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安心して変化を受け入れられる人

「過去を捨てて変革を成し遂げよう」とスローガンを掲げる企業は少なくない。だが、はたして、どのぐらい過去を捨てればいいのだろうか。

もし、十ある要素のうち十を捨てたら、明日からまったく仕事はできなくなってしまうということは断言できる。

十五年ほど企業変革の仕事をやってきたが、じつは、どんな企業でも十ある要素のうち、ポイントとなる一か二ががらりと変われば、大変革なのである。それで十分、売上シェアが上がったり、社員が元気になったり、お客さんの見る目が変わったりする。

個人も同じだ。私が「変革のパラドックス」と呼んでいる次のような法則がある。

人は、自分の中に「変わらなくてもいい素晴らしい部分」があると気づいたとき、安心して変化を受け入れる

「おまえはダメだな。自分を変えなきゃ、浮かばれないよ」こういう一言をいわれたことのある人は、けっこういると思う。上司や先輩から、あるいはダンナや奥さんから、またいわれるんじゃないかとビクビクし、またいわれちゃったとがっくりする。そんなことは、毎日そこらじゅうであることだろう。私だっていわれたことがある。

ところが、こういういい方は、仮にいっている内容が間違っていなくとも、相手をその気にはさせないものだ。

人間は人格の全部を否定すると動けなくなる。まずいところは直したほうがいいが、じつは直さずにもっと磨いたほうがいい、あるいはいまのままで十分素晴らしいという部分が必ず、誰にでもある。そこがわかると、それ以外のところを変えていくことに抵抗はなくなる、というのが人間なのだ。

自分の素晴らしい部分をしっかり把握していると、まずい点を直す努力はむしろ楽しい作業になる。それによって自分が否定されることはないと自信が持てるし、自分の素晴らしい部分がますます輝く。周囲の中でいっそう一目置かれる存在になっていく。

一見、どんどん変わっていくことをいとわない人、変化に機敏に対応して成功していく人というのは、逆に自分のほんとうに大事にすべき「変えるべきでない素晴らしい部分」をしっかり自覚し、そこに自信をもっている人なのである。だから、人の話も、柔軟に聞いてくれるし、偏見なく判断できるのだ。

変えるべきでない自分の中の素晴らしい部分を発見しよう。そうすれば安心して変わっていける。

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