ヤン・コワルスキ

ソーシャルワーカーの仕事とその隙間についての覚書。

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ソーシャルワーカーの仕事とその隙間についての覚書。

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記事一覧

社会設計思想としての福祉と自由

 10代の頃に共産党宣言を手にしてからの数年間、わたしはマルクス少年でした。といっても学術的なテクストを読みこなすほどの知能も意気もなく、当時はインターネットがま…

『こころの秘密が脅かされるとき』を読んでいますが、フロイドが誘惑説を放棄した背景について、斎藤学が「フロイトを責めるのは酷というものだ」と書いていたことを思い出しました。社会が人間存在を受け止めるのは難しいという悲観に苛まれます。

いわゆる境界知能とされる様態について

 去年か一昨年ごろ、起業家の方がセックスワークのうちのハイリスクなものに従事している女性と境界知能とを結びつけて議論を立てているのを拝見しました。その時もこれは…

春から学生のような身分になり、一つの本を10頁読むのに3日かかるような営みをしています。それになんとかついていけているのはわたしの精神分析への関心に薪を焚べ続けてくれた文物や人のお陰でもあり、またわたしを危機感とともに学びへと駆り立ててくれる人たちのお陰でもあります。頑張るます。

ソーシャルワーカーとカウンセリング

ソーシャルワークの教科書を紐解くと、ソーシャルワーカーの仕事としてカウンセリングが挙げられています。また、英米のソーシャルワーカーの文献を渉猟していると、そこに…

福祉政策の当事者になる覚悟はあるか

 一つ前の記事で専門職が社会統制の手段となることを国家から期待されている、という話を書きました。書き出しに迷って眠っていたこの記事にちょうどそのあたりのことが逆…

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ソーシャルワークは期待されているか

 公認心理師はソーシャルワークを期待されている、という趣旨の発言はかねてから見られたものですが、最近またその手の聞き捨てならない発言が視界に入ってきましたので、…

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社会が心理職に対してソーシャルワークを期待しているように見えるなら、それはソーシャルワークを治安維持の手法とみなす社会の見方にコミットしていると白状しているようなものだ。

愛着を持たない人にとってセルフプロデュースは生存戦略なんだけど、愛着を持てる人にはそこに自己受容が絡むから話がややこしいんだろうな。

期待を捨てる勇気|『親といるとなぜか苦しい』読後評

 『親といるとなぜか苦しい: 「親という呪い」から自由になる方法 』という本を読みました。して、一応最後まで読んだので感想を書いていこうと思います。一頃はコミック…

わたしがしたことについては釈明の機会を与えてもらえたにもかかわらず、わたし自身がされてきたことについては弁明なり釈明なりの機会を設けてこなかったので、わたしは自分が思うよりずっと冷淡な人間なのかもしれない。

フロムを読むときが来た…!(ボツ原稿を横目に)

依存としての社会批判

 先日の記事で「葛藤には斥力が働いている」と書きました。斥力とは離れていく方向の力、つまりは葛藤しないように、葛藤から降りるように差し向ける力が葛藤に対して働い…

こころと脳機能障害

障害福祉における精神医学的心理学的知見  障害福祉分野、特に精神障害に関連する分野におりますと、精神医学/心理学の知見は必要不可欠というか、少なくとも精神保健福…

ちゃんと生きていくって大変だ

※本稿はただの自分語りです。  最近になって財形を始めました。わたしの人生史においてはかなり画期的な出来事です。自分の将来のためにすることだからです。今まで避け…

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書いてはボツ、考えてはボツを繰り返してnoteの下書きに大量の残骸を残しつつ、結局は読後評だけにしてアップすることにしました。何かを書くのは難しいですね。

社会設計思想としての福祉と自由

社会設計思想としての福祉と自由

 10代の頃に共産党宣言を手にしてからの数年間、わたしはマルクス少年でした。といっても学術的なテクストを読みこなすほどの知能も意気もなく、当時はインターネットがまだまだテキストサイト華やかなりし頃でもあったので、その手のネット論客の論争を読み漁っては善良な独裁すなわち全体主義思想に耽る、かなり痛い少年でした。マルクスが共産主義として実際に思い描いたのはそれら通俗的な言説やマルクス・レーニン主義とは

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『こころの秘密が脅かされるとき』を読んでいますが、フロイドが誘惑説を放棄した背景について、斎藤学が「フロイトを責めるのは酷というものだ」と書いていたことを思い出しました。社会が人間存在を受け止めるのは難しいという悲観に苛まれます。

いわゆる境界知能とされる様態について

いわゆる境界知能とされる様態について

 去年か一昨年ごろ、起業家の方がセックスワークのうちのハイリスクなものに従事している女性と境界知能とを結びつけて議論を立てているのを拝見しました。その時もこれはまずいと思って筆を取ったのですが、うまくまとまらずにボツ原稿になっています。
 そして先日、特定の言動をとるネットユーザーに対して境界知能呼ばわりする投稿を目にしました。冒頭の件もかなり看過しがたい言論だったのですが、こちらには輪をかけて危

