見出し画像

噓日記 2/10 おいていかれて

おやすみだい!
三連休だい!
と勢い込んで休みに突入したはいいものの、起き上がってまでやることなんて特にないからベッドで横になっている。
大丈夫、将来寝たきりになったときの予習と考えれば辛くない。
しかし、世間の同世代は連休になったら何をしてるんだろうか。
俺と同じ働き盛り、どうせ平日の疲れが溜まって何もやりたくないはずだ。
そうであって欲しい。
休日だと言っても一日特に何もせず、サブスクの動画なんかを一日中流し続ける日を過ごしているに違いない。
なんなら、その点俺の方が優れているかもしれない。
だってサブスク、加入してないもん。
俺は世間の同世代に比べると映像だったり音楽だったりに対する興味が薄い。
単純に時間に対する情報量の薄さがどうしても苦手なのだ。
好きな人からすれば、それはお前が見る素養や聞く素養を持ち合わせてないだけだろう、と言いたいところだろう。
実際のところ、そう。
俺は見たり聞いたりの中のテンポを大事にしている。
だからテンポが悪すぎても良すぎても苦手で、自分の中でしっくりくるスピードでしか噛み砕けないのだ。
だから俺はどちらかというと文字を読んでいる時間の方が好きだ。
文字は良い。
俺の好きなタイミングで現れて、俺好みのスピードで流れてくれる。
俺はちょっとした活字中毒のきらいがある。
暇さえあればネットニュースだったり、新聞だったり、広告だったりを眺めてしまう。
ただ、これは俺だけの特性じゃないと思う。
現代のSNS文化に染まった若人たち、彼らもきっと俺と同じ感覚を共有しているんじゃないだろうか。
置いていかれないように文字だけの情報を追い続けて、ベッドの上で老いて枯れるように生きている。
人生において、その時間という配分を自分のペースで支配したいというエゴが強く現れているのだ。
つまりどういうことか。
そう、俺は同世代の奴らと比べると、感覚的に若人に近いということ。
おい、ジジイババア!
俺は若いぞ!
まぁ、魂が小四だからね。
今でもなんか虫嫌いだけど昆虫採集とかしたくなるもん。
ヒシバッタ捕まえてぇ。
あと、公園の謎の遊具の上でカルパス食いてぇ。
ジャングルジムの上から街ゆく人々監視してぇ。
夕方のチャイムで帰っていく友達たちの背中、見送りてぇ。
そんで最後に残った俺だけがそこに置いていかれてぇ。
街灯の下で一人、鼻歌歌いてぇ。
公園をショートカットして帰宅するサラリーマンを走って追いかけてぇ。
そうやって狂いてぇ。
置いて、イカれてぇ。

どりゃあ!