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タイの2人組デザインユニット Studio Routine


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Studio Routine
東京とバンコクを中心に活躍する、グラフィックデザイナーのペッドとイラストレーターのユンの2人で構成するデザインユニット。(イラストの左がユンさんで右がペッドさん)
様々な国のストリート、サブカル、アートなどをキーワードにしてデザイン活動をしています。
グラフィックデザインのほか、映画のワンシーンを思わせる瞬間や何でもない日常(routine)が、どこか不思議に見えるようなシーンを描いています。
タイ人のデザインユニットStudio RoutineがVision Trackからデビュー。
タイ・バンコクにある彼らのスタジオと繋ぎ話を伺いました。

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(お二人のスタジオ。奥のキッチンでパンやピザを焼くこともあるそう。)

P=ペッド Y=ユン  VT=Vision Track

■一枚の絵を二人で描く


VT:そもそも、お二人が出会ったきっかけはなんだったんでしょうか?

P:バンコクの美大、シラパコーン大学で同級生だったことがきっかけです。僕はグラフィックデザイン専攻でユンはイラストレーション専攻。

Y:大学の資料室には日本のアート、デザイン雑誌がいくつか置いてあって、ペッドとは趣味が似ていたので「Axis」や「アイデア」を二人で見ながら盛り上がっていました。当時日本語はまだ読めなかったんですけど、その頃から日本のアートとデザインに興味がありましたね。


VT:専門分野が異なる二人がユニットになったのはなぜでしょうか?

Y:グラフィックデザイナーの視点でペッドからイラストのアドバイスをもららい、絵に反映させることがよくありました。

P:時間があるときはiPadでよくデジタルスケッチをしているのですが、時々それをユンに見せて意見を聞いているうちに二人の作品のようになっていって、「なんかこのコラボレーションいいね!」とユニットでの制作を始めるようになりました。


VT:Studio Routineの作品はどのように役割分担をして作品を制作しているのでしょうか?

P:僕とユンは得意なものと苦手なものがそれぞれハッキリしています。僕は人物よりもモノを描く方が得意ですけど、ユンは逆なのでいつも人物を担当してもらっています。

Y:作品によってどちらがメインになるのか、ポーターに徹するのかを決めます。メインとなるほうが全体の方向性を決めて、サポーターの意見を聞きながら作品を磨いていく。最終的には二人でチェックしてから仕上げています。

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VT:二人で制作することで大変なことはあるのでしょうか?

Y:担当がハッキリしているのであまりないですね。

P:逆に二人の方が楽です。悩むとき、決められない時に相談相手がいるのは心強いです。
二人だから大変という話ではないのですが、コロナ禍でインスピレーションを得る機会が少なくなってしまったことは大変だと感じてます。
僕たちにとって、仕事のインスピレーションの源は外に出て色々なものを見ること。それがやりづらくなってしまったことで、色々とやり方を考え、変えなければなりませんでした。

Y:グーグルマップで知らない町をぐるぐる見たり、海外のテレビ番組を見てみたり、とりあえず外を覗くことに必死でしたよ(笑)。


VT:映画のワンシーンや日常の何気ない一瞬といったイラストのテーマは、お二人で相談して決めているのでしょうか?

P:だいたいユンですね。僕よりアイデア出しが早いので(笑)

Y:でも時には側面的に見るのも必要なので、ある程度までイメージが固まったらペッドに相談して二人で決めることもありますよ!

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(時々オールドブルックリンを彷彿させる景色が近所で見られるそう。)


■異なる性格と経験が融合


VT:お二人の作品作りに影響を与えた人やものはなんでしょうか?

P:学生時代から憧れていたGroovisionsです。幸運なことに来日して一員になることができ、タイに戻った今でも、その時に得た経験がとても活きています。

Y:直接影響を受けてはいないのですが、エイドリアン・トミネさんの作品に憧れます。静かな絵の中に彼の内面も表しているように感じます。あとは、ジャン・ジロー(メビウス)さんの作品。グラフィカルでダイナミックな構図でありながら、淡くて柔らかい色調も惹かれます。


VT:それぞれ違った影響や経験がありながら今があるかと思いますが、作品作りにおけるモチベーションとはなんでしょうか?

