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vol.541「累計1000万台突破。コンセプト開発の苦悩と光」



Sky社の成功物語

「累計1000万台突破。コンセプト開発の苦悩と光」

新年度になり、人の往来が激しくなりましたね。
ビジネスマンに旅行客、インバウンド…
すっかりコロナ前に戻ったようです。

そんな往来の激しい新幹線のホームで、
かつて私が立ち上げをお手伝いした商品が
導入1000万台突破した、
というポスターを見かけました。

Sky(株)のセキュリティソフト
「SKYSEA Client View」。

藤原達也さんのTVのCMやタクシー広告で
ご存じの方も多いでしょう。

1000万台突破は、私がブラザー時代に手掛けた
TEPRA以来2度目の体験。
心の中で小さくガッツポーズをしました。

本格発売は、2006年。
当時、セキュリティソフトで先行するメーカーが
市場に30社ありました。
同社は31番目、最後発の参入でした。

それでも上位企業を逆転し
多くの方々にご利用いただけたのは、
偏にSkyの皆さんの努力の賜物です。

「特別なことをするために
特別なことをするのではない、
特別なことをするために
普段どおりの当たり前のことをする」
は、イチロー選手の名言です。

Skyの皆さんは、この当たり前のことを地道に、
しかも長くやり続けたからこそ
成功したのだと思います。

では、Skyの皆さんの「当たり前」とは
何だったのか。一緒に考えてみましょう。

Skyの皆さんの「当たり前」とは?

開発当初の話です。
同社は、2000年代前半に全国の小学校に普及した
パソコン教室の先生が使う専用ソフトの
開発と販売で急成長しました。

このソフトの特徴は、先生のパソコン上に
児童一人ひとりのPCのモニターが映ること。
これによって先生は、児童が教えた通りに
操作できているかどうかがわかります。

もし、違う操作をした児童がいたら、
出ている画面が異なるからすぐにわかります。

すると先生はその児童のところに行き、
やり方を個別指導します。そうすることで、
誰もがPCを正しく使えるようになるのです。

このソフトはSKY MENU Proといい
今でも同社の主力商品です。

この商品の特徴の一つが録画機能です。
誤った操作をした児童が、どこでどう間違えたのかが
マウスの動きを再現できます。
それを見て、先生は自分の指導の仕方を改めるのです。

この録画機能に目を付けた人がいました。

2000年代の半ば、社員が故意に
会社の機密情報や個人情報を盗み出す
情報漏洩事件が相次いでいました。

もし、この録画機能を持ったソフトを企業が導入すれば、
「誰が、いつ、どのように情報を持ち出したか」がわかり、
犯人を特定できます。

また、自分のマウス操作が録画されることを
社員が知っていれば、犯行の抑止力になります。
そのため、セキュリティ面で
大変有益ではないか、というのです。

その声を聴いたSkyの皆さんは、
この録画機能を一番の売りにした
セキュリティソフトを作ろう!と考えます。

同社の録画機能は他社にはない技術でした。
これを武器に、それまで縁のなかった
一般企業の市場に打って出ようと決めます。

そこで、約50名の営業マンたちが一斉に動きました。
企業の情報システム担当者に、
この録画機能が役に立てそうか
ニーズを聴いて歩いたのです。

ところが、全員が同じことを
言われて帰ってきました。
それはSkyの皆さんにとって
予期しなかった回答でした。

「これは『うちの社内の誰かが情報を盗み出す」を
前提にした商品だろう。
うちの社内にはそんな社員はいない。
私は、そんな社員を疑うような商品は、導入したくない」

これが、各社の情報システム部員たちの本音でした。
彼らは皆、性善説の持ち主だったのです。
これにより、録画機能=犯人特定や
録画機能=犯罪抑止力向上という
性悪説に立った商品コンセプトは崩れました。

「独自機能に魅力なし」と言われた
Skyの皆さんは落ち込みました。

商品の成功への道

が、ここでSkyの皆さんは考えました。
情報システム部の皆さんが
性善説に立っているのであれば、
それを支援するソフトを作ればいいのではないか。

つまり、犯罪防止ではなくて
「セキュリティは大事だな。
ちゃんと管理しないといけないな」という
ユーザーのセキュリティ意識を啓蒙するような
ソフトなら受け入れられるのでは、と考えたのです。

そのために不可欠なのが、以下の2点でした。
・セキュリティの設定が自分で簡単にできること
・自分のPCのセキュリティ上の問題がひと目で分かること

そして、ハタと気付いたのです。
「操作が簡単」「見やすい」は
実はSkyの「超」が付く程の得意技だったのです。

なぜなら、当時主力商品だった学校教育用のソフトは
小学校の先生たちが使うソフトです。
当時の先生の中には
PCに慣れていない人も大勢いました。

そんな先生でも使えるよう、
Skyはブラウザのデザインや操作性に
どこよりも工夫を重ねてきたのです。

そこで新たな商品コンセプトを打ち立てます。
それが「抑止から啓蒙へ」
「カンタンさNo.1を」でした。

特に後者は、情報システム部員に歓迎されました。
これにより面倒なインストールや説明などの
負担から解放されるからです。

その結果、「SKYSEA Client View」は
各所の展示会で大人気となりました。
同社は一気にセキュリティソフトの
上位企業へと躍進したのです。

さらなる躍進のために続けたこと

また、営業マンのヒアリング力によって、
毎年に変わる顧客ニーズを丁寧に拾い、
それをバージョンアップに反映させてきました。

例えば、大事な情報が入ったUSBを落としてしまった…
が、どんな情報がUSBに入っていたのか確信がない…
という悩みがあれば、PCからUSBに
移した情報が何かがわかる機能を追加したりしました。

こうした痒いところに手が届く改善を重ねた結果、
同社はファンをどんどん広げていきました。
それが発売以来18年目での1000万台突破に
繋がったのだと思います。

同社にとっての「当たり前」は、
お客様に丁寧にヒアリングし、
それを商品開発に生かす素直さです。

人はどうしても自分の独自性に固執しがちです。
が、Skyの皆さんは録画機能に執着せず、
何が求められているかを正面から受け止めました。
その姿勢が、ロングセラーとなった原動力です。

あなたにとっての「当たり前」は何でしょうか?
誰もができる「当たり前」のことを
丁寧にやりましょう。
そして、誰もできないほど長く続けていきましょう。

実践に役立つ動画の解説

このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。

  1. 「セキュリティ関連商品を作る」というアイディアはどのように生まれた?

  2. 顧客からのフィードバックを効果的に取り入れるためのポイントは?

  3. 「特別なことをするために、普段どおりの当たり前のことをする」の実践のコツは?



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