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グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 作品45

グリーグ/ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 作品45
 E.グリーグ(1843-1907)は、民族ロマン主義を代表するノルウェーの作曲家である。彼は21歳の時に、ノルウェーの国民楽派の作曲家の一人であるリカルド・ノルドロークと出会ったことがきっかけとなり、「ノルウェーの自然、民衆の生活、歴史そして民衆の詩を書くこと」を生涯の目標とするようになった。彼は後半生、ノルウェーの奥地に住んだり、山岳地帯への旅行を通して、民族音楽に基づいた創作を行った。
 この作品は、彼がすでに作曲家として成功した後の1886年から87年にかけて作曲された。この時期、彼が住んでいたベルゲン郊外のトロルドハウゲンの家に訪れていた客の一人であるイタリア人の若いヴァイオリニスト、テレジーナ・トゥアに触発されて、このソナタの着想を得たと云われている。初演は名ヴァイオリニストのアードルフ・ブロツキーと彼自身のピアノにより行われた。

第1楽章 Allegro molto ed appassionato ハ短調 8分の6拍子


本格的な展開部がなく、主題を三つ持ったソナタ形式で、第1主題に基づくコーダで締め括られる。長調と短調の変換や、3度転調、半音階の進行など、グリーグの民族的特徴が伺える。

第2楽章 Allegretto espressivo alla Romanza - Allegro molto – TempoⅠ ホ長調 4分の2拍子


高音域によるピアノのソロで、ノルウェーの森や泉を想像させる主題に始まる。中間部は彼のソナタの緩徐楽章によくみられる活気のある雰囲気を持ち、アクセント、シンコペーション、保続低音を伴うノルウェー風舞曲となる。再びヴァイオリンが高音域で最初の主題を奏でる。光を散りばめたような和声進行や、抒情性が大変美しい曲である。

第3楽章 Allegro animato ハ短調 2分の2拍子


やはり展開部を持たないソナタ形式。ノルウェー舞曲風である第1主題は、5度音程の分散音によるピアノとヴァイオリンの掛け合いである。第2主題は、ピアノが重厚な和音のシンコペーションを奏し、ヴァイオリンはG線~A線のハイポジションでたっぷりと歌う。再び第1主題に戻り、2回目の第2主題では、ヴァイオリンは力強く、ピアノは分散和音となり、1回目とは違った美しさを持つ。コーダはこの曲の同主調であるハ長調となり、今までよりテンポを上げ、掛け合いながら終わる。

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