#リプきた番号のワードを使って文を書く

Twitterでやったワードパレットのやつです。小説が書けないので短いエッセイを2本書きました。ラブストーリーと、ツイッターの話です。送ってくれたフォロワーさんありがとうー!

使用報告不要のようですがTwitterではないので一応作者様のリンクを貼らせていただきます。素敵なお題で楽しかったです〜!→ https://twitter.com/wisteria_saki/status/1142378041844236289?s=21

2.アルプヤルナ

・甘い ・突風 ・飲み込む

 揚子江気団は、「ズルい」気団だ。その甘い響きは中学生の私を恋に落とした。

 「揚子江気団」という名前のイメージは、特に共感覚持ちというわけではない私にも容易に想像できた。淡いピンクと柔らかい生成色。微かに混じる灰色。桃園郷の白昼夢のような気だるさ。ああ、名前だけでもこんなに素敵。

 春の訪れを告げる突風にはっとさせられる。まだ寒いよ、と思いつつ、〈君〉が今年も私のところに来てくれたことにこそばゆいような気持ちをおぼえる。今日はあたたかいのね、昨日はずいぶんつめたかったのに。いいよ、〈君〉になら弄ばれるのも悪くない。

 中学の教科書にはあまり顔を出さなかった〈君〉をさがして、高校生になった私は地学の教科書を捲る。堂々と輝く〈君〉を見つけて思わず笑顔になった……なんてことはなく、また、小さく載った名前を見るのみだった。そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。桜舞う日本列島を包み込む大気のこと、みんなに知ってほしいよ。でも、優しいから〈君〉なんだ。〈君〉のこと、知ってほしいけど秘密にしたい。そんな相反する感情さえ、私ごと飲み込んでくれる〈君〉の訪れを、雨降る窓をながめながら想う。また来年。


5.フィエスタ

・休息 ・緑 ・振り向く

 点滅する信号にそっと胸を撫で下ろす。あの調子なら、私がたどり着くころには赤信号になっていることだろう。前方では、生き急いでいるのか死に急いでいるのかもわからないような人々が私を追い越して走っていく。赤色のひかりに照らされて、私は立ち止まる。電車の音がうるさいなぁ、なんて思いながら、小さなポケットからiPhone6Sを取り出す。二十二時。

 束の間の休息さえも許容しない緑信号が苦手だ。塾にいた四時間、フォロワーは何をしていただろう。この時間は、世界から取り残された私を掬いあげてくれる。だから、わざわざ赤信号を目指す。電車の時間は単語を覚えたほうがいいだろう。家に帰って、夕食、入浴、もう零時。そうしたら、少し本を読みたいな。やっぱり、今日の私が世界、ないしFF十六人の箱庭と繋がる時間は今しかない。

 支離滅裂なタイムラインに不思議な安寧をおぼえる。各人の時間の片鱗をとらえる。ちょっと前までは到底遡りきれなかったタイムラインを、もう遡り終わってしまった。私が知り得るみんなの時間は、日に日に希薄になる。きっとじきに、何もなくなる。

 ふと後ろを振り返ると、苛立ちを隠しきれない様子で信号を待つ人々の群れが見えた。鳥の鳴き声が流れて、たくさんのひともながれる。一人、またひとりに追い抜かされる。私はまた、世界から取り残される。

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