マガジンのカバー画像

あいまい日記

15
思考のローカストホール
運営しているクリエイター

記事一覧

あいまい日記15 ─あなたを追うものを見よ

あなたを追うものがある。 例えば仕事。家事。人付き合い。趣味。 あるいは老い。 あなたは逃げ切れない。 すでに捕らえられた身体を見捨てて、 心だけが心許なく、時間の影に隠れようとする。 すでに尻尾はつかまれている。 生きている限り、身体はいつもここにあるからだ。 その爪が心に届くのも時間の問題だ。 身を翻して向き合いなさい。 とくと見よ。 敵の姿を知るとき、 あなたは自分の姿もまた知るだろう。 意志が命となり、命を燃やしてあなたは進む。 追い込まれるな。 見て飛

あいまい日記14 ─掃除

脳は考えてしまう。 取るに足らない言葉やアイデアが膨大に泡立っている。 発生した泡が自然消滅するよりも少し早く次の泡が発生し、 徐々にバッファを埋め尽くしていく。 視界(思界)が悪くなっていく。 美しい言葉やアイデアが見逃されていく。 排出するべきだ。 たゆまず排出し続けるべきだ。 泡を、ノイズを、雑草を。 そうして開けた思界。 そこで美しい言葉やアイデアを探索し、 手際良く表現にしていく。 視界は思界の投影だ。 あるいは思界が視界の投影かも知れない。 思界をクリアに

あいまい日記13 ─世に歩みの定まる者なし

他人を欠点を指摘するのは簡単だが、 しかしそれで他人を変えるのは難しい。 自分の欠点をありのままに理解するのは難しいが、 しかし他人を変えるよりは自分を変える方がずっと簡単だ。 矛盾にまみれた私たちの世界。 誤謬にあふれた私たちの言葉。 どこまで自分自身を騙し通せるか。 そんなチキンレースが日々催されている。 怖いのは誰もがそれに無自覚なことだ。 あなたも。私も。 世界は“良い世界”にとっていつも危なっかしい。 誰かに甘える個人主義者。 それは不誠実だ。 己の足で立

あいまい日記12 ─異星人たちに囲まれて

“生まれる星を間違えた”という感覚が常に響いている。 地球の人間社会に生きる人々が、少なくとも生物学的には同質なはずの同胞たちが、一人残らずあまりに異質な存在に思える。 その価値観が。生活態度が。社会性が。 うまく具体例が挙げられるわけではない。 日々の社会生活に全然馴染めていないということもない。 ”自分は彼らとは違う”というある種のエリート意識でもない。 ただただ、あらゆる他人がどこまでも遠く感じる。 賑やかに活動する人々さえ、都市の遠景を眺めているかのような、静的な印

あいまい日記 11 ─すべてが経験

生きている限り全てが経験だ。何もしていなくても「何もしていない」という経験を生きている。経験が途絶えるのは(おそらく)死んだときだけだ。 美味しいものを食べる。旅をする。いろいろな仕事をする。恋愛をする。成功をする。失敗をする。宝くじに当たる。破産する。大怪我をする。大病を患う。犯罪に巻き込まれる。etc... いわゆる「人生経験」なるものの正体は「おもしろく語られやすい経験」のことだ。そういうことをしないと、その分だけ人生に占める無の領域が広がるというわけではない。例え

あいまい日記 10 ─「幸福」について

「幸福」とは何か。それは結局のところ「幸福感」のことだと思っている。じゃあドラッグなどで手っ取り早く「幸福感」を得られるとしたらそれ良いかというと、そういう話でもない。「幸福」とはシンプルに「幸福感」だと仮定して、そこで重要になるのは幸福感への「感受性」を健全に高めて、緻密に把握していくことだ。そして「人生を通じての幸福」を理解することだ。 私が「幸福」について思うとき、いつも以下の言葉が響いている。 人はおおむね自分で思うほどには幸福でも不幸でもない。肝心なのは望んだり

あいまい日記 9 ─「思考の虫」を解き放つ

最初の記事が6月26日であり、今日でちょうど2週間。毎日1つは欠かさずに書いてきた。 日々、狭い頭の中で大小いろいろな「思考の虫」がブンブンと飛び回っている。そいつらを1匹ずつ、文章の網でとらえてnoteにリリースしていくことで、自分の中から段々とノイズやストレスが減ってきているのを感じる。私にとっての「noteの効能」がまず1つ得られたわけだ。 もし実際には私のnoteを誰一人まともに読んでいないのだとしても、「誰かに読まれ得る場所」に思考の虫たちをリリース(解放)して

