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人事評価制度への「過剰な期待」のリスク

日本やベトナムでいろいろな企業様の人事評価制度の作成のお手伝いをしていてずっと思ってきたことがあります。

それは

「人事評価制度を導入したからといって、目に見えて従業員のモチベーションが上がった、とは、ならないよなぁ、、、、

ということです。

逆に「パンドラの箱」ではないですけど、人事評価制度を導入する前より不満が吹き出しているケースすらあるよなぁ、、と。

もちろん、これは、あくまでも私の今までの経験上の意見なのですが。

ちょっと、これについて「なぜか?」を考察してみるたいと思います。

まず、人事評価制度のおおまかな定義としては、

従業員の業務パフォーマンスについて、

・どのような成果や行動、役割や能力を評価対象とするかを明示する
  (=評価項目の明示)
・その評価する対象の項目について、優劣をつけて何段階かの評価をつける
  (=評価の導入)
・その評価の結果に応じて昇給額や賞与額、手当などに差をつける
  (=評価による報酬差の設定)
・さらには、その評価結果を人材育成や配置などにも活用する
  (=適正配置の促進)

概ね、このような定義になろうと思います。

で、従業員数が少ないうちは、社長は一人一人の日々の活動や成果を見つつ、主観的に評価を決めたり、もしくは、

「うちはまだ人事評価制度がないから、個人評価はなし」

ということで、会社業績をメインに昇給や賞与を決め、さらに、全員の仕事上の役割と給与額をざっと見たときに

「ちょっと、この人の給与は安すぎ(高すぎ)て、バランス悪いな〜」

という方がいたら、少し、「鉛筆なめなめ」して、ちょちょッと調整する、みたいな感じだと思うんですよね。

で、従業員が増えてくると、だんだんと、一人一人の業務を細かく見ていられなくなるので、

「よし、人事評価制度を導入しよう」

という話になってくるわけです。

が、この時に問題だな、と思うのが

「だから、もう、以前のように一人一人の仕事上の成果や行動を見なくて済む」
「評価結果についての説明も、シートがあるから、以前ほど、長々としなくていい」

と、人事評価面談や従業員の日々の活動や成果のチェック、そしてフィードバックを怠るようになってしまいがちです。

「だって、人数が増えて、それができないから、人事評価制度を入れたんじゃん」

と言えばそれまでですが、、、、

しかし、そこは理屈じゃ割り切れない部分もありますよね。

評価される側の立場に立ってみれば、特に従業員自身の期待よりも低い評価を受けてしまった時には、やはり、

・この上司、そもそも、俺の仕事の結果やプロセスをちゃんと見てるか?
・この結果について、自分の意見を全然、聞いてくれないじゃないか
・この評価項目にないところでも頑張ってるのに、それは無視されたのか?

という不満が出てくるのは仕方がないと思います。

「いや、評価シートにある通りです」

では納得しないですよね。

「人数が増えてしまって、一人一人を見てられないし、説明してられないから、人事評価制度を入れて、今までより手間を省く」

という「効率化」の発想になってしまうのは、非常に危険な「本末転倒」だと思います。

難しいのは承知の上ですが、従業員が増えてきたとしても、いかに直接のコミュニケーションや業務結果・プロセスの観察を減らさないか?

そこに加えて、事前に「目の付け所」である評価項目を事前に明示することで、評価の一貫性や分かり易さを向上させて、従業員の方にとっても、「前よりも評価に対して納得度が良くなった」となるか?

結局は、こういう姿を目指さないと、「人事評価制度を入れた割には、全然、従業員のモチベーションが上がらないよなー。なんなら、差をつけてしまったばかりに文句が増えた」みたいな「よくある話」につながってしまうのかなぁ、、と思ったりします。

やはり、自分の仕事に対する「評価」をされると言うことは非常にセンシティブな問題で「理屈」と「感情」、いずれも満足させないと、なかなか、効果的には機能しないので、人事評価制度を導入したからといっても、従業員一人一人の仕事状況への観察やコミュニケーションは疎かにできないですよ、という結論かなと思います。

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