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「9 ナイン ~9番目の奇妙な人形~」の秘密にせまるインタビュー(その2)

2010年5月8日に日本公開された映画の当時のインタビューを翻訳して3回に分けてお送りします。翻訳の正確さにおいては、元記事を参照していただければと思います。映画はアマゾン・プライムでも視聴可能です。

さて今回は映画「ナイン」における製作上の困難にぶちあたった理由とそれをどのようにして解決したかが説明されている部分です。

レイアウト作業での行き詰まり

プリプロダクションの間、アッカーは彼のアートワークとキャラクターをまとめてAttitude Studiosに送った。彼がストーリーを書き終えた時に、レイアウトとアニメーション作業が始められるようにするためである。「私たちが到着するまで、彼らがパイプライン(訳注: アニメーションを流れ作業で制作する仕組み)を組み立てようとしていることを知りませんでした。」アッカーはさらに、彼にとって恐ろしいことに「レイアウト」の意味するものがそこでは違っていたことが分かった。「レイアウトという言葉は同じですが、彼らにとっては正確にストーリーボードを再現することを意味していたのです。彼らはキャラクターをスペースに収めるためにゆがめてしまっていました。私たちのアプローチは北アメリカの方法でした。ストーリーボードは出発点であり、レイアウトではどのようにステージを設定して撮影するかを探るのです。そのためレイアウトでは完全に泥縄でした。彼らはレンダリングのパイプラインを設定しておらず、行き詰まりを感じ始めました」

問題はさらに複雑化した。アニメーターは彼らのショットをコンテクストに沿って観るためのツールを持っていなかったのだ。そのため、アニメーションを(ショット毎でなくシーケンスとして)連続性持って確認することができなかった。アッカーは彼らのパイプラインがモーションキャプチャーのためにつくられたものであり、キャラクターを手で動かすアニメーション映画のためでないことを理解した。彼は言う。「Attitudeのアーティストたちの能力は高かったものの、パイプラインが機能していないことに悩まされました。だんだんと、これではうまくいかない、アーティストを生かすことが両サイドからもできないと思い始めました。」その時点でペトラーは別のプロジェクトに行ってしまい、そのためアッカーは彼に経験のない脚本の執筆も行わなければならなかった。

プロジェクトの再考と制作グループの変更

「私は自分のクリエイティブチームをほとんど失いかけていました。プロジェクトを再び立ち上げるのは無理だろうと思いました。プロダクションを機能させるために、ルクセンブルグですでに21ヶ月もかけられていました。アニメーションのプロデューサであるジンコ•ゴトウ氏がそこで加わってくれました。彼女は、『ファインディングニモ』や『スペースジャム』さらに『ダイナソー』での経験がありました。彼女は私たちがつくったものを本当に気に入ってくれて、みんなに映画が完成するように再び協力してくれるよう手配してくれました。」

ゴトウは語る。「アニメーションとは新しい世界を構築して探求することに他なりません。」「『9』は新鮮でエキサイティングなアニメーションです。現在アメリカのアニメーションの大半は、話をする動物が主人公のコメディですが、それとは別なストーリーを私は探していたのです。」

「シェーンは異なった種類のストーリーを語ることができる、アニメーションの新しい才能を持った世代の代表だと思っています。彼はCGI(訳注: コンピュータ・グラフィックスによって作成される映像)のことをよく理解していて非常に優れたデザイン能力があります。そして技術的な観点からも、どうすればCGI映画をより少ない予算で、予算を気にする人がいなくても済むぐらいのレベルまでに、十分な品質で実現することができるか理解しているのです。CGIではそれは特に難しいことです。」

 そこでアニメーションのプロダクションを別のスタジオで行うことになった。ゴトウは続ける。「Starz AnimaionのTorontoスタジオのマネージャーであるDavid Steinbergは、ディズニーでの同僚でしたから、彼と彼のチームは信頼できることを知っていました。Torontoで数年前に働いたことがありましたから、そこには多くの才能が集まっていることも知っていましたし、予算についてもカナダの税金の優遇政策(訳注: 州の持っている予算を使って映画スタジオが安い値段でカナダの制作スタジオに発注できる)が必要でした。他のスタジオもあたってみましたが、自分のインディペンデントプロデューサとしての経験上、CGアニメーションを外部に委託するのは容易なことでないことも分かっていました。」

 「最も重要なのは、私たちは映画をつくっているのであり、ショットを仕上げるために働いているのではないということを理解してくれるスタジオが必要だということです。ディズニー、ピクサー、ドリームワークス、ブルースカイといったスタジオを除けば、そのような経験をしているスタジオは多くないのです。他のスタジオは初めて手がける長編映画のプロダクションでどれも苦労していました。『9』ではすでに困難にぶちあたっていましたから、これ以上のリクスは不可能でした。」

 アッカーは元々Attitudeのために確保していたいくつかの作業をPasadenaにあるKen Dancanに委託したことを認める。「どのスタジオにも映画を仕上げるために作業に参加して欲しかったのですが、作業の再開後1ヶ月かそこらでAttitudeが撤退したため、その分がすべてStarzで手がけられることになりました。」

 Starz Animationで作業を行えたことは結果的に勝利であった。アッカーは言う。「彼らは必要なツールをすべて持っていましたし、それはすでに2つの異なるプロダクションで試されていました。彼らは私たちの言葉を話し、北アメリカのプロダクションモデルを持っていました。彼らには私たちが望む以上のものがありました。」さらに、Starzはちょうど予期しない事情によってプロダクションは空白状態だったため、「9」がちょうどそこにうまく滑り込む運びとなったのである。(つづく)

※タイトル画像は映画の公開当時に配信された、ショーンアッカー監督と、日本が誇るアニメーション監督りんたろう氏との対談インタビューからいただきました。


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