Kermack-McKendrick方程式から基本再生産数を導出する (1)
イントロ
自分のやっている研究で基本再生産数の導出を行う上で, 理論からしっかり抑えたいと考えてKermack-McKendrick方程式を勉強したのですが, なかなか良い資料がなく, 独学するハードルが高いと感じたためこの記事を書くことにしました. もし僕が勘違いしていることがあったら連絡してください.
また, 前提として常微分方程式, 偏微分方程式, SIRモデルについてはある程度知識を有している読者を対象にしております.
今回はKermack-McKendrick方程式とは何かについて説明します.
Kermack-McKendrick方程式とは
Kermack-McKendrick方程式(以後KM方程式と呼称)とは, 1927年にKermackとMcKendrickという二人の天才によって構築された理論で, 感染症の疫学現象を捉える上で非常に重要な役目を果たす方程式のことです.
式は以下の4つの式で与えられています.
$$
\frac{dS(t)}{dt} = - S(t) \int_{0}^{\infty} \beta(\tau) i(t, \tau) d\tau …(1)
$$
$$
i(t, 0) = S(t)\int_{0}^{\infty} \beta(\tau) i(t, \tau)d\tau…(2)
$$
$$
\Big (\frac{\partial}{\partial t} + \frac{\partial}{\partial \tau} \Big )i(t, \tau) = -\gamma(\tau) i(t, \tau)…(3)
$$
$$
\frac{dR(t)}{dt} = \int_{0}^{\infty} \gamma(\tau)i(t, \tau) d\tau…(4)
$$
では, 早速この式たちについて見ていきましょうか!!!
まず, この式で使われている記号についてまず説明します!!!
では, これに沿って式の意味を理解していきましょう!!!
(1)について
まずは(1)の式の意味から確認します. この式は「時刻tがちょっと進んだ時非感染者:Sはどのくらい変化するか」という変化量を表しています.
(1)の右辺に着目すると, $${\int_{0}^{\infty} \beta (t) i(t, \tau)d\tau}$$という式が目につくと思いますが, この式は全感染齢における感染力(SIRモデルでは$${\beta I}$$)で, いわゆる一人当たりの伝達係数が$${I}$$人分強くなったというだけの式です.
すると, (1)の意味はちょっと時間が進むと$${-S(t)\int_{0}^{\infty} \beta (t) i(t, \tau)d\tau}$$という人数が感染するという意味になります. (非感染者:Sのグループから除外されるためマイナスを付けた)
(4)について
次にちょっと飛んで(4)の式の意味を確認します. この式は「時刻tがちょっと進んだ時Removed:Rはどのくらい変化するか」という変化量を表しています. つまり, 先ほどの(1)の時とほぼ同じく, (2)の意味はちょっと時間が進むと$${\int_{0}^{\infty} \gamma(\tau) i(t, \tau) d\tau}$$という人数が回復という意味になります.
(2)について
では, いよいよ本命の(2), (3)ですが, まず(2)は(3)の方程式の上手い境界条件になっていることを頭の片隅に置いておいてください!!
んじゃ考えていくのですが, まずi(t, 0)ということは$${\tau=0}$$ということであり, 感染齢が0つまり, 感染した瞬間ということになります.
感染した瞬間は感染者集団$${i}$$の人口は増加しますよね?
そこで, どれくらい増加したかというと, Sから流れ込んできた人口分そのまま感染者として計上されるため, (1)の式の右辺のマイナスをプラスに変えた式が(2)の右辺と一致します.
しかし, この感染が起きた時刻から少しでも時間が経ってしまった場合, 回復する人々が出てきてもおかしくはありません. そのために(3)があるのです!!!!
(3)について
では, (3)について考えて見ましょう!!!!!
(3)の左辺は「時刻tと感染齢$${\tau}$$をそれぞれ少しずらしたとき」という言葉に翻訳できます. すると右辺は, $${\tau}$$に応じた回復係数$${\gamma(\tau)}$$「かける」その時点での感染者$${i}$$という人数が回復していくことになります. そのため, 感染人口i(t, $${\tau}$$)から除外されるため, マイナスを付けています.
また, $${\tau}$$全体での回復率ではなく, ちょっと$${\tau}$$がずれた時の回復率であることに注視すれば, 右辺が$${-\int_{0}^{\infty} \gamma(\tau) i(t, \tau) d\tau}$$にならないことはわかると思います.
次回について
次回はKM方程式の特徴について線形化して確認していきます!!!!
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