映画ポスターの解剖学 ドーン・ベイリー・作品展
ニューヨークはマンハッタンにあるギャラリー「ポスター・ハウス」(Poster House)にて(2024年9月8日まで)「he Anatomy of a Movie Poster: The Work of Dawn Baillie」が開催された。ドーン・ベイリーは、3つのデザイン エージェンシーで40年近くにわたるキャリアを積み、近代映画史上最も象徴的で愛されているポスターのいくつかを手掛けてきたアート・ディレクター。
展示された映画ポスターの中からいくつかを紹介させていただきたい。英語での作品紹介は公式の展示サイトでもご覧いただけます。文中は特にことわりがない限り、ポスター展の解説を(機械の力で)日本語訳した引用となります。
「羊たちの沈黙」 1991年 ジョナサン・デミ監督作品
「羊たちの沈黙」の彼女のイメージは、彼女の最も高く評価されたデザインとなり、史上最も重要で影響力のある映画ポスターの 1 つとして頻繁に挙げられています。
この一連のポスターは、コンピューター仕上げが導入された技術の移行期に作成されました。
オリジナルのティーザー・デザイン(訳注: 正式に決まる前のデザイン)では、ドーンはまだ手作業で作業していました。ケン・リーガンのユニット写真を使用して、ジョディ・フォスターの顔のハイライトをエアブラシで消し、メゾチント (スタット・カメラ※で作成された白黒画像) を印刷し、その上に目の蛍光オレンジをエアブラシで塗りました。(※訳注 スタット・カメラ についてはこのページに詳しく書かれています。)
同じ構成のペイオフ・ポスターは、ドーンの指示でコンピューター技術者によって仕上げられました。この技術は初期段階だったため、比較的粗雑で、コントラストが高く、グラデーションがシャープで、全体的に洗練されていない画像になりました。
「シカゴ」 2002年 ロブ・マーシャル監督作品
これは、ドーンがシカゴのためにアートディレクションした 3 つのキャラクター ポスターのうちの 1 つです。ペイオフ・ポスター(訳注: 宣伝や販売されるポスターのうち中心的な役割を果たすポスター)とは異なり、キャラクター ポスターは映画内の個々の人物を強調します。
今日、このタイプの画像は主にソーシャル・メディア・キャンペーンやワイルド ポストに使用されますが、2000 年代以前は、高予算作品のプロモーションとして劇場のポスターに表示されていました。
すべてのキャラクター・ポスターには、ペイオフ・ポスターと同じストックのシカゴのスカイラインが使用されていますが、キャラクターを演じる俳優ごとに特別な写真撮影が行われ、現場で振付師がブロードウェイ風のポーズを作成し、衣装に動きを与えました。
「バッドボーイズ2バッド」2003年 マイケル・ベイ監督作品
画像では登場人物が屋外にいるように見えますが、撮影はスタジオで行われました。ドーンは、俳優の画像とヤシの木や街並みのストック写真を組み合わせてこれを作成しました。マイアミでは、別の都市のスカイラインを押しつぶして、より短く見せながら、構図に被写界深度を加えました。また、背景には熱による歪み効果も取り入れました。
スタジオは最終的にドーンのコンポジット(訳注: 合成された)の 1 つを選択しましたが、印刷前に元のチームによって多くの変更が加えられました。これには、他のキャンペーン カラーと一致するように空の色を変更することも含まれます。
このような共同プロジェクトでは、デザイナーやアート ディレクターが作品を引き渡した後、印刷されるまでその作品を見ないのが普通です。
「インヒアレント・ヴァイス」 2014年 ポール・トーマス・アンダーソン監督作品
トーマス・ピンチョン(Thomas Pynchon)のポストモダン小説を基にした「インヒアレント・ヴァイス」は、幻覚剤と 1970 年代のカウンターカルチャーを題材にした奇妙な探偵小説です。
脚本のワイルドな性質を考慮して、ドーンのチームは適切なプロモーション コンセプトを自由に作成することができました。このポスターのデザインは、もともとユニット写真を使用して作成されました。構成が確定すると、マット紙に大判プリントが作成され、その上にスティーブ・チョーニー(Steve Chorney)がイラストを描きました。
その後、BLT の社内チームがイメージを微調整し、小説の初版の表紙から色を抜き出し、詳細を追加しました。ペイオフ ポスターに加えて、スターが勢ぞろいしたキャストをハイライトした 8 つの非常に詳細なキャラクター ポスターが同じスタイルで作成され、動くピンクの脚が付いた看板も作成されました。
なお表題の「リトル・ミス・サンシャイン」(2006年、ジョナサン・デイトン、バレリー・フェリス監督)のポスターも彼女の代表作の一つだと言うことです。
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