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春から学生のような身分になり、一つの本を10頁読むのに3日かかるような営みをしています。それになんとかついていけているのはわたしの精神分析への関心に薪を焚べ続けてくれた文物や人のお陰でもあり、またわたしを危機感とともに学びへと駆り立ててくれる人たちのお陰でもあります。頑張るます。

ソーシャルワーカーとカウンセリング

ソーシャルワーカーとカウンセリング

ソーシャルワークの教科書を紐解くと、ソーシャルワーカーの仕事としてカウンセリングが挙げられています。また、英米のソーシャルワーカーの文献を渉猟していると、そこにはソーシャルワーカーがカウンセリングをしている記述に遭遇します。英米での実践はともかく、日本においてさえ少なくとも理論的にはソーシャルワーカーの職務の一つとしてカウンセリングが位置づけられているようで、標準的な教科書にもカウンセリングについ

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福祉政策の当事者になる覚悟はあるか

福祉政策の当事者になる覚悟はあるか

 一つ前の記事で専門職が社会統制の手段となることを国家から期待されている、という話を書きました。書き出しに迷って眠っていたこの記事にちょうどそのあたりのことが逆サイドから書いてあったので、この機会にお出ししようと思います。本旨は「福祉専門職に政策の手段として働く覚悟があるか」ということです。タイトルままですね。

日本の福祉政策に不備は多い

 日本の福祉政策について管見の範囲で申し上げるなら、使

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ソーシャルワークは期待されているか

ソーシャルワークは期待されているか

 公認心理師はソーシャルワークを期待されている、という趣旨の発言はかねてから見られたものですが、最近またその手の聞き捨てならない発言が視界に入ってきましたので、一度その誤解を解いておきたいと思ってこの文章を書いています。結論から申し上げると、社会は心理職に対して特にソーシャルワークを期待していない、ということです。

 そもそもソーシャルワークとは、という話になるわけですが、わたしが論じるにはあま

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社会が心理職に対してソーシャルワークを期待しているように見えるなら、それはソーシャルワークを治安維持の手法とみなす社会の見方にコミットしていると白状しているようなものだ。

愛着を持たない人にとってセルフプロデュースは生存戦略なんだけど、愛着を持てる人にはそこに自己受容が絡むから話がややこしいんだろうな。

期待を捨てる勇気|『親といるとなぜか苦しい』読後評

期待を捨てる勇気|『親といるとなぜか苦しい』読後評

 『親といるとなぜか苦しい: 「親という呪い」から自由になる方法 』という本を読みました。して、一応最後まで読んだので感想を書いていこうと思います。一頃はコミックエッセイも含めてこれ系の本をよく読んでいたものです。まさか、岡田尊司先生が関与している言論にまた接する日が来るとは思いませんでした。

 本書はいわゆる毒親本とは違う、ということを強調しており、精神的に未熟な親という表現も毒親toxic

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わたしがしたことについては釈明の機会を与えてもらえたにもかかわらず、わたし自身がされてきたことについては弁明なり釈明なりの機会を設けてこなかったので、わたしは自分が思うよりずっと冷淡な人間なのかもしれない。

フロムを読むときが来た…!(ボツ原稿を横目に)

依存としての社会批判

依存としての社会批判

 先日の記事で「葛藤には斥力が働いている」と書きました。斥力とは離れていく方向の力、つまりは葛藤しないように、葛藤から降りるように差し向ける力が葛藤に対して働いていると考えます。そのことについて私なりの見解を書いていこうと思います。例によって個人的見解です。

葛藤とその自然状態

 葛藤とは両立し得ない二項以上の対立です。これを人のこころに当てはめると、2つ以上の両立しない考え方、生き方というこ

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こころと脳機能障害

こころと脳機能障害

障害福祉における精神医学的心理学的知見

 障害福祉分野、特に精神障害に関連する分野におりますと、精神医学/心理学の知見は必要不可欠というか、少なくとも精神保健福祉士の養成課程で学ぶそれだけでは全く太刀打ちできないような困りごとに遭遇します。クライエント自身、クライエントを取り巻く人間関係、支援者同士や組織の考え方を理解しなくては全く仕事が成り立ちません。他人のことですからもちろん理解し尽くせるも

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ちゃんと生きていくって大変だ

ちゃんと生きていくって大変だ

※本稿はただの自分語りです。

 最近になって財形を始めました。わたしの人生史においてはかなり画期的な出来事です。自分の将来のためにすることだからです。今まで避けてきた自分の将来とようやく向き合うことになったあり方の一つの結果ではないかと思っています。

 どうやって生計を建てていくかということそれ自体は10代の終わり頃から考え続けてはいましたが、あまり愉快な話ではありませんでしたね。どうやったら

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書いてはボツ、考えてはボツを繰り返してnoteの下書きに大量の残骸を残しつつ、結局は読後評だけにしてアップすることにしました。何かを書くのは難しいですね。