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噓日記 7/10 記念ライブやります

記念ライブをしたい。
何の記念かといわれたら何の記念でもないのだが、記念ライブを開催したいという思いだけは長年溜め込んで生きてきている。
この世には二種類の人間がいる。
記念ライブを開催できる人間と記念ライブを開催できない人間だ。
俺は可能なら開催できる人間サイドに立ちたい。
記念ライブだから見にきてね〜と客を呼び、祝ってもらう立場にも関わらず暴利を貪ることが許されるのはもはや厚顔無恥のその先、悟りにさえ近づいた行為だと思う。
一般的な感覚に言い換えてしまえば、俺の誕生日会を開催するからプレゼント持って俺ん家集合な! と呼びかけているのに近い。
そんなことやったらダメだというのが一般的な感性だろう。
しかし、記念ライブならその邪智暴虐の限りを尽くすことが可能となる。
俺はみんなの為に歌を歌うから、みんなは俺とチェキ撮って、グッズ買って、ついでに感動して泣いてくれよという横暴が許される。
言ってみれば俺はそういうバランス感覚を手に入れたいのだ。
ファンが暴れない程度に利益を啜り、それでいてファンが充足したと錯覚するような経験を与える、そんなバランス感覚を。
往々にして、アイドルはそんなバランスを欠いた行動から炎上に繋がる。
某アイドルグループの結婚報告後に行われたバスツアーなどがその最たる例であろう。
女性のアイドル性、処女性を売り物としてきた過去とそれを信じたファンの歪なバランスが結婚報告で揺らぎ始めた折に開催されたバスツアー。
そのツアーの中身がお粗末であったならば、それはもう晒し上げられても仕方がない。
アイドルがアイドル性を失ったのだ。
ファンとしてはその失われた部分こそが彼女をアイドルたらしめていて、そこが失われてしまうことで他の部分でその損失を埋め合わせようとするのは想像に難くない。
その埋め合わせには至らないツアー内容であったのならば、攻撃の対象はツアー内容だけにとどまらずそのアイドルにまで波及する。
そんな事実があり、俺はそれを恐れている。
だが、だからこそ俺は記念ライブを開催したい。
自分が提供できる利益とファンが獲得する幸福感のバランスを一度確認してみたいのだ。
そこで俺が炎上する危惧などはもはや一度捨て置く。
試金石なのだ。
俺がこれからアイドルとしてやっていけるか。
そして、そんな俺に金を落とすことに幸福を覚える人間がいるかの。
俺はそんな彼らのために歌いたい。
そういう歌を歌いたい。
誰かを傷つけて流れ出た言葉で、誰かを救う歌を歌いたい。

以上、大泉逸郎のインタビューより抜粋

どりゃあ!