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かばんの声に導かれ、分解。その後。

「それぞれのブリコラージュ」シリーズ。手放し難いものを持ち寄って、わいわい話しながらつくりかえて感じたことをご紹介します。

どうして私のところには、かばんが集まるの? 

 私はよくかばんを買う。硬い仕事のときはブリーフケース、プライベートではトートバック的なもの。最近はもっぱらリュックやバックパック的なものが多い。
 昔からだけど、これまで買ってきたものに一度も満足したことがない。だからかばんを買うときも買うときまでが楽しく、買った途端いろいろな細かいところに目がいってしまい満足できない。満足できないから、理想のかばんを求めて、かばんがコロコロ変わっていくことになっている…。


耳をすますとかばんの声が聞こえる…。

 かばんがコロコロ変わっていくと何が起こるかというと、使わないかばんがどんどん増えていく。使わないんだったら売ったり処分したりしたらいいじゃん。って思うかもしれないけど、一度は気に入って買ったかばん。「いつか使うかもしれないからとっておこう」…そう思って一つも捨てられていない。どんどん気に入るかばんが増えていくからきっと使うことはないのかもしれないが、捨てることに向き合えない。
 家にはかばんがたくさんある。家族にも白い目で見られる…。そんなことを気にしていたらいつしかかばんの声が聞こえるようになった。(気のせいかもしれないが)

使わないのなら死んでるのといっしょだよ。

「僕はきっともう役目を終えて(使ってないけど)しまったんだ。いつまでもここにいても報われないからちゃんと埋葬してくれないか?」
 私の負い目のある心が、かばんからそんな声を拾った。そうだよね。ちゃんと次に旅立たせないとかばんだって生きたまま棺桶に入れられているのと一緒だよね。それは辛い。


よし、埋葬しよう。でもどれを?

 使わないかばんを手元に残さないようにしよう。とりあえず今使ってるかばん以外は手放そう。そう思った矢先に、まだ一回も使わないで順番待ちをしているかばんもあることに気づいた。「これは来年ぐらいから使おうと思っていた」「これはキャンプのときに使うから」「荷物が少ないときはこれだよな」とかいろいろ考えはじめたら、またどれも手放せなくなっていた…。一体…どうしたらいいんだ。どれも捨てられない…。


今の私に必要なものへ

 使わないけど…手放せないなら、使うものに生まれ変わらせよう。生まれ変わるなら何に生まれ変わるかはまずは全て分解してから考えよう。
そんな考えからとっても気に入ってるけど、今の生活スタイルだと使わないかばんを選び、バラバラに分解してみることを心に決めました。


Made in USA の壁

 バラバラにするかばんを選ぶにあたって、もう1つ個人的にチャレンジしたかったのが「Made in USA」ということ。昔からアメリカ製はとにかく頑丈。頑丈至上主義というのが私のイメージ。なのでかばんを分解するとなったとき、このアメリカ製の壁をぶち破ってみたいと思いました。
 選んだかばんはこれ。

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埋葬という名のバラバラ殺人事件

お気に入りだけど、何かのすれ違いで使わなくなったかばん。これがよく言う「可愛さ余って憎さ千倍」っていうことだろうか? …いや違うか。
そんなことを思いながらかばんの分解をはじめました。

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さすが Made in USA 。縫製の頑丈さが半端ない。

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縫製したところに更にカバーを付けている。絶対壊れなさそう。笑

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バラすのも手順を考える必要がある。順番を考えないとバラせない。

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おお…先が見えない。笑


埋葬したかばんに思うことは…。

 やっと、やっと…。バラバラになったかばん。なんだろう。感動が…。なんかわからないが嬉しい…。

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 ずっと見てると…。何かが…何かが…浮かんでこない。
どんなに見続けてもバラバラになったかばんにしか見えない。ちょっとした後悔も…。一体何に生まれ変われるんだろうか…。


ブランドを生かしたい。

 一つひとつ考えていこう。やっぱり好きで買ったかばんだよね。ブランドロゴは残したい。他の人は何を作るつもりなんだろうか…。
 マフラーの毛糸をほぐしている人、傘を分解している人、服をばらしている人、PCケースを持ってきた人。色々いる。
 他の人がいろいろな工具を使ってばらしているのを見て、プロっぽく自分のマイ工具を持ち込んで分解していたらかっこいいなって思った。そうだ!
工具ケースを作ろう。
 そういえば、◯ステリー◯ンチの道具ケースは見たことがない。これだ!

仏像を作るよりはカトラリー

 工具ケースを作ろうと思ったが、そういえばあんまりものづくりしない私にとってマイ工具と呼ばれるものはほとんど持っていない…。
 工具ケース使うかな…。と不安になってきた。使わないかばんで使わない工具ケースを作ってもなんの活動だったのか…ということになりかねない。
 そうだ。趣味の木工で使うケースにしよう。木工と言っても木彫りの仏像を作っているわけではない。いつか使うだろうと思ってスプーンやフォークの作品を作っている。意外とたくさん出てきたし、誰かに自慢するときに広げてお店みたいになるケースがあったらいいなと。
 やばい。めちゃくちゃやる気になってきた。バラしてしまったかばんだが、バラした部品に愛着や愛おしさが湧いてきた。不思議だ。

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やってみなければ、わからなかった世界。

 すべてのパーツにバラバラにされたかばん。目指す目標が決まったら後は早かった。入れたいカトラリーをきれいに入れられるオーダーメイドの収納ケース。みんなに見せびらかすために広げられるもの。ブランドロゴは見せびらかすときに見えるようにする。
 手縫いとミシンを使い、ガシガシ縫っていく。どんどん形になる。
 いろいろ考えて設計イメージを頭の中で決めて作り始めているが、形になってみて何回も失敗を繰り返すところがあったりと、作ってみると色んな発見があって面白い。

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 できたものを買って満足して使わなくなることを繰り返してきた私にとって、自分で作ったものは「どこに工夫があって」「ここが失敗して」といった要素がどれも愛着につながっていて、あまり不満がなかった。

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 なるほど。買うときまでが楽しかったと同じように、自分が欲しい物を作っているときも楽しかった。買ったものは買ったあと満足が得られなくてなにかのせいにして使わなくなったが、作ったものはそのうまく行かなかったところも含めて自分に返ってくる。いろいろ使いながら直していこうと思っている自分がいる。作り直すことで自分ごとになっている。


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