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6幕・続、昔の名前で待ってます



子供のいない劇団も多くある。
そういう所には裏口にお邪魔せず、じっくりと
観劇している。

お金のある大所帯の劇団は有線マイクを首からぶら下げて芝居をしていたり、時代も急成長して行くと、もっとお金のある劇団は無線マイクをぶら下げたりで、舞台発声も次第にしなくなっていく過渡期を観ていた。

またおばあちゃんはデパートの袋を劇場に持ってきている。
また豪華なお菓子なんだろう。

芝居が終わったあと、私の手を引いて楽屋口の暖簾前に行った。

‪✕‬‪✕‬の妻ですが。
今度は違う名前で混乱している私を他所に、おばあちゃんは背筋良く立っている。

若い座員がやって来た。
前回の事もあるので気構えている私だったが、

‪✕‬‪✕‬さんの奥様ですね。
座長から伺っております。
どうぞこちらへ。

予想に反して若い座員は笑顔で受け答えてくれた。

座長さんの楽屋に連れて行かれると、また遅くなる帰りが何時になるのか気になっているだけの私。
しかし、もっと気になる事がある。

座長さんとおばあちゃんの会話の合間に、
「○○さん」と「‪✕‬‪✕‬さん」ってだあれ?
と、聞いてみた。
おじいちゃんの名前だよ。
おばあちゃんの言葉は意味がわからない。
なんで!?おじいちゃんは武光じゃん!!
○○でも‪✕‬‪✕‬でもないじゃん!!
おばあちゃんはサラりと言った。
おじいちゃんにはね、3つ別の名前があるの。

更に座長さんは
おじいちゃんが‪✕‬‪✕‬さんだった頃、おじさんはとってもお世話になったんだよ。

もう頭の中は大混乱になった。

おばあちゃん、私先に帰るね。
おじいちゃんに迎えに来てもらう。
座長さん、お邪魔しました。

ボーゼン状態の私は、おじいちゃんを待っていた。

おじいちゃんに聞いてみようか、聞くまいか。

頭の中はそればかり。

やっぱり聞かないでおこう。
なんとなく触れてはいけない気がして、結論が出た。

だが幕は降りなかった。
このお話の続きは、まだまだ後で。

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