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Web制作スクール出身者がいきなり請負った実案件で戸惑って挫折してしまう理由

どうも、ベテランです。
以前より制作会社等からは「Web制作スクールのカリキュラムを終えてすぐの人に『まるごとの請負での仕事依頼』はしたくない」と言われています。

スクールで勉強をしてきた人からすると「それは偏見だ!フリーランスになるために数ヶ月勉強してきたのに!」と声高に叫びたくなりそうな話ではありますが、発注側として何人にも依頼してきた側から言うと、これは真実です。
少なくとも業界未経験者なら、まずはアルバイトとして社内に入ってもらって、ある一部分の仕事を依頼して慣れてもらい、徐々に担当範囲を広げてもらうような方式であれば大歓迎してくれる会社も多いでしょう。
もしくは、業務委託という形であっても、全てを丸ごと委託する形ではなく、一部分から・・・という形になるのが多いパターンではないでしょうか。『制作の中身』を知っている会社からの依頼なら。

ここのところトラブルになっているのは、依頼側がそれ以外の『制作の中身を知らない他業種の企業』からの依頼が大半のようです。
(もちろん、制作会社でも依頼者の知識不足によって未経験者への発をトラブルを発生させている事例はいくつもあるようですが)

その1『制作の全体像を知らない』から来るトラブル

ちょっと前まではこのパターンが一番多かったように思います。
つまり、依頼側は「出来上がったWebサイト」だけしか知りません。
その制作途中がどんな工程を踏んでいるのか、何の情報が必要なのかを知りません。もっと言えば、制作が終わった時点でどう受け取るのか、そして受け取った後にどうして運用していくのかすらも知らない場合も多々あります。

問題がわからない

この状態では、どちらも「素人同士が外に見える部分だけをやりとりする」ことになってしまいます。
よく聞く「HTMLとCSS、フォトショップの勉強を数ヶ月すればWeb制作の仕事ができて儲かる」という謳い文句がそれに相当するでしょう。この認識では「目に見える部分のみ」しか作り上げることはできません。

儲かる!系のスクールが実際の業務の『ある1部分だけ』を教えていることを知らない

Web制作というものは、工程を抜粋したとして・・・

ヒアリング→要件定義→設計→デザイン→構築→納品→運用→改善

軽く流れだけでもこのくらいのものがあります。
もちろん、きちんとしたプロジェクトであればさらに「企画立案」や「予算策定」「人員配置」「それらための各業種へのアポイントメント」etc・・・と、一人フリーランスとして1本まるごとの請負業務をするならばたくさんのすることリストが目白押し状態となります。
だからこそ、1案件で何十万〜百万円以上の対価を頂ける業務でもあるのです。

スクール等で教えてもらえるのは、この中の「デザインの表層的な箇所」と「構築の基本的技術」という部分になります。
最低限知らないと何もできない』という部分とも言えます。
内容全体を考えると、対価に見合う内容でしかないのですが、スクールで教えてもらった範囲を必死になれば数ヶ月内でカリキュラムが終わってしまうということから、簡単に数十万円稼げるようになると勘違いしてしまうのは「それ以外の業務の実際」までは教えていないから、ではないでしょうか。

その2『課題と実案件では要件内容が違う』ことを知らない

Web制作スクール、特に数ヶ月でネットのカリキュラムをひたすら自力でやっていくだけ(もしくは最終課題だけ出来上がった後で添削があるのみ)にとどまるようなものは、スクールというより「自習」をしているようなものですから、自分で理解できた範囲以上の対応力が身につくはずもないのです。

実際とカリキュラムの違いを理解したほうが良い

たとえば外国語で考えてみればわかると思いますが、ラジオ講座などでお手軽に毎日必死に勉強したとします。自分では課題に沿った内容を話すことができるようになった、例題ならもうすっかり詰まらずに話せるようになった!
しかし、実際にその言語を母国語としている人で日本語を理解していない方と話してみると、断片的には理解できても日常会話に不自由がなく意思疎通ができるというレベルには程遠いことが多々発生していることでしょう。

