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サキミの事例インタビュー①

『連携支援は、職場対応力を高める!』

ビジョン・クラフティング研究所の土台は、マネジメントコンサルテーション(以下、マネコン)です。私ども株式会社ジャパンEAPシステムズのカウンセリングサービスでは、ご相談者ご自身のサポートだけでなく、ご相談者をサポートなさる管理職や人事の皆様へのコンサルテーションサポート、マネコンにも注力しています。

そのマネコンについて、EAPカウンセラーのサキミがご一緒に対応した人事や管理職の皆様とともに実際の事例のように振り返りながらご紹介します。
※事例は架空のものです。

第一回目は、人事と連携して休職者をサポートする中で、職場の対応力も向上した事例『連携支援は、職場対応力を高める!』です。

メンタルヘルス不調者への対応はほぼ手つかず状態

サキミ:
今回は、メンタルヘルス不調による休職者対応のご経験がほとんどなかったA社人事のTさんとともに事例を振り返ります。

Tさん:
欠員が出た部署で、人員補充が間に合っていない中、業務が増えたK氏が長残による睡眠不足と疲労の蓄積で「うつ状態」で休職なったケースでした。今となると、もっと事前にできたこともあるなあ。

サキミ:
早速振り返りましょう。

Tさん:
うちは、これまでメンタルヘルス不調による休職者はほとんどいなかったから、EAPもきちんと使ったことがなかった。でも、一応、存在は知っていたから、K氏の休職開始時に「EAPを使ってみて」とだけ案内はして。だから、本人も最初は利用している様子はなく、状態は事務連絡のついでに、ちょこっと確認する程度。その後、普通に過ごせるようになってから、ようやくEAPに連絡をしたんだよね。

サキミ:
はい、EAPでは休職開始時の療養期からもサポートいたしますが、K様は日常生活を普通に送れるようになってから連絡をくださいました。人事や管理職の皆様とご一緒にK様をサポートできると、再発予防の効果が高まるため、EAPからTさんに報告する同意もとりました。

Tさん:
初めはK氏自身が状況報告してくるなら、特にEAPから連絡をもらわなくてもいいと思ってたよ。まあ、報告をくれるって言うなら、一度聞いてみるか、くらいの感覚で。大変なのは休職したK氏だけではないし、自分も忙しいから、一度話を聞いたら、あとはお任せしちゃおうと思ってた(笑)

実際に報告を聞いてみると、K氏の現状だけでなく、

・ 生活(特に睡眠)を整えることの目的
・ 現場の環境も含めた不調の要因
・ 不調の要因にも関係したK氏の特徴
・ 今後の見通し

まで、見えるようになってきた。その場で、わからないことや疑問点もクリアになる。

そうか、現行の残業時間管理は、産業医面談対象者の選定手段みたいになってしまっていたけれど、本来、不調者の早期発見や不調予防が目的だよなと思い返したことを覚えている。

うちは精神面で調子を崩すと、ほとんどの人が辞めてしまっていた。K氏は自分で連絡してきてくれたけど、連絡してこない人は放置だったな。もったいないことをしていたね。

やることは見えてきたけれど、負担感も増した感覚

サキミ:
人事の仕事は多岐にわたるので、休職者対応も細やかに、となると、それはご負担も大きいですよね。

Tさん:
そうなんだよね。やることが見えてきて、やった方がよいこともわかってきたけれど、それでも、どこかで、「大人なんだから、辛かったら、そう思った時点で、すぐに言ってくればよかったのに」「自分でできることももっとあるんじゃないの」とも思っていた。それをサキミさんに率直にぶつけてみたら、すごく共感して受け止めてくれたね。

サキミ:
そこにこそ、K様ご本人の課題であるセルフケアや相談などの対処行動の不足があらわれていました。K様の全体像を理解する上で、大事なお気持ちだったと思います。

Tさん:
そうそう、K氏の課題ももちろんあって、そこもK氏自身が課題を克服するサポートをしてくれて、単なる甘やかしではないことがよくわかった。

それだけでなく、自分たち“人事“や”上司”が社員にとっての”評価者”であることやそれによる相談のしづらさといった視点にも気づかせてくれた。そうか、“人事”や“上司”の私たちは、社員にとって重要な職場環境の一部なんだな、と。