P:(即答)映画です。映画を観たら、あ、このシーンいいな、僕も作りたいなと想像してから始まるんです。もしこの世界から映画がなくなったら僕はどうなってしまうんだろうと時々考えると怖くなります(笑)

Y:私は日常的な出来事と人間関係が中心にインスピレーションになります。人それぞれの行動、服装や持っている物など、面白いと思うものを作品にしたくなります。


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(まるで昨日街中で見かけたような気がするシーンを捉えた作品。この人はどこかに実在するのだろうか。)


VT:デザイナー、イラストレーターになったきっかけはなんですか?

P:幼少期から「ジュラシック・パーク」のような映画のロゴを鉛筆でスケッチしていました。”グラフィック”という言葉を知る前からグラフィックデザインが好きで今に至っています。

Y:ペッドは昔からグラフィックデザイン一筋ですからね。
私は色々やってみたいタイプです。大学を卒業して一番最初に入った会社が大手出版社で、そこのファッション・ライフスタイル誌のグラフィックデザインのお仕事をしていました。
イラストは外注が多く、イラストレーターさんとお話する機会が多かったです。入稿直前イラストが必要になったときは自分で作らなければいけないことも多かったですね。
たくさん描くとイラストの依頼が少しずつ増えてきて、グラフィックデザインより多くなってきたのがきっかけかな。


VT:お互いをどのような性格だと思いますか?

P:ユンは思い立ったらすぐ行動するタイプですね。時間が経つとやる気も冷めてしまうのでダメ元でもやってみよう、みたいな。
そういったところを見ると良い意味でいつも引っ張られて、僕も新しい挑戦をしたくなります。

Y:実はすぐやらないと忘れてしまったりするので、メールの返信も基本的に早いんですよ(笑)
ペッドは複数のことを同時に行うより一つずつ時間をかけて整理するので、何事も丁寧で質が高いですね。それにアートやデザインだけでなく世界の最新情報の入手が誰よりも早くて多い。いつも情報をアップデートしてくれます。

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(お寺と建物が入り混じるバンコクらしい景色がみられる。)

VT:タイの最近のイラスト、グラフィックデザイン事情はいかがでしょうか?

Y:現在人気があるのはやはりNFTではないでしょうか。作品販売がデジタル化されて、世界のアートシーンの幅が一気に広がっています。タイのNFTアーティストの未来、楽しみですね。
あと、長場雄さんやNORITAKEさんはタイでも大人気です。タイのイラストレーターさんでも日本のようにミニマルなイラストを描かれる方は何人もいますね。

P:インターネットのおかげで情報やトレンドが瞬時に世界中に出回るので、作品を見るだけではどこの国のデザイナーか区別ができにくくなった気がします。タイという国に囚われず、みんな世界で活躍していますね。

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(御神木はタイあるあるだそう。)

■日常はもっとおもしろい


VT:作品の注目して欲しいポイントはどこになりますか?

Y:手書きっぽい描線にポップな色調とグラフィカルな構図でイラストを切り取っています。日常で出会ったシーンのように見えるけど、それが実現しているのか、それともフィクションなのかハッキリわからない。それを楽しんでいただきたいです。


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(一緒に来た友人が写真を撮っているから食べるのを待ってくれているのか...「もしかしたら写真に自分も写っているのかも」?想像が膨らむワンシーン。)


VT:日常を切り取ったようなイラストが特徴ですが、お二人にとって”日常”Routineの魅力はどこにあるのでしょうか?

Y:何気ない日常も角度を変えて見つめ直すだけで新しく見えてくることもあります。当たり前のことだけど、その発見に感動することが多いです。

P:逆に自分以外の他人の日常を過ごしてみたらどうなるんだろう?と考えるのも面白いですね。

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(フードトラック、ではなくフードトゥクトゥク)


VT:制作の際にツールは何を使っていますか?

P:主にiPadアプリのProcreateです。媒体によってIllustraterになることも。


VT:スキルアップのためにされていることはありますか?

P:僕はカリグラフィーの練習をしています。イラストと組み合わせてかっこいいものができるといいなと思って。

Y:私は人が身に着けている小物や仕草など、細かいところをよく観察するようにしています。イラストはポップ調だけど人物は自然に見える。その絶妙なコントラストがあるイラストを目指しています。


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VT:最後に、今後やってみたいお仕事はなんでしょうか?

P:映画関係のお仕事です!(笑)。

Y:私は画面上で見るお仕事が多いので、実際に手にとって近くで見てもらえるお仕事がしたいですね。


Studio Routineのお二人、ありがとうございました!
日常に新たな点を与えるStudio Routineの作品。この人は本当に実在するのか?この場所は本当に存在するのか?そんな風に考えながら作品を楽しんでみてください。


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