見出し画像

Vlag yokohama 公式レセプション|トークセッション①~【佐宗邦威×鎌田恭幸】戦略家2人が語る「長い目で見ること」の重要性とは?~

横浜からイノベーションを──。
 
6月20日、横浜駅直結の地上42階に唯一無二の事業共創施設「Vlag yokohama」が誕生しました。
 
国際競争力の強化、経済活動拠点の形成促進を目的とした「国家戦略住宅整備事業」の第一号が横浜に竣工。
 
横浜を経済拠点として盛り上げるために株式会社相鉄アーバンクリエイツ(以下、相鉄)と東急株式会社(以下、東急)、UDS株式会社が連携し、「未来の兆し(=Vlag)溢れるクリエイティブラウンジ」を開業します。

今回はグランドオープンに先立ち実施した「Vlag yokohama 公式レセプション」から、
トークセッション①
「トランジション時代の理念とお金 ~今ある兆し、現象~」
をダイジェストでお届けします!

世界から見た日本、第4次産業革命から見た今

登壇者
・BIOTOPE CEO 佐宗邦威さん
・鎌倉投信 代表取締役社長 鎌田恭幸さん
・株式会社An-Nahal 品川優さん(ファシリテーター)
 
品川
An-Nahalの品川と申します。私自身、2019年に横浜で会社を創業しました。創業から1年でコロナ禍に突入し大変な時期が長く続きましたが、横浜のエコシステムに助けられて、会社は6年目を迎えることができました。

品川優(しながわ・ゆう)───────────────
株式会社An-Nahal(アンナハル)代表取締役
人材育成・組織開発を専門とし、D&I推進支援・人事制度設計・研修開発に携わる。独立後は世界銀行等国際機関での教育関連プロジェクトや、NPO法人での難民申請者への就労支援を経てAn-Nahal設立。世界経済フォーラムGlobal Shapers、JWLIフェローとしても活動。
────────────────────────────────

現在、横浜未来機構の事業にも参画し、組織におけるダイバーシティ&インクルージョンの推進や横浜市と連携した外国人起業家支援を事業として行っております。
 
トークセッションをサポートしてくださるのが、石橋さんです。グラフィックレコーディングで、皆さんに学びを持ち帰っていただけるよう記録していただきます。

では早速ゲストのお二人から自己紹介をお願いします!
 
佐宗
皆さんこんにちは!株式会社BIOTOPEの代表の佐宗邦威と申します。
 
佐宗邦威(さそう・くにたけ)────────────
株式会社BIOTOPE 代表取締役CEO / Chief Strategic Designer
東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科(Master of Design Methods)修士課程修了。P&Gにて、ファブリーズ、レノアなどのヒット商品のマーケティングを手がけたのち、ジレットのブランドマネージャーを務めた。ヒューマンバリュー社を経て、ソニークリエイティブセンター全社の新規事業創出プログラム(Sony Seed Acceleration Program)の立ち上げなどに携わったのち、独立。B to C消費財のブランドデザインや、ハイテクR&Dのコンセプトデザインやサービスデザインプロジェクトを得意としている。
────────────────────────────────

BIOTOPEは、戦略デザインファームとして、企業や自治体のビジョンを作り、それを実装していく支援をしている会社です。
 
このVlagでも、一人一人のビジョンを引き出すワークショップを実施していきたいと考えています。
 
私自身の生まれは東京ですが、子供の頃に横浜に住んでいました。ポストコロナの中で、都市の価値が見直されてきている中、地方と都市のバランスを考えていきたいと思っています。
 
鎌田
皆さんこんにちは!
鎌倉投信の代表の鎌田です。鎌倉投信は2008年11月、リーマンショック直後に鎌倉で立ち上げた独立系の資産運用会社です。
 
鎌田恭幸(かまた・やすゆき)────────────
鎌倉投信株式会社 代表取締役社長
1965年島根県生まれ。 1988年、東京都立大学法学部卒業。日系・外資系信託銀行を通じて30年以上にわたり資産運用業務に携わる。 株式等の運用、運用商品の企画、年金等の機関投資家営業等を経て、 外資系信託銀行の代表取締役副社長を務める。 2008年11月に鎌倉投信株式会社を設立。 社長として事業全体を統括する。
────────────────────────────────
 
