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噓日記 9/17 笑える偏見

笑える偏見というものに世間はもっと寛大になってもいい気がする。
もちろんこんな世の中だ、差別の温床になるような穿った見方から生まれる偏見は滅ぶべきだし、あってはならないことだと思う。
だが、親しい仲の友人同士で意味もなく偏見をぶつけ合う面白さというのもまた許されるべきだと思っている。
例えば友人の家に初めて招かれるとする。
そこで友人が拘っていそうな内装を先に予想するのだ。
それも立派な偏見である。
「お前、彼女いねーのに間接照明で過ごしてそうだな」
「お前、彼女いねーのにL字のソファ買ってそうだな」
「お前、彼女いねーのに食器は2セットずつ買ってそうだな」
こんなものでいい。
軽口だが、ちょっと納得できるライン。
自分だったらもしかするとそこに拘るかもという部分を先につついておく。
そしていざ当日、友人の部屋と偏見を照らし合わせる。
当たっていても、外れていても、どちらにせよコミュニケーションのきっかけになるのだ。
当たっていれば本当に〇〇じゃねぇか、と一笑い起きるし、外れていればそら彼女できねーわと一笑いが起きる。
お互いが信頼し合って言い合う偏見はコミュニケーションツールなのだ。
その程度の偏見はもっと活発に使われて欲しい。
「中学生の頃、小豆色のママチャリ乗ってそうだな」
「坊主のくせに軽音部入ってそう」
「ガールズバーで嫌われてそうだな」
「会社で褒められたこと寝る前に思い出してそう」
この中に一つだけ使ってはいけない偏見がある。
そう、それはガールズバーで嫌われてそう、だ。
男はガールズバーで嫌われることを何よりも怖がる。
現に俺はいつだってガールズバーで女の子のご機嫌を取るために生活している。
だから、そんなプライドをへし折るようなことを言ってはいけない。
他は全部言ってもいい。
だってプライドは傷つかないから。
女の子から嫌われることを男は何よりも怖がる。
俺も仕事で失敗するよりもガールズバーで嫌われるほうが8倍怖い。
ガールズバーの店員の子からLINEを聞かれたんですけどこれっていけるんでしょうか?
複数人で行って、俺だけ聞かれたんだけど。
あとちょっとだけパンツ見せてくれたんだけど。
複数人で行って、俺だけ。
俺、多分いけると思うんだよね。
俺はガールズバーで紳士を気取る。
一緒に行った友人に対して偏見をぶつけることもない。
めちゃくちゃ紳士。
カスだから。
俺、カスだからすぐに格好つけちゃう。
でもいいんだ、だって俺にはあの子のLINEがあるから。

どりゃあ!