それと同じことがWeb制作でも起こっています。
カリキュラム内では「実際の案件とはこういうものです」と例示されて、それに沿って作っていくことが多いのですが、そこにはお客様の気分による手のひら返し無理難題など絶対に起こることがありません。

カリキュラムというのは、あくまでもスムーズに勉強を進めてもらうためにノイズや不要な手戻りなどを全て排除するレベリング作業を出題側で行っています。
要は、どれだけ難題の課題であっても「多少難しいと感じる範囲でも、クリアできない人がいない比較的ゆるいライン」なのです。

実際には無理すぎて百戦錬磨でも頭を抱えるような仕事内容はたくさんある

クリアできないラインでの課題を出してしまうと、クリアできない人が大量にでてきてしまいます。目指す方向性にもよりますが、クリアが少しきついレベルであっても、脱落者は必ず出てきます。
いろんな人達が自由にSNSやブログ、Googleサービス等に書き込みできる時代です。評価が下がってしまうのです。
スクールとしてはそれだと卒業できずに挫折した人から上記の書き込みで低評価を請けてしまい、悪評が増えれば運営が成り立たなくなってしまいます。

スクールはあくまでも「興味を持ってもらい、簡単な課題をクリアしていくことで達成感を持ってもらって気持ちよく卒業してもらう」ことを目指す方向性になるのは当然でしょう。だから、「実際の案件は・・・」と書いていても、実際に仕事を始めてみると「ぜんぜん違う!」となってしまうことが多いのです。

ただ、一つだけ言っておきますと。
制作者というのは「クライアントからの要求の裏までも汲み取り、形として提供する」仕事でもあるので、その不条理さも含めて読み取れないといけません。その最初の試練をもらえると思考の変換ができるかどうかが制作者として行きていけるかどうかということにもつながるかも?

その3『ネットでのTips発信』を過信しすぎている

また、最近問題だと感じているのが「Tips」のSNS発信でフォロワーを大量にゲットしていく風潮が加速していること。

ネットのノウハウTipsは表面的な部分しか出していない

まず、制作でのTipsというのは元来「ちょっとしたヒント」「小技」というような意味合いで使われ始めていたような気がします。
要は「すでに業界でプロとして毎日業務を行っている人」に向けて「普段使わないけどこんな以外な使い方があるよ」とか「今まで使ってなかったけどショートカットできる新機能が出たよ」等の、あくまでも「普段使わないけど」が前提に来る、ちょっと知っていると助かる・知っていると楽しくなる、そんな小技の共有でした。

ということは、普段使っている機能は紹介していないということです。
それを分かって出している人と、これを知ればデザインができる!と発信している人とでは大きく発信方法が違っています。

プロが見る点と素人が見る点が違うのでバレにくい

実は、これらはプロが見れば「あぁ、上辺だけだな」or「凄い小技を教えてくれてありがとう!」とすぐに見分けがつくのですが、実際の業務を行っていない人から見れば、逆の評価となっていることが多いのです。

何しろ「業務上で分かっていて当然」という部分は端折り、その上で「普段使わない小技」を紹介しているのですから、業務を行ったことがない人からすると「何を言っているのかわからない」という情報になってしまいます。
逆に「知らないとまずい」レベルの話は、素人から見れば「デザイナーの話だ!」となるので、SNSなんかでは変にいいねをもらえたりもしています。

そのため、デザインTipsを発信している人でも「間違えている内容」のこともあれば、その人自身は実はデザイナーでもなんでもなくSNSで集客を行っているマーケターの場合だってありえるのです。(実際にマーケターやブロガーがデザイナーのバイブルとして少しかじった人たちの間で信仰の対象化している傾向がある)

意外とTipsを「デザイナーの基本」として堂々と出している発信者がいたとすると、それは少し疑ってかかった方がいい場合もあります。
「経験が少ない人」や「実際の業務はあまり行っていない人」の割合が多いのですが、それを「すごいデザイナーが発信していたから」と思い込んで、実際の業務で詰まった際に参考にしてしまうと、どうにも間違えた方向へ進んでしまうことにもつながるのです。

