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黒光の彼

わたしは実家を離れて一人暮らしをしている。
帰ってきても待っている人はいない。

夜になればしんと静まりかえるワンルームで1人、生活をしている。

別にさみしくはない。もう慣れてしまっているのだ。

でも、、、ついつい期待してしまう。
いつか誰かがおかえりと出迎えてくれる世界、、、


今日は休日。
外は夏の日差しが照り付け、歩いているだけでくらくらしそうだ。
そういった日は家にいるに限る。

エアコンの効いた部屋で横になりながら、動画を見漁る。
お腹が空いたらそうめんでも食べようか。

そうだらだら過ごすのもいい。

陽が落ちて少し涼しくなってきた。
少し散歩に出かけよう。
すぐ近くのコンビニまで。

お気に入りのメロンパンを買おう、あとはお茶と、、、
今日はやけに家族連れがよく目立つ。

実家にいた頃は、帰れば母がおかえリンボーダンスと言ってきた。
そしてわたしはただいままーと返すのだ。
久しぶりに電話でもしてみようか。

非常に短い散歩を終えて家に帰る。
ここまではありふれた日常の1ページに過ぎない。

そう、いつもと同じだったのだ、、、
玄関のドアを開くまでは。

突然目の前に飛び込んだ光景に、息をのむ。

白い壁紙によく映える。
黒光したその身体。

キッチンの横に佇んでいた。

どうして、、、ここにいるの?
見間違えるはずはない、彼に、わたしは彼に会ったことがある。
数年前のあの夏に、、、

彼の名前は「G」
大家族と知られていて、彼が現れたところには200人は彼の友人がいると
噂されるほど社交的だった。

乾燥肌で洗剤はさわれないから、調理実習は調理担当。
つまみ食いもよくしていた。

寒いのは苦手でなかなか現れないけど、あったかくなると突然現れて
みんなを驚かせていた。

足が早く身体は丈夫で、でもどこかミステリアスで、、、

そんな気まぐれな彼のことがわたしは苦手だった。
近づかれたら嫌な態度をとっちゃうから、もう会うことのないように
彼を遠ざけようとした。

そう、この黒い帽子(ブラックキャップ)で。

効果は的面で、それから彼に会うことはなかった。
もう会うことはないと思って生きてきた。
なぜ今ここに現れたの?

おかえりと言ってほしかった。
でもそれは、あなたじゃない。
そう思うわたしは、わがままかな。

ここに、きてほしくなかったよ。
もう、終わりにしよう?わたしたち、、、

スプレー缶に手を伸ばし、先端を彼に向ける。

さようなら、、、G、、、

シューーーーーーーーーーー


今日もわたしは1人、ワンルームでそうめんをすする。

ーendー

最後まで読んでいただきありがとうございました🌸
実体験をもとに脚色を加えて書いてみました✨
みなさんも黒い帽子で侵入を防いで気をつけてくださいね😊

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