あいまい日記 8 ─「嘲笑」から一歩引く

Twitterを筆頭に、インターネット上での「議論」で嘲笑的な態度を見ないケースはほとんどない。そもそもの議題は切実なものであることが多いはずなのに、議論の実体は、(一見して)いかに「正当に」「瑕疵なく」論敵を皮肉り嘲笑するか、いかにオーディエンスをその態度に同調させるか、そんな「技巧大会」になっている面があまりに強すぎる。ニュース記事やテレビでも嘲笑はよく見られる。やらかした人に対して。思想や感性や立場で対立する相手や集団に対して。ある人、あるいはある人々について、彼や彼ら

あいまい日記 7 ─アウトプットによる「意識空間」の拡張

皆さんは自分の頭の中の「意識空間」の広がりをどう感じているだろうか?「意識空間」というのは、たった今私が勝手に考えた言葉だが、単純に自分の意識や思考の能力を空間的にイメージしてみたときの感覚的な広がりを指している。 私は自分の意識空間がとても狭苦しいように感じている。一度にそこに出しておけるものが少ない。今こうして書いている間も、奥行きが見えない乳白の霧に、四方を1メートルほどの距離で囲まれてるイメージがあり、身動きが取りにくい中で目を凝らして、なんとか一つずつ言葉を釣り上げ

あいまい日記 6 ─善悪は遠く彼方

日々働いてる。今日の仕事、明日の仕事が、誰にどんな影響をもたらしていくのかは不明だ。良い仕事は概ね良い結果を生む。悪い仕事は概ね悪い結果を生む。少なくとも目に見える範囲では。「私の仕事は世の中に必要なものなのだろうか?」「世界を良くするために私に何ができるだろうか?」そういう想いが浮かび上がってくることもあるだろう。そういう想いは、それを具体的な目的や行動に結びつけられる人なら有益なモチベーションになるが、私はそうではない。むしろ精神的に不健全なときにこそ、そういう想いが頭に

あいまい日記 5 ─平日の生活サイクル

09:50に起床。10:00に家を出る。10:45事務所に到着。コンビニで買ったドーナツとカフェオレ。Yahooニュース。11:00から仕事をはじめる。14:00頃には昼食に出る。15:00仕事再開。カフェイン100mg。18:00小腹が空くのでコンビニへ。チョコかナッツ。21:00片づけをして帰宅。22:00夕食。22:30仮眠。00:00ゲーム、動画、文章。03:00入浴。04:00就寝。 平日のタイムスケジュール。もちろん多少ゆらぎはあるが、平均すると大体こんな感じだ

あいまい日記 4 ─誰も人生を知らなくて、本当に良かった

人生一般について解明した人間は、この地球上のどこにもいない。歴史上にも一人もいない。勝手にそう確信している。極めて優れた人というのは、あくまで何かを“うまくやる”ことについて優れているのであって、それは特別なことや神秘的なことを知っていることを意味しない。哲学者は未だに死を解明してくれない。世界中を旅するとか、苦難の末に事業を成功させるとか、いわゆる「人生経験」を経験し尽くした人は、魅力的な自伝を書く以外のものすごい爪痕を世界に残したことはあるだろうか。いや、何か恨みや怒りを

あいまい日記 3 ─書くことは“重み”の付加

文章化するということについて考えてみる。書くことの目的を決めてnoteを始めたわけじゃない。むしろ書き始めて気づいてことだが、書くことは、自分の中にある思いやイメージに“重み”を付加していく作業なのかもしれない。他人の頭の中がどうなっているかは知りようもないが、私の頭の中では思いやイメージというのは宙を舞う薄片のようなものだ。すこし強い風が吹けば、つまり何か注意が引かれるようなことがあったとき、簡単にどこかへ飛んでいってしまう。それらは書かれて情報になることで“重み”を得て地

あいまい日記 2 ─私という川にどうか綺麗な魚を住まわせてほしい

生活をいかにコントロールするか。毎日やること。毎週やること。毎月やること。これは○時間やる。あれは△時間やる。すると睡眠は□時間になる。1日を時間で腑分けしていく。ひとつずつ処理していく。向上していく。摩耗していく。途切れる。諦める。幾度も試みてきた。無理なのか?やり続けて来れたことはなんだろうか?一つ、グラフィックデザインの仕事。これはもう10年を超えた。途中、1年ほどブラブラしていた時期はあったが、それを経て、やはり私にはこの仕事だと、それ以前よりずっと明確な想いを得て、