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噓日記 8/6 パワー散歩

今日は力が有り余って仕方がなかった。
歩を止めて仕舞えば全身にみなぎるこの力が溢れ出してしまうような錯覚さえして、散歩する足が止まらない。
朝から夜の八時まで、絶えず散歩を続けた。
そのついでに俺の有り余るパワーで世界を少しずつ変えて歩いた。
まず、近所のコンビニまで行き普段買う発泡酒を買わずにちょっといいビールを買い、店の前で飲み干した。
大事に大事にゆっくりとではない。
水を飲むのと同じスピードで、引っ掛かりなく飲み込むのだ。
ビールは300円の味がした。
富める生活の温度がした。
飲み干した缶は停まっていたベンツのマフラーに入れておいた。
少し早いクリスマスプレゼントだ。
資本主義へのアンチテーゼだ。
そこから逃げるように神社へ向かう。
境内の真ん中に立ち、普段はやらないことをやってみる。
顔の前で右手で十字を切る。
まさか神様もここまで別の宗派のことをやられることはないと思っていただろう。
それが狙いだ。
俺はその間隙を穿つ。
穿った穴をさらにこじ開ける。
賽銭箱の前に立ち、二礼、ニ讃美歌、一鉄山靠。
二度頭を垂れ、讃美歌を二曲歌い、賽銭箱に鉄山靠をかました。
賽銭は入れなかった。
そのまま足早に去った。
ついでに鳥居にも鉄山靠しといた。
あいつ、泣いてた。
近くのゲームセンターへ向かう。
一人プリクラを撮る。
背景は青、真正面を向いて証明写真と同じ締まらない顔で撮る。
撮影を終えて、落書きをする。
証明写真みたいな俺の顔に落書きを加えていく。
目線を引いて、どすけべ女連絡してねと書き、電話番号を記入する。
番号はもちろん夢グループに直通でかかる。
そのまま近くの業務スーパーで安いスポーツドリンクを箱買いして、キャップにプリクラを一枚一枚貼り付けていく。
それをどうしたかというと、近所の高校の女バレに差し入れた。
ここのOBなんだよ、頑張ってね。
そんなことを言いながらマネージャーらしき生徒に渡すと喜んでいた。
良いことをすると気持ちがいい。
これは今後も繰り返そうと思った。
女バレにOBがいるという歪みもスポーツドリンクの前では認知されないのだ。
ようやく迸る力が落ち着いたのでここまで来るときにずっと地面に垂らし続けていたオシッコを辿り、家まで帰った。
この猛暑で乾いて消えてしまっていたので泣きながら迷って帰った。
そしてこの日記をつけているこの時間。
先ほどからひっきりなしに電話がかかってきている。
警察か、神社か、女バレか、夢グループか。
一か八かだ。
女バレを引き当てたい。
女バレ、好きやねんな。
なんかお母ちゃんみたいやし。

どりゃあ!