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噓日記 10/18 ニコチンの王

連日続いた熱も少し下がって、安定して37度台で落ち着いてくれているので今日の日記は軽やかに書き始められた。
昨日、一昨日と40度近い熱にうなされていたのだが医者から貰った気持ちよくなる薬を飲んで半日ほど経った頃、38.5度くらいに熱が下がった。
普段だったら苦しくて仕方がないであろう体温だが、連日の高熱と比較してその快適さに驚いた。
まず体が軽いのだ。
高熱の時は可能な限り、文字通り床に臥せていたいくらいに体が重く、起き上がったらクラクラするというかバランスが崩れそうになるほど気持ちが悪いので布団を被ったままキュピキュピとスポーツドリンクを飲んでいた。
しかし、38度台は素晴らしい。
まず、体温計を確認し、起き上がってみると気持ち悪さがないことに気付く。
もしやと思い、立ち上がってみてもフラつかない。
これはチャンスだと思い、高熱の間できなかったことをやっていく。
まずはもうタバコだ。
体調が悪いとタバコは不味くなる。
私は健康診断を受診する代わりにタバコで体調を診断している。
大丈夫、ウチの母方の先祖は皆早めに死んでいる。
発熱中は咳の症状も酷かったのでタバコも満足に吸えなかった。
一日に一箱弱吸っていた私が、その間は一日に十三本。
思ったより吸っているがこれはライフラインのようなものなので健常者にとってのガスの使用量と同じくらいに考えていい。
明日からガスの使用量を三分の二にしろと突然言われてもなかなか困るだろう。
それが私にとってのタバコだ。
オール電化している家庭に関しては私の魂に入ってくるな。
そんな飢餓状態からの一吸い。
至福も至福。
あぁ、生きている。
人間は死を早める行為の中で、初めて自身の生を確認するのだ。
しかしながら、まだタバコは不味い。
それもそうだ。
まだ私の体の中にはインフルエンザのウイルスがたんまりと居て、大暴れしている最中なのだから。
だが、ニコチンは私を慰めてくれる。
これは喫煙者の中でだけ伝わるジンクスなのだが、ニコチンは貯金できる。
吸い溜めは可能であるという都市伝説だ。
私は今のうちからはちゃめちゃに吸う。
もし、また明日から体調を崩してもいいように、明日の分までタバコを吸う。

このタバコ 止めちゃ嫌だよ 吸わせておくれ
まずはキャメルが 吸いやすい

スーパーパクリ都々逸も出ます。

平熱って幸せだ。
幸せって平熱だ。
変わらないなだらかさが与える平穏は私たちの生活にずっと横たわっている。
目に見えない幸せに気付けるのはいつだって不幸の最中。

どりゃあ!