネジメントフローです。
そもそも論ですが、リスクとは想定できるリスクと想定外の二種類があります。
想定外のリスクは備えることが全く出来ないのではなく、状況に応じて優先事項を見出し、それに近いことを選び行動をするだけにしておくのです。
そして想定され得るリスクはこれに加えて、リスクマネジメントマップを活用します。
一例として地震対策の場合のリスクマネジメントマップに分類すると起こる頻度が高く、経済的損失も大きい場合、「Aリスクの回避」が有効です。
つまり頻繁に大きな揺れが起こる地域にはそもそも住んではいけないという事です。
避難または移住を検討することが大切になります。
次に発生頻度は高いが、経済的損失が大きくない場合には「Bリスクの防止・軽減」が有効です。
備蓄や家具の転倒防止などの備え、避難所の確認などです。
起こる頻度は低く経済的損失が少ない場合、「Cリスクの保有」が有効です。
つまり食器などが多少割れた所でまた貯金で買い直しましょうという話です。
起こる頻度は低いけれど経済的損失が大きなリスクは「Dリスクの移転」が有効です。
いつ起こるかわからず、預貯金で備えきれないの大きな損失は、損失が起きた場合の補填を肩代わりしてくれる保険で備えることが有効です。
生命保険の備えで「働けないリスク」は公的年金加入者が対象となる障害年金、自治体が障害者の経済的負担を軽減するための障害手帳など商品ごとに幾つかあります。
しかし仮に普段からテレワークに切り替えが可能な仕事の場合、働けないリスクが生まれても例えば車椅子の生活を余儀なくされても症状によってはテレワークで仕事の継続が可能です。
平日毎日車椅子で電車やバスで通勤するのは大変ですが、たまに出社してあとは在宅でも働ける仕事などの場合には「働けないリスク」と言っても療養費の他の減収はそれほどないかもしれません。
こうした人の場合には、寝たきりなどかなり重度の「働けない状態」*にのみ絞って備えることも選択肢になってきます。
つまり保険金額を減らすのではなく、保障範囲を限定することで保険料は節約できます。
多くの人が誤解していますが、確かに生命保険は素晴らしい金融商品ですが、万能ではありません。
職業も年齢も、お金の使い方や未来への展望、家族構成も家族への想いという価値観も一人一人異なります。
全ての人に万能な商品がない以上、契約者と保険募集人は互いに自分に本当に必要な保障は何かを心を傾けて真剣に話し合う必要があります。
保険募集人は仕事だからプロとして当たり前ですが、契約を検討する人も自分の人生に対しての捉え方の意識を高めていく必要があります。
日本は世帯加入率89%と世界トップの生命保険加入率を誇りますが、金融リテラシーの一部であるリスクマネジメントについて特にその理解力は低いとされています。
検討者である顧客が自発的に学ぶ事、保険の必要性を学ぶ一番の近道は保険会社で働くことです。
これは証券投資でも言えますが、情報の非対称性の罠にはまっているのです。
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