📧GAFAはもう古い!?返り咲くあの帝国の復活と日本企業の凋落⑥(2020年2月号)

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”GAFA”の次に来るのはどの企業？

2018年は適温相場と呼ばれる米国株式市場で世界中からの投資マネーを呼び込みIT企業全盛期を彩った企業たちのイニシャルから”GAFA”という言葉を眼にしない日はありませんでした。 

いわゆるIT企業の中で2020年以降も底堅く更なる成長が期待されているのがMicrosoftではないでしょうか。 

90年代には市場独占と言っても過言ではないパソコンの基幹ソフトWindowsを数年ごとにメジャーアップデートしていきました。また仕事に欠かせないOFFICE(Word/Excel/PowerPoint)で市場を席巻したのは今や遠い昔。 

2000年代には音楽市場ではiPodに対抗しようと発売したZUNEで大失敗。スマートフォンではAppleの後塵を拝し、Nokiaを買収までして取り組んだWindowsPhoneは全く普及せず、買収したSkypeは後から登場したFacebookやLINE、WeChat、Zoom などに置いてかれた感があります。 

”帝国”とまで呼ばれたMicrosoftはかつて一世を風靡したサン・マイクロシステムズやDell、hp、IBMのようにこのままジリジリと市場での存在感を失っていくのかと思われていた2013年、ビル・ゲイツ、スティーブ・バルマーに替わり三代目CEO就任によって別企業へと変身しようとしています。 

Microsoftの90年代から2000年代の変遷はまるで日本企業の栄光と挫折に似ています。 圧倒的な力で市場を席巻してどの会社のパソコンにもWindowsとOFFICEが入っているのが当たり前でした。 

2代目CEOによる恐怖と支配・独占・買収とやらかしの時代

ビル・ゲイツが退任を目前にした2000年、反トラスト法(日本における独占禁止法)での規制がかかるとほぼ同時に二代目CEOバルマー氏が会社の舵取りを引き継ぎます。 

難しい局面で市場での占有率をこれ以上高めても効果がないと判断してライセンスに対して容赦ない訴訟を世界中で行い、またOSサポート期限を強化。買い替え需要を喚起する方針に切り替えました。 

また法人向け需要の囲い込みを率先してWindowsサーバーの展開を行い一定の効果を挙げますが、クラウドサーバーへの転換ではAmazonが提供する世界最大のAWS(AmazonWebService)に先行され、CRMではセールスフォースドットコムに追いやられ、市場での存在感がどんどん小さくなっていきました。 

2007年にAppleが初代iPhoneを発表すると次の様に相当強気な発言をしていました。 

「iPhoneが市場で大きなシェアを取ることはあり得ない。可能性はゼロだ。（中略）しかし13億台の携帯電話が販売されていることを考えれば、その60％か70％、あるいは80％に当社のソフトウェアが搭載されるようにしたい。Appleが確保できるのはせいぜい2～3％だろう」

　しかし結果的にAppleのiOSと米GoogleのAndroidの後塵を拝し、全く市場での存在感を示せなかったのはMicrosoftの方でした。 

その後、北欧の携帯電話会社Nokiaを買収しましたが、時すでに遅くWindowsPhoneは同社の歴史の中でWindowsMe、ZUNEと並ぶ黒歴史の一つとなりました。また2010年以降はiPadを代表とするタブレット端末も世界的には普及しましたが、 Microsoftがタブレット端末Surfaceを発売開始したのは2012年に入ってから。しかもパソコンである事から離れられなかったインターフェイスはパソコンとしてもタブレット端末としても中途半端になりました。 

インド出身3代目CEOによる大転換

2014年2月に3代目CEOとしてインド出身のサティア・ナデラ氏が就任するとiPad向けにOFFICEを無償提供開始するなど、かつて倒産目前まで追い詰めらたAppleがMicrosoft資本を受け入れてInternetExploreを搭載したMacintoshを発売した意趣返しをします。 

経営の神様と謳われたピーター・ドラッカーを尊敬しているナデラCEOは「企業文化は戦略に勝る」を合言葉に社内の敵対心や内輪揉め、裏切りが蔓延していた社内の雰囲気を変えてしまいました。 

ナデラ氏は1992年、研究所向けワークステーションなどUNIX系のOS開発で独り勝ち状態だったサン・マイクロシステムズ(2010年に現オラクルに買収され法人格は消滅)からWindows3.1をリリースしたばかりのMicrosoftへ転職しました。 

サーバーやクラウド、検索エンジンMSNサーチ、Bingなど同社にとって決して主力ではない部門で働きながら頭角を現し、2014年にCEOに就任しました。 
それまでのMicrosoftは同僚をいかに蹴落とし、足を引っ張り自分が帝国の上のポジションに行くか…このようなことが後を絶ちませんでした。 

しかしナデラ氏は「社員一人ひとりが難題に立ち向かい、乗り越えようとすることで、個々人が伸び、その結果、会社も伸びる」と語り、一人一人の成長を求めたのです。
経営者のこの姿勢は社員、そして取引先にも波及効果をもたらしました。
友達（friend）と敵（enemy）を合成した「フレネミー」という言葉が現在のMicrosoftでは浸透しています。 

かつてデータベース市場で覇権を争った米国オラクル社とクラウド相互接続開始、ゲーム市場では最大のライバルであったPLAYSTATIONのソニーと提携。
かつてのCEOはライセンス料を取らないオープンソース(Linux)を「ソフトウェア市場のガン」と酷評していたのに、今日では自前技術に限らずLinuxとも技術協力をしたり、ライバル企業であるAppleのiOSからの技術導入にも積極的に協調するようになりました。
まさにフレネミー、”昨日の敵は今日の友”です。 

「過去の成功体験が変革の障壁になる」 

昨日の敵は今日の友”フレネミー”と成功体験からの脱出

かつての成功体験に喜び、それに安穏としている間に日本企業が世界で存在感を小さくしていった姿は、Microsoftが巨大化して出世争いで内輪揉めをして、ユーザーを置いてけぼりにして新しい潮流を見逃したそれと重なります。 

世界中のどこの業界を見てもMicrosoftほど桁外れの成功体験を収めた企業はないでしょう。そしてその成功体験に囚われた経験と、そこからの自己改革をなし遂げたことを考えると日本企業がかつての成功体験から脱却するためには経営者だけでなく、従業員一人一人が成長するということが欠かせないのではないでしょうか。 

帝国植民地支配から成熟した成長支援型企業へ

再起動したMicrosoftはApple、Amazonに次いで2019年4月24日に米国3番目の1 兆ドル企業になり、2019年8月現在世界一の時価総額企業に返り咲きました。