主に個人のお客様向けに「結い 2101」という投資信託を運用・販売しています。
 
みんなで力を合わせ、未来につながる健全な社会を作っていきたいという思いで運用しています。
 
加えて、「トランジション(社会創発)」をテーマにしたスタートアップ支援事業も行っています。鎌倉投信に共通しているのは、お金の繋がりによって社会と未来をより良いものにしていこうという思いです。
 
現在、神奈川県それぞれの地域に経済圏がある中で、あまり交わりがないと感じています。横浜を超えて神奈川県として経済を活性化する可能性を模索するために、本日この場に来ました。
 
鎌倉投信としてできることを考えながらお話しできればと思います。
 
品川
お二人とも興味深いバックグラウンドをお持ちですね。
 
では、まず1つ目のテーマとして、『Vlag yokohama』のフラグになぞらえて、「兆し」についてお聞きしたいと思います。
 
佐宗さん、最近気になっている兆しや現象はありますか?
 
佐宗 
今、個人的に気になっているのは、海外における日本文化の評価と、そこに対してまだ日本人として手を打てていないことです。
 
昨年世界一周旅行に行き、世界中の方とお話しする中で、海外で日本の文化に注目が集まっていることを実感しました。
 
その注目は、分かりやすいアニメやゲームだけでなく、クラフトマンシップのような精神性にまで及んでいます。
 
一方で地方創生の流れもあり、クリエイティブを生業にする人たちが地方に拠点を移しつつある。そこにインバウンドの外国人観光客も来るようになっている。そういった兆しを感じています。
 
日本の文化がグローバルトレンドになっている中で、地方に点在する文化をしっかりと価値としてインバウンドや海外に伝えていく。
 
文化立国としての産業をどう作っていくかが、今後10年の課題だと考えています。
 
品川
各地方でも日本文化を魅力的に訴求できるようにするというお話ですね。
 
鎌田さんは、どのような兆しを感じていますか?

鎌田
今、投資の現場で起きている変化を見ていると、コロナで世の中が一変したというよりは、これまで水面下で起きてきた変化が一気に加速したという感覚があります。

まさに第4次産業革命の只中にいるのだと思います。

10年、20年後の日本の社会構造や産業構造がどうなるのか、大きな変化の転換点にあると感じています。

ただ、短期的な予測はできない前提での取り組みが必要です。投資でも同様ですが、長期での予測はできても、短期的には分からない。

投資においても、長期予測は可能でも短期予測は困難です。「結い 2101」という投資信託の例では、2020年3月末に56%だった黒字化率が、2021年3月末には99.7%まで回復しました。

短期的な予測やコロナの不安ゆえに損切りするのではなく、長期的な経済の発展を予測し、投資を続けた方のほとんどがプラスになった事例です。

ChatGPTを初め、ITにおいては短期的には予測できないレベルでの急速な変化が起きています。ただ、それらがあらゆる産業に影響を与え、会社や個人の提供価値に変化が起きることは予測できる。

そういった中長期の変化を見極めたいと考えています。

戦略で不可欠な「長い目で見ること」とは 

品川
予測が外れるという前提で、目に見える変化と長期的な視点の両方が必要だと。

その中で自分の軸を持ち続けるためには、どのような工夫が必要でしょうか?

佐宗
鎌田さんがおっしゃった通り、短期と長期のトレンドを分けて考えることが大切です。

ビジョン作りの仕事をする時は、歴史学や社会学の補助線を使って、100年スパンで社会の構造変化を捉えるようにしています。

そうすることで、一時的な流行なのか、大きな構造変化の一部なのかが見えてきます。

先人の知恵と長い時間軸で物事を捉える目を持つことが重要だと考えています。

品川
歴史を振り返りながら、今を多角的に見るということですね。 

お二人のお話から、トランジションの時代においては、長期的な視点と目の前の変化の両方に目を向ける必要があるということが分かりました。

では次に、このVlagから始まる新しい取り組みについてお聞きします。鎌田さん、金融の立場から取り組みたいことはありますか?

