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J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004より第5楽章 シャコンヌ ニ短調 4分の3拍子

 J.S.バッハ(1685-1750)は、ケーテンの宮廷楽長時代(1717-1723)の1720年頃にこの曲を含む、無伴奏ヴァイオリンのための三つのソナタと三つのパルティータ(BWV1001-1006)を書き上げた。バッハはそれまで単旋律楽器、あるいはリピエーノ楽器と考えられがちであったヴァイオリンの機能や、重奏法、ポリフォニックな演奏技法をここで大きく発展させた。ソナタはイタリアの教会ソナタの様式に基づいているのに対して、パルティータはフランスの宮廷舞曲を並べた組曲の様式に基づいている。パルティータ第2番は、第1楽章アルマンド、第2楽章クーラント、第3楽章サラバンド、第4楽章ジーグという当時の組曲の定型をとり、第5楽章に壮大なシャコンヌを置いている。

 シャコンヌは、中南米の踊りにその起源を持つと云われ、その後スペインに伝わり、バロック時代にフランス、ドイツ、イギリスに広まった。3拍子の舞曲で、短いバッソ・オスティナート(バス定型)、または繰り返される和声進行の上に、変奏を築き上げていく一種の変奏曲である。このシャコンヌでは、8小節の主題を30回変奏している(ちなみに変奏の回数については諸説あるが、バッハは意味を持つ数字を、作品の中に作品番号や小節数、音型などとして取り入れることがある。シャコンヌでは「3」という数字が、例えば3拍子であることや、ニ長調の部分で繰り返し出てくる3音動機などとして表れる。バッハは敬虔なプロテスタントの信者であり、彼にとって「3」は「三位一体の神」の象徴であったためだ。このことから変奏の数も30回という説をとりたいと思う)。この作品はニ短調で始まり、ニ長調に転調し、再びニ短調に戻るという、三つの部分から成る。主題は当時のフランスのパッサカリアやフォリアに典型的な第2拍に付点のリズムを使うという手法で書かれ、和声的な進行を主としているため、響きはオルガンのようである。
 この曲は後に数多くの作曲家が編曲しており、ブゾーニやブラームスのピアノ編曲版は特に有名である。

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