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喫茶メルトの窓際

はじめに

皆さんは普段どんなことを考えていますか。僕は常に木版画のアイデアを考えています。

・面白いデザインはないかな
・面白い言い回しはないかな
・韻が踏める言葉はないかな
・どんなストーリーにしようかな
・どんな設定にしようかな
・どんな構図にしようかな
・どんなユーモアを込めるかな
・どんなメッセージを届けるかな など

しかしですよ、多くの場合、作品を展示して「この作品は何を表現しているの?」と聞かれたとき、それはもう既に何千何万もの思考が繰り返された後の質問なので、自分の中では「何だっけ?」状態なんです。


だから、作品が仕上がる頃になると「もうすぐ展示だ。誰かに質問された時の説明を考えよう!」というモードになるというか、準備してしまうので、粗削りの原案みたいなのは残っていない場合が多いのです。


そこで、今回は、普段何気なく思いついたアイデアの種をどのように育てているのかをブログに書いてみようと思います。不思議なもんで、ブツブツ言いながら木版画のデザイン(視覚的なこと)と物語の内容(言語的なこと)を同時に考えています。

3/17 13:25

・日曜の昼過ぎ、運転中に浮かんできた「氷山の一角」で何か作れないか?という心の声(=アイデアの種)

3/17
・中途半端なカフェに限ってアイスコーヒーの氷がデカい
・だから「氷無しで」という客をひどく嫌うんだ
・氷山が崩れると、海面の下からめちゃデカい塊が浮いてくる
・地球温暖化の影響だ
・「氷山の一角」と韻を踏む面白い言葉は何かないのか
・「勝算の一発」んー、なんだそれ
・あれか、英語の発音にしてみるか?
・hyou than know it kaku!! 意味わからん

3/18 
・アイスコーヒーは決まりだな
・氷の透明って木版画でどう表現するんだ?
・アイスコーヒーが黒だから白しかないか
・「こちら氷山の一角コーヒーです」っていうカフェにするか?
・あれだ、氷のデカさを全く悪いと思ってない態度のデカいカフェにするか
・氷もデカけりゃ態度もデカい
・妄想カフェのお品書きだ
・メニュー表みたく画用紙を二つ折りにするか?
・メニューのイラスト(作る過程のイラストも添える)
・コーヒーはエスプレッソ並みに少ない
・価格は600円にしよう
・「ドリンクメニュー」より「お品書き」って感じの店なんだろうな
・いやあれだ、態度がデカいんじゃなくて鈍感なんだ
・店主に悪気がないから憎めないんだ

3/19 
・お品書きは良いとして、店名も考えるか?
・カフェ南極…んーーー、はい、次。
・イメージはやっぱり神保町なんだよな
・そうか、カフェじゃなくて喫茶か
・「喫茶メルト」これだ、決まり
・メルトの意味は溶ける
・店名のフォントはどうするか
・まあいっか、いつものフリーハンドで
・今回も超ミニマル版画にするとして、何パターン彫るかな
・パターン彫りすぎても面白くないな
・小さい器に入ったコーヒーをグラスと特注の氷の隙間に注ぐ絵1つでいっか
・「氷山の一角コーヒー」のメニュー上の説明書きはリアル手書きしよう
・マスターは必要以上に喋らない
・カウンターが4席と二人掛けが3つくらいの店内で、カウンターにはバラがある
・その店を訪れた男女の一場面を超短編小説(54字)にして添えてみるか
・男性の名前は「恭介」が浮かんだ
・ということは画用紙でお品書きを表現するんじゃなくて、見開き1ページのみの小説を作るイメージか
・「喫茶メルトの物語」だな
・見開きの左側にお品書きを模したイラスト&説明書きで、右側に文章だな
・「喫茶メルトの物語」は安易すぎたから「喫茶メルトの窓際」にしよう
・喫茶店の窓際には物語があるよね
・雨が降っている風景が浮かんできたぞ
・果たして54字で表現できるのか!?どんな言葉が、セリフが降りてくるのか。自分で自分に期待するしかない。
・マスターの表情はバラに隠れて見えない
・客の会話を聞いて反応するのは失礼だ
・今回は耳にしたときに人の表情に変化がありそうな話題だろうね
・でも顔は見えないから何かしら話題によって店内に変化があったほうがいいよなぁ
・レコードの音の調子が一瞬だけ狂うってことにするか
・バラの花びらが1枚落ちてもいいな、でもそんな表現ハードル高いな
・大事なことを忘れていた、「氷山の一角コーヒー」を飲みに来る客がどういう人たちなのかを考えていなかった
・氷山の一角とは「物事のごく一部分だけが外に現れているさまのたとえ。 重要な大部分は隠れたままであること」。
・なるほどね、これは謎多き客がいてもいい感じのシチュエーションやね。
・敢えて客の設定はせずに、読んだ人の感性に任せようっと
・小説だ!といって身構えて、柄にもなく男女の色恋沙汰を想像してみたけど全く言葉が降りてこない(笑)
・ということで、ユーモア路線に戻ろう

3/27 23:00
・そうだ、小説の内容をブログで公開するんじゃなくて、希望者だけが読めるようにスキル交換制(限定販売的な)にしたらいいんじゃないか?
・54字に囚われるとアイデアの柔軟性が失われるというか少なすぎるから、文字数を増やそう
・調べたら『ほぼ百字小説』なるものをやっている人がいるから、僕は108字にしようかな
・108は煩悩の数。僕らの心の平穏を乱すさまざまな感情や思考パターンである「煩悩」を手放して自由な作品を届けたい
・あ、54字のちょうど2倍だ。笑
・キャッチコピーがあるとしたら「煩悩を手放して、本能で描く小説」だな、煩悩と本能で韻を踏んでるし
・木版画作家でもあるから「描く小説」というのがポイント
・てか、小説に挿絵(木版画)を添えるんじゃない、木版画に小説を添えるんだ

今回の作品について整理すると
・見開き1ページのみの超短編小説
・木版画メインで文章を添える
・タイトルは「喫茶メルトの窓際」
・キャッチコピーは「煩悩を手放して、本能で描く小説」
・文章は108字(句読点含む)
・店は神保町にあり、寡黙なマスターが営んでいる
・カウンター4席、2人掛け3つ
・カウンターにはバラが飾ってある
・おすすめは「氷山の一角コーヒー」
・価格は600円
・主人公は窓際の席に座る恭介

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