 鎌田
キーワードは「自立と協調」だと思います。今はもう一人や一社ではなく、多様なプレイヤーが連携して価値を生み出す時代です。

そのため、共感できるパーパスがないと、価値を共創することができなくなってきている。

お金のいいところは、いろいろなものを繋げる力があるところです。

多様な方からお金をお預かりして、社会にとって良いものを創造する人や企業に分配する。

金融は、資金を媒介にして多様なプレイヤーをつなぎ、新しい価値創造を促進する役割を担えるのではないでしょうか。

特に鎌倉投信の場合、神奈川や横浜、鎌倉という地域、 旅館や自治体、大学、大企業、スタートアップ...と多様なステークホルダーがいます。

鎌倉投信を取り巻くステークホルダーとの関係性を活かして、未来社会を豊かにする金融のプラットフォームを作っていきたいと考えています。

品川
金融の役割や金融機関に求められる役割も変化しつつあるんですね。

佐宗さんは、これからチャレンジしてみたいことはありますか?

佐宗
一つ興味を持っているのは、AIが実際に人々の心理にどのような影響を与えるのかということです。

AIの発展により、仕事の効率性は飛躍的に高まるでしょう。そうなった時に、人々の興味はどこに向かうのか。

僕は、ゆっくりとした時間の過ごし方や、長い時間をかけてこそ生まれる価値あるものに人々の意識が向かうのではないかと考えています。

ただ、そのような長期的に時間をかけるものには資本が集まりにくいという課題があります。

人の関心とは逆に、資本の流れる先をどう変えていくかが今後の課題だと思っています。

品川
なるほど。効率性を求める資本と、ゆっくりとした時間の中で生まれる価値とのギャップを、どう埋めていくかが問われているのですね。

日本ならではの付加価値を世界へ

品川
会場の皆さんからもご質問を受けたいと思います。

 質問者1
日本の国際競争力を高めるためのイノベーションについて、お考えをお聞かせください。
 
鎌田
まず、日本は「人口減少」という厳しい状況をビジネスチャンスに変えていく発想が重要だと思います。
 
そのためには、強みである製造業の技術をベースにしつつ、海外マーケットをどう捉えていくか。
 
今までにない視点でグローバルな繋がりを作り、新たな価値提供を生み出していくことが求められます。
 
また、若いスタートアップ起業家のポテンシャルにも期待しています。彼らの多くは最初から世界を見据えています。
 
世界を目指す新しいビジネスをこの場所から応援し、輩出していけたら面白いですね。
 
佐宗
同じく、今まで日本が強かった製造業の部品産業や、環境テクノロジーの分野には大きな可能性があると思います。
 
それ以上に重要なのは、日本にしかないオンリーワンの価値を作り出していくことです。
 
日本の自然観や美意識、職人の技といった思想的な部分を、ビジネスの付加価値として活用していく。
 
希少性の高いものに価値を見出すラグジュアリーマーケティングの発想で、日本の強みを活かした勝負をしていく必要があるでしょう。
 
質問者2
イノベーションを起こすために、大企業はどのようなマインドセットで取り組むべきでしょうか。

佐宗
2010年代はスタートアップ主導のイノベーションでしたが、コロナ後の今、大企業の役割が問われています。
 
日本企業の内部留保も高い水準にあります。金融機関だけでは担えないリスクマネーを、長期的な視点で供給していく必要があるでしょう。
 
その際、大企業がスタートアップのスポンサーとなり、パートナーシップを組んでいく。そうした長期的コミットメントが重要だと考えます。
 
鎌田
イノベーションの源泉は、自社の存在意義は何かを問い続ける探求心だと思います。
 
ステークホルダー資本主義やパーパス経営を本気でやり始めている会社が出てきました。
 
自分たちは何のために存在し、どんな世界を目指すのか。そこに対する探求があってこそ、他社との共創が生まれる。
 
パーパスに基づくビジョンを持ち、様々なプレイヤーを巻き込んでいく。そこから本当のイノベーションが生まれるのだと思います。
 
品川
イノベーションには、長期的な視点とビジョンに基づく探求心、そして多様な主体との共創が欠かせない。お二人から示唆に富むお話を数多く伺うことができました。
 
登壇者の皆さま、そして会場の皆さま、本日は誠にありがとうございました。
 
***
 
「Vlag yokohama」は「未来の兆し(=Vlag)溢れる共創の場」をコンセプトに、オフィスや会員制ワークラウンジ、カフェ&バー、ホールなどがそろう複合施設です。
 
詳細はこちらから:https://vlag.yokohama/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?