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噓日記 6/29 牛丼屋のうなぎ

会社帰りに牛丼屋に寄って鰻丼を買った。
私と牛丼屋の鰻、初めての邂逅である。
大盛りを頼んでも千円しないお手頃さに若干引きながらも持ち帰りで一人前、袋に入れて持ち帰る。
家に帰り服を着替え、冷蔵庫で冷やした缶ビールを一本取り出して、グイと飲み干す。
喉を落ちてゆく、冷たい苦味が蒸し暑い今日をなんだかいい一日であったと誤魔化してくれる。
買い置きしていた卯の花を小鉢に添えて、ついでに豆腐を切って冷奴に、そして冷凍の枝豆も加熱して皿に盛る。
独身男性最高の夜だ。
今夜はパーティーだ。
明日は金曜、最後の景気付けを木曜の晩に行い、立ち向かうのだ。
契約している衛星放送でプロ野球を観戦しながら、枝豆を摘み、ビールを一口。
冷奴を箸で切り崩し、生姜を乗せて、一口。
卯の花を口に運んで、またビールを一口。
木曜日とはこういう楽しみ方がいいのかもしれない。
明日への責任感を残したまま、木曜まで戦い抜いた自分を労う日。
テレビに映る野球の実況がどこか遠くで聞こえるような気がする。
枝豆も冷奴も卯の花も、全て食べ切りビールも二缶開けてしまった。
ゆっくり食べよう、ゆっくり飲もう、この余韻を楽しもうと頭では思っているのだが、仕事中の早食い癖がどうしても抜けず私の食の風情は年々失われている。
いつのまにかすごいスピードで消化してしまっている。
まぁ、いい。
今日のメインは鰻丼だ。
さてどんなものだろうかと、買ってきた袋から取り出してみると腕にズシリとなかなかの重みが伝わってくる。
蓋を開けてみると、米の上に半身の鰻が一枚乗っている。
どうやら大盛りにしても鰻の量は増えないようだ。
そりゃそうだ。
並からの値上げ幅を考えても、鰻を増量するのは難しいだろう。
まぁ、味をみてみよう。
箸で鰻の身を少し裂いて、米と一緒にいただく。
しっとりとした身を蒲焼きにしていて、優しく甘辛いタレが妙に米に合う。
なかなかどうして悪くない。
チェーン店、特に牛丼屋の鰻とくれば門外漢がいっちょかみしたようなものだと考えていたが、考えを改めなければならない。
牛丼屋も何かプライドを持って鰻に取り組んでいる。
その味をまざまざと見せつけられた。
まるで、私も真面目に取り組めよと言われているような気さえした。
しかし、大盛り。
米が多い。
異様に多い。
うんこした赤ちゃんのオムツ三個分くらい重い。
木曜日には重すぎる。
金曜なら全部いけた。
ただ木曜には重いよ。
ちゃんとしろよ。
私の年齢考えろよ。
頼むよ。

どりゃあ!