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噓日記 4/29 心霊スポットと神野悪五郎と山本五郎左衛門

暇で暇で仕方がなかったので心霊スポットに行ってみた。
雨が降る中、一人心霊スポットに行く。
車を走らせ、40分。
県内でも霊が出ると有名な山の中の小さなトンネルにたどり着く。
時間は夜7時、日が長くなってきたものの辺りはほとんど夜中と変わらない明るさしかない。
それが更に山の中だ。
照明なんてものはないし、人気も無い。
ぽっかりと口を開けたように佇むトンネルの様子は、見るものを不安にさせる妖気を発している。
なるほどそれは心霊スポットだと騒がれるだけの雰囲気は持っているようだ。
車でトンネル内部まで進入していく。
内部とはいったものの入り口から出口が見通せる程度の小さなトンネルだ。
長さにしておよそ40メートル程度。
その中腹、20メートルほどの場所を目指し進入を開始する。
トンネルにフロントガラスが隠された瞬間、スッと異世界に迷い込んでしまったような、そんな空気の変化を感じる。
車のボディーをしきりに叩いていた雨音はボンネットからルーフ、バンパーへと走り抜け、トンネル内に車全体が入り切った瞬間に驚くほど静かに止んだ。
そこから場を支配したのは冷たさすら感じるほどの静寂。
エンジン音もどこかくぐもったような、耳に膜が張ったように聞こえづらい。
車を少し進めて、中腹で停める。
ハザードランプを焚いて、辺りを見回してみる。
特に変わったものはない。
あまりにあっけないものなので、シートを少しだけ倒して、猫のように体を伸ばす。
グッと力を入れて腰の角度を変えつつ、固まった筋肉を伸ばしていく。
その瞬間、ピキッという音があたりにこだまする。
空気が更に変わった。
冷たかった空気は一瞬にして怖気を感じるような不気味な気配に変わる。
冷や汗が流れる。
更に強烈な香りが鼻腔を突き刺す。
恐ろしいほどに刺激的な香りだ。
焦った私は急いでシートを起こそうとするのだが、上半身が動かない。
いや、正確には腰から上を動かそうとすると体がそれを拒否するかのように引き攣るのだ。
汗は止まらない。
そうしている間にも入ってくるかもしれない。
いや、入ってきている。
間違いない。
まだ自由に動かせる手でどうにか携帯電話を手にして、かける。
119、今後はあまりお世話になりたくない番号に必死でかけた。
その後、救急隊に救助されるまで私の冷や汗は止まることがなかった。
病院に担ぎ込まれ検査された結果、無理の体を伸ばしてギックリ腰をやったらしい。
ついでにその痛みでめちゃくちゃにうんこを漏らした。
漏らしたうんこはめちゃくちゃシートを汚していた。
あぁ、入ってきてる、シートの隙間に。
心霊スポットには行かない方がいい。

どりゃあ!