でも、職場環境でもあり、サポーターでもあり、また、なんだか負担が大きくなった気がしちゃったよね。その上、メンタルヘルスの状態にも目を向けるなんて…。またまたちょっと気後れしちゃって。


事例性への着目と役割分担で、負担軽減

Tさん:
そのときに、サキミさんが会社側の人事と外部機関のEAP、そして社員のK氏が取り組むことをそれぞれ整理してくれた。”事例性”というキーワードも学んだっけ。

サキミ:
病気か否かではなく、“事例性”は職場で問題となっているか否か、本人や周囲が困っている行動に着目する視点です。持病があっても生き生きと働き、成果を出している人はたくさんいらっしゃいますからね。

Tさん:
そうそう、”事例性”。これはわかりやすかった。職場で問題かどうか、仕事ができているかどうか、だから、勤怠管理といった客観的指標も重要になってくると合点がいったよ。

この”事例性”を念頭に置いて職場復帰までの対応を考えると、休職者の状態把握や休職者の安心のための連絡の重要性、必要なタイミングも・・・。サキミさんの助言がどんどんつながってきた。

サキミ:
負担感は軽減されましたか?

Tさん:
そうだね。その頃には復帰が見通せるようになって、今度はその先だな、と自然と考えちゃって、負担感は忘れていたよ(笑)


自然と対応が見えてきて、先が見通せるように

Tさん:
実際に、復帰後が本番だからね。K氏が元気に力を発揮できるように何とかしたいと前向きな気持ちが強くなっていた。それが、「安全配慮義務」の実践だと理解できた気がする。

サキミ:
それで、「安全配慮義務の観点からは、復帰後の環境はどの程度調整したらいい?」と訊いてくださったんですね。

Tさん:
成長したでしょう。休職したK氏の特徴を踏まえつつ、でも公平な対応をしたいと思っていたんだ。客観的に必要と考えられる点について助言をもらえて、これなら、我々人事だけでなく上司も対応がしやすくなると思えたから、上司をサポートに巻き込むのも自然とできた。

そのときも、サキミさんは、現場上司と人事、EAPのそれぞれの役割を明確化してくれたね。同じ方向性を向いて、個々のやることが明確になって、実質的な負担が軽減されたし、何より安心感が大きかった。

実際、このころはK氏も不安げな様子が落ち着いて、表情や声の調子からも復帰準備が整ってきたことが感じられていた。

安心して話をしてくれている感じがあり、「休職当初は、会社のせいだと思っちゃっていました。今では、こんなにサポートしてもらって感謝しています」とぶっちゃけつつ、お礼を言われて、嬉しかったな。これからも、率直に話ができそうだなと実感したよ。

サキミさんからも、K氏が人事と上司に感謝してくれていると報告をくれたね。この仕事は、社員をサポートするのが当たり前になっているから、こうして感謝されることが嬉しく、力になることを思い出したな。サポートがうまくいっていることに充実感を持てるようになってきた。

それに、復帰直前には、我々から見たK氏の様子とサキミさんからの報告もほとんど一致してきたよね。最近では、EAPに訊かなくても、次の対応が自然と見えてくるようになってきているよ。サキミさんも知っているけど、無事復帰したK氏は今も元気に働いてくれているし。そうそう、この間、別の部署で休職者が発生したけれど早速EAPにつないだから。また一緒にサポートをよろしくね。

サキミ:もちろんです!

サキミのマネコンは進化しながら続きます。

■サキミのプロフィール

サキミさんアイコン

ビジョン・クラフティング研究所 シニアコンサルタント
臨床心理士・公認心理師・1級キャリアコンサルティング技能士

フランス文学科を卒業し一般企業に就職。働くことの楽しさと厳しさの両方を味わう中で、精神分析学者のフロイトの『健康な大人は、愛することと働くことができる』という言葉に出会う。「大変な思いをして働いている大人をサポートしたい!」と大学院に進学し、臨床心理士を取得。大学院在学中にビジョン・クラフティング研究所所長である松本の講義を受け、「EAPこそ、私がやりたかったことだ!」と感銘を受け、株式会社ジャパンEAPシステムズに入社。現在は、カウンセリングに加え、マネジメントコンサルテーションの奥深さと有効性に魅せられつつ、それらを探求する日々。