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噓日記 1/20 赤いハンバーグ

俺はハンバーグが好きじゃない。
食べられないほど嫌いかと言われたらそんなことはないし、美味しくないかと言われてもそんなことはないと思う。
ちゃんと美味しい。
だが、俺はハンバーグを食べるのが嫌なのだ。
なんかハンバーグって不倫理な感じがするし。
お肉を挽いて焼いて食べるってすごく怖い。
これがステーキならそのマテリアルが感じられていいのだが、ハンバーグは素材の良い部分だけ摘んでる感じがしてならないのだ。
ディストピア飯みたいな感じ。
素材の清濁併せ呑むという気概を感じられないところが苦手なのだ。
それを工夫と言うのだろうが、俺はその工夫に寛容になれない。
だが、もちろんそれは俺が食べる時だけに適用される不寛容。
他人がハンバーグが好きでも、ハンバーグを食べていてもなんとも思わない。
好きに食べて大きくなれよと思う。
他人が食べるものにまでケチをつけ始めたら文化の侵略者となってしまう。
俺はダイバーシティを互いに認め合いながら生きていくことに強く憧れがある。
その足がかりとして各々のハンバーグとの向き合い方を認めていきたいのだ。
ただ、そんな俺にも許せないものがある。
赤いハンバーグだ。
赤身のままで提供されて炭火やら熱した鉄板で焼いて食べてね、という映えるあれだ。
あれは許せない。
まず、危ない。
あんなものは客の衛生感がそのまま安全性に反映されるものだろう。
気が大きくなったアホがあまり火が通っていなくても食べてしまうことが想像できる。
彼らの行動原理は単純。
そういうアホは動物と基本的には変わらない。
火を恐れる。
火を恐れるあまり生食に走るのだ。
それはもう戦後の日本教育の過ちと言い換えても過言ではないだろう。
嘆かわしい。
ハンバーグはどんな肉で作られているのか知らないのか?
そう、挽き肉です。
挽き肉には製造過程で菌がつく可能性があるのに、中心部まで火を通さずに食べるという抜け道がある提供方法が罷り通っているのが不思議でならない。
体調がすぐれないもの、子ども、老人などがそんなものを口にして食中毒のリスクがどれだけあるか、想像に難くないだろう。
俺が子どもの頃はハンバーグの中心まで火を通すのは当たり前だった。
だって死ぬかもしれないから。
焼いているハンバーグに竹ひごを刺して肉汁を確認する、なんて工程もあった。
だが今はどうだろうか。
変化していく食文化を否定する気はないが、完成された文化を破壊する映えには疑問を呈さざるを得ない。

どりゃあ!