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オールコートマンツーマン

今季EL決勝にてレヴァークーゼンの無敗記録を止め見事優勝してみせたガスペリーニ率いるアタランタ
その際話題になったのはアタランタの守備「オールコートマンツーマン」です
今回はその「オールコートマンツーマン」について書こうと思います。


オールコートマンツーマン(マンツーマン)とは

マンツーマンディフェンスとはゾーンディフェンスとは違いマークする相手によって守備者の立ち位置が決まります
ボールと自分がマークする選手を同一視野に入れながら守備をしなければなりません
相手を背中で消しながら守備をするという事はせず自分の視野の中に入れマークを受け渡せるとき以外はその選手の動きに合わせてついていきます


メリット

①マークの対象がはっきりする

自分がマークする選手がはっきりするのでボールが出た際にしっかりプレスに行きやすいです
それに加えピッチ全体のどの場所でも必ず1対1で対応できるため相手を身体能力面で上回っている場合(格下相手)はより有利に立ち回れます

②マンツーマン故に生まれる集中力

オールコートマンツーマンは基本的にカバーが存在しません。その為自分が抜かれるとチームのピンチを招くことになるので常に集中を切らさず守備をしまければなりません
全て自分の責任に帰結するため味方のカバーに頼って集中力を欠くということは許されません

③ライン間が生まれない

マンツーマンディフェンスは前述した通り視野からマーカーを外さないようにするためゾーンで守ってライン間でターンされてピンチになるということがなくなります
その為相手が足元足元という様になっている時はプレスをはめやすく、相手の攻撃を停滞させやすいです

(ゾーンで守る故に生まれたライン間でロドリに受けられたプレーが起点となる アストンヴィラの4失点目 8分4秒)


ビエルサ率いるアスレティック・ビルバオのマンツーマンディフェンスですビエルサの場合最終ラインに+1で余らしておりオールコートマンツーマンではないですがマーカーとボールを同一視野でとらえれる様な守備(マンツーマンディフェンス)をしているためライン間が存在しません


デメリット

①レイオフによって一発ではがされる

例えばマンツーマンは相手のFWが中盤へ降りていけばそれについていきます
もしゾーンディフェンスであればそのスペースは他の選手がスライドしてできたスペースを埋めます(図1)
しかしオールコートマンツーマンにはそのカバーがありません(図2)

図1
図2


アタランタはレヴァークーゼン戦守備の強度が高くレヴァークーゼンに簡単にレイオフを許していませんでした
しかし、もしそこで強度を高くいけない(相手のオフザボールに遅れをとる)自分より大きな相手に背負われポストプレーをされてしまうと広大なスペースを相手に与えてしまいます

(ラウタロマルティネスのオフザボールに遅れを取る 3分10秒 アタランタの1失点目)


(自分より大きな相手に背負われる 1分18秒 ルートンタウンの2失点目)


②裏抜けではがされる

オールコートマンツーマンでない場合は最終ラインを揃えて「裏ケア」や「ライン間の選手へのプレス」を行います

しかしオールコートマンツーマンは相手についていくだけなので1人だけが裏を狙えば一人がついていく、それ以外が低い位置にいればそこに孤立ます(図3)

図3

そして距離をとって対応をしない事がある為、裏を取られるとその選手とのよーいドン勝負になってしまいます


(最終ラインに孤立する 2分47秒 ルートンタウン3失点目)

この孤立して下がっているディフェンスラインを利用して裏抜けを狙うということも出来ると思います

個人的にはマンツーマンディフェンスでも相手が蹴れる、裏抜けできる状態の時にはにはディフェンスライン全体でラインを揃えて裏ケアする方がよいのかなと思います

②一人のずれから芋ずる式に崩れていく

マンツーマンは一人でも相手のマークを外してしまうとカバーがいないため相手の選手に大きなスペースを与えピンチになってしまいます

わかりずらいかもしれませんが、これはスローンの流れからルートンタウンがスパーズをサイドで嵌めようとマンマークになっているところ、ボールサイドにいるクルゼフスキをフリーにしてしまいました
サイドで嵌めようとマンマークになっている分逆サイドは空いているため、クルゼフスキを起点にサイドチェンジされて決定機をつくられてしまいました

(スパーズの決定機  1分53秒)


マンマークディフェンスは相手のポジションチェンジにもボールと相手を視野に入れてしっかり付いていく必要があり、ゾーンディフェンスよりも試合を通して走りきる体力、相手にマークを振り切られない為のスピードが必要になります


逆に相手はこのポジションチェンジに付いていく事を利用して出来たスペースを突くということも出来ます

(ポジションチェンジを利用した裏抜け 1分20秒 コンサドーレ札幌の2失点目)

この失点はオールコートマンツーマンの弱点を突かれた事も原因ですが、ボールの出所を押さえない(イニエスタ)コンサドーレの守備の拙さにも問題があります
イニエスタのマークを担当していた選手はイニエスタとの距離を開けすぎてしまいました

③カバーがないが故に圧倒的な個にやられる

ゾーンディフェンスの場合は一人抜かれたとしてもちゃんとそのカバーの選手がいます
ですがオールコートマンツーマンの場合は11人全員に11人を当てているため基本的にカバーがいません
その為1対1の局面で負けてしまうとオールコートマンツーマンの守備は崩壊してしまいます

そのよい例がCLでのアタランタ対PSGでしょう
アタランタのオールコートマンツーマンにPSGの選手の大半が苦労する中ネイマールはそれを華麗にいなし続けました


局面によってマンツーマンになる

試合を通してずっとマンツーマンにするのではなくゾーンで守っている所からボールを奪うスイッチが入った瞬間にマンツーマンになる守備が主流になりつつあるような気がします

(クロップリバプールのゲーゲンプレス)


(アルテタアーセナルの前からのプレス)
これはクロップリバプールほどゾーンからでは無いですがボールを奪うスイッチが入るとマンマークになってフリーの選手をつくっていません
特にボールサイドの選手にはしっかり距離を詰めています


守備で大切なこと

守備はまず目線を揃えるという事が一番大切です(ボール保持時も同様に)
後ろが前と連携を取りながら今は行くべきなのかそうでないかを考えながら、声を掛け合いながらプレーしなければなりません
そうしなければ前線はプレスへ、後ろはリリートしているみたいになり陣形が間延びしてしまいます
なので「取り敢えずキモチで前から前から!!!」と後ろを気にせずに突っ込むのは悪手です(勿論気持ちは大切ですが)
その為にも監督がどの様にボールを奪うのか、プレスのスイッチはどの様に入れるのかを仕込むのが大切になってきます

そしてチームで連動したプレスを仕込んでいたとしても相手がそれを搔い潜ってくる事もあります
その際に大切なのはプレスバックです
EL決勝のアタランタはそのプレスバックが素晴らしかったです

基本的にプレスバックが早いチームは大崩れしませんし、チームの調子が良いように感じます
例えば昨シーズン優勝したヴィッセル神戸のプレスバックです

このシーンの素晴らしいところは試合終盤(後半44分)にも関わらずこれほど多くの選手がさぼらずに物凄いスピードでプレスバックしているところです
昨シーズン見事J1初優勝を成し遂げた理由がわかりますね


最後に

これからもnoteを続けていこうと思っているのでよろしくお願いします

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