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第720回「今日のベトナムニュース解説」不正企業の「とばし」を防ぐため762社を資産凍結処置へ

本日の記事:
「Van Thinh Phat社に関連する762社の資産を凍結」
Title:
" Assets of 762 firms related to Van Thinh Phat frozen "

記事リンク:https://english.thesaigontimes.vn/assets-of-762-firms-related-to-van-thinh-phat-frozen/


(写真:今回の不正の首謀者たち 一番左が会長のTruong My Lan)


【本日のポイント】

(1)ベトナムの不動産大手Van Thinh Phat の不正事件に絡み「資産隠匿」を防ぐため関連の762社の資産を凍結したと発表

(2)ベトナムでは一般に血縁者間の関係性が親密なので、そういった縁を利用した「飛ばし会社」が多用されているのは周知の事実

(3)今回の事件でも、このようなところまでを含めて公安当局の調査の手がどこまで届くのか注目される

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【解説】

アジアゲートベトナム代表の豊田です。

さて、今日の記事について。

今、ベトナムを騒がせている「大疑獄事件」がございまして、それが今回のタイトルにも出ている「Van Thinh Phat社」でございます。

ホーチミン市に拠点を置く同社は現在、会長のTruong My Lanを初め役員などが債券発行などに絡む詐欺行為で告訴されています。

首謀者である中華系ベトナム人のTruong My Lan(66歳)はベトナムでは大変著名な実業家で彼女の夫も香港の不動産起業家だそうです。

元々、 Lan容疑者は1992年にサービス業の会社としてこの「Van Thinh Phat社」を設立し、その後、不動産分野に進出、ホーチミン市の一等地に多数の主要プロジェクトとビルを所有するなど大成功しました。

まずは元手は少ないが日銭が入るサービス業からスタートして、その後不動産投資に回して、という典型的な華僑のビジネス手法で大成功した彼女ですが、先月初めに資産横領の疑いで拘束され、公安当局が彼女をはじめとする容疑者たちが資産を他の会社に移して偽装する「飛ばし」をしないよう、Thinh Phat Holdings Group Corporationに関連する762社の資産を凍結した、と発表した、というのが今日のニュースです。

この資産凍結対象の762社には国営の建設会社Civil Engineering Construction Corporation No.6(Cienco6)も入っているので民間の話だけでは済まないかもしれないですね。

まぁ、しかし、ベトナムは「血縁」が多少でもあれば、その人間を使ってダミー会社や飛ばし目的の会社をいくらでも作るのは私なんかは日常的に見ているので、まぁ、どこまで追求し切れるか、というところでしょうが、、、

ベトナムに来て日本人なんかが感じるのは、その「一族郎党の中の良さ」だと思います。

実際、私なんか日本人の駐在員によく聞くんですが、

「この中で自分の兄弟姉妹の息子さんのために大学の学費を借金してまで支払ってあげよう、という人がいますか?」

と。

そうすると、日本人であればほとんど手が上がらないですが、ベトナム人の場合、大半が手を挙げる、というのが実情でしょう。
(ただ、10年以上ベトナムにいて、都心部に関しては結構、人間関係がクールになってきてるなぁ、、とは感じますが)

こういうのを見て

「日本の昭和の頃のようだ」

と、心が温まる日本人は多いわけですが、逆の面から言うと、この「一族郎党を含む血縁関係の濃さ」は不正を行う場合には、ベトナムで企業を行う外資系企業にとっては完全に「見えない角度から飛んでくるカウンターパンチ」みたいなもんで防ぎようがない最大の脅威になることも少なくなりません。

特に不動産仲介や人材紹介、教育産業、サービス業など「情報」という「形のないモノ」をビジネスにしている場合、顧客リストの流出、優良客の横どり、サプライヤーに一族会社をかまして中抜き、など、まぁ、この辺はあるある、ですが、調査しても、その従業員の妻や子供、兄弟姉妹くらいまでなら何とかなりますが、これが叔父叔母、従兄弟くらいになってくると、もうだいぶ厳しく、さらに「叔父叔母の会社の従業員」とかになったら完全にアウトですよね(実際にあった例です)

なので、ベトナム企業とM&Aする時なんかはよほど慎重にやらないと、そういう無敵の「ループホール(抜け穴)」に全く気付かないうちにはめられ、そしてずっと気付かないままになってしまいますので。。。

以上 豊田英司
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