あいまい日記 6 ─善悪は遠く彼方
日々働いてる。今日の仕事、明日の仕事が、誰にどんな影響をもたらしていくのかは不明だ。良い仕事は概ね良い結果を生む。悪い仕事は概ね悪い結果を生む。少なくとも目に見える範囲では。「私の仕事は世の中に必要なものなのだろうか?」「世界を良くするために私に何ができるだろうか?」そういう想いが浮かび上がってくることもあるだろう。そういう想いは、それを具体的な目的や行動に結びつけられる人なら有益なモチベーションになるが、私はそうではない。むしろ精神的に不健全なときにこそ、そういう想いが頭に場所を占め、想いに反して自分の営みの無価値な面ばかりをひたすら夢想して、ある種の悦に入ることになる。「世界を良くしたい」「この世から悪を減らしたい」そういう普遍的な善悪は私の射程には収めることができない。今の行いに注力して進んだ先、近づいて初めて目的地を見出す。その程度の視野だ。遠くを見通すための自前の眼は持っていない。距離のメタファーで語るなら、本は望遠鏡だろうか。本を通して、はるか遠く霞の向こうに、善悪の影をかすかに捉える。いずれにしても歩みつづけることだ。今日も明日も歩みつづけることだ。生きることの意味も、善悪もわからない。わかるためには試みつづけるしかない。
人は行為を企てずして、行為の超越に達することはない。
また単なる〔行為の〕放擲のみによって、成就に達することはない。
(中略)
あなたは定められた行為をなせ。
行為は無為よりも優れているから。
【引用】バガヴァッド・ギーター/訳:上村勝彦
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