『短編小説』 美容液
あの人を愛してから、もう10年が過ぎた。
今でも、あの人を心から愛している。
あの人の心も体も全部愛している。
こんなにも、誰かの事を長いこと愛せるなんて思わなかった。
今までも、今も、これからも、ずっとずっと愛している。
ずっとずっと愛していても、決して日曜日の夜には一緒にいられない人。
月1回、土曜日の昼間の数時間、私たちは、情事を楽しむ。
電車に乗る時は、同じ車両には乗れない。
デートはいつも、人気のいない地元から離れた遠い公園や居酒屋かホテル。
もちろん入出時は、時間差である。
私はあの人を愛している
でも、心と体は別。
心は愛しているあの人で満たされていても、身体はいつも美容液を欲している
セックスは、愛があってこそ幸せを感じるけど
今の私には、セックスは魔薬となり、いつでもどこでもやりたい。
だから、いわゆるセフレというのを3人位はいつもキープしている。
今日の待ち合わせは夕方の東京某所の高級ホテル
彼の仕事はITで、このホテルの常連でもある。
いつもの上階の部屋に待ち合わせの10分前にいく
部屋に入ると、入り口の横にバーがある
そのまま進むと奥にキングベッドがあり、そのまた奥の右側にバスルームがある。
この部屋には、月に1、2回来るが、滅多にベッドは使わない
お掃除をするベッドメイキングの人はきっと楽だろうな、などとふと思う。
カバンをソファの上に無造作においた
カバンが倒れて、そのカバンからはちょっと太めの赤い紐が出ていた。
今夜はどんなお仕置きをされるのかと考えるとゾクゾクする自分がいる。
今日の私の格好は、ネイビーのAラインのワンピース
そのワンピースの下には、フリルとラインストーンのついたインディゴブルーのブラとお揃いのパンティには所々にキラキラ光るラインストーンがついている。実は他にも仕掛けがある下着。
もちろん、彼を喜ばせたいから。
なんだかんだで4時間過ごした。
やっぱり楽しかった。
彼と会うのは久しぶりだったので、お互い楽しくて激しかった。
「もっと時間をかけてゆっくりイキたかったのに、久々だったし君のは締まりがよくて、我慢できなかったよ」と。
そっか、私は締まりがいいんだ。
実際自分の締まり具合なんて分からないけど、これは褒め言葉だと思うので、なんだか嬉しい。
この彼と、愛はないけど、体の相性は抜群かもといつも感じる。
何人かのセフレと楽しんでいるけど、彼が一番フィットすると思う。
でも、結局身体だけの関係では物足りなくて、虚しくて、あの人と恋愛をしているけど、それでもやっぱり彼を切る事ができない理由はコレだと思う。
終わった後は、一緒に食事もしない。
ホテルを出て、コンビニで夕食を買って帰る。
でも、気持ちも、身体もスッキリで、すがすがしい。
特に身体は、全身に美容液をぬり、身体の隅々までが潤っている感じがする
やっぱり週1回は、この美容液が欲しいと思う。
家に帰って1人で夕飯を食べながら、ふと考えるあの人の事。
今、思い起こすとあの人が家族で旅行にいく時には必ずと言っていいほど
彼と過ごしている。
数時間だけでも、魔薬のトリコに浸かりたい。
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