massaging capsule|月夜に駆けて
今夜は、誰でしたっけ、たいそう高貴だとかいう紳士を紹介される予定と聞いていたのでした。今夜のために時間をかけて結い上げたヘアスタイルも優雅に仕上がっていました。
けれど、彼女は舞踏会を抜け出すことに決めました。混じり合った香水の強い匂いはそろそろ耐え難く、次から次に微笑む完璧な人達の、これまた完璧な社交辞令のお喋りには頭痛がし始めていました。それに何より、良く似合うドレスに着替えた、その直前まで夢中で読んでいた本の、しぶしぶ栞を挟んで閉じた物語の続きがどうしても気にな