その4『クラウド系サービスの台頭』

少し前であればそれ以前の問題で「どこの誰にどう依頼すればいいのかすらもわからない」ということで、「それなら制作会社を辿ろう!」もしくは「取引先が使っているデザイナーを紹介してもらおう」等、あくまでも依頼先が見つからない分、プロにしか頼まない土壌が長年ありました。

そこに切り込んできたのが、スマホでも発注できる形式のクラウド系サービスです。

以前からあるクラウド系サービスでもかなり相場が荒れてしまい、きちんとしたものを納品できるプロが逃げてしまっていたのですが、UIデザインが「いかにも技術系」と見えるものであったために、比較的それ以上のカオスさは広まって行きづらかったものがあったように見えます。

ところが、スマホでのフリマやオークションが流行して、それとほぼ同じ形で出品・購入ができてしまう形での「技術の切り売り」が始まってしまいました。特に、コロナ禍で収入が減った人たちが「ちょっとできそうだから」と参入してきた時期がスイッチが入ったように思います。

実際に私のところにも「サービス名が全く同じ」素人の方が提供するサービスの画面を見せて「このくらいで提供されないとおかしい」という交渉をされる個人のお客様も結構な割合でいらっしゃいました。
今までは低予算でないと依頼ができない方々は、比較的他の案件の依頼を制作者に対して行った経験も乏しく、それゆえに「依頼方法もわからない」「何が必要かわからない」から「プロに丸投げで勝手に出来上がるだろう」という結論に達する方も多いので、大体は丁寧に説明して、必要なもの・省けるもの等の精査を行い、業務自体の全体像を整えた上での「予算内で行える範囲に抑える」サポートまでを一貫して提供してきたはずが、「なんでも引き受けて、できないから不完全で納品・逃亡・炎上」という恐ろしい事態を目にすることにも繋がってしまったように思われます。

せめてその工程の中に、たった一人でもいいので「状況を整理できるプロ」が参加していたとしたら・・・大きく異なっていたと思うと、残念で仕方がなりません。

おかしな話が横行していたのを見はじめてから約2年、今度は「不完全な制作物/未熟なデザイン」をなんとか低予算で整え直して欲しい!という依頼が始まりました。

ベースが基本を無視して作られたものを、低予算で修正することは非常に難しく・・・逆に1から作り直すほうがよほど予算的には可能という案件も。

建物で例えると、基礎工事を一切せずに突貫工事で素人が建ててしまった一戸建て、1年経って家が傾いてきたので、基本はそのままで傾きを直して地震にも強い家に補強し直して欲しい!といった感じでしょうか。
大体、基礎工事がない家の耐震工事は「ある程度までのごまかし」にしかなりませんので、基本的部分から修正するには建て直し以上の金額がかかってしまいます(一度更地にしてから建て直したほうが良い)。

これは、元々が「依頼先が見えない」「予算が一般的概念になってないので問い合わせてから驚かれるほどの金額」になっていた状況になっていた業界側にもある程度の責任があったのかもしれません。
「サービス名が同じ」で謳われているなら、安ければ安いほうがいいと思ってしまうのは当然のことでしょう。
今後、業界全体が、考えていかなくてはいけない課題でもあるのかなとも思います。

では解決法はどうするか

解決策は「仕事の流れを納品後まで全て知る」にある

まずはスクール側の課題の問題として、本気で仕事をしていきた人に対応できるレベルのあともう1段階の「本当の実践編」の対応力を養うためのコースを設けていく。または、本物の案件を現役で行っている人にメンターになってもらう。もしくはいっそのこと、報酬につながらないようなもの(=失敗しても大丈夫なもの、たとえば実践に即した練習課題も含む)にもチャレンジしてみる。
等々、いくらでも考えつくのですが、これについては長くなりそうなのでまた後日別noteにて書いていきたいと思います。

なお、私はメンターとして教える側に立つ際にはこれらを踏まえているので、多くの人数を掛け持ちすることはできません。要は師弟制度のような形です。職人さんの下の弟子が何十人もいるような工房はめずらしいと思いませんか?
スクールやサロンとして個人一人で何十人も抱えている人はプロっぽく見えないし、それほど受講生の事は真剣に教えてないんじゃないかなと思うのがそういうところです。(ただの発信者を教祖とする宗教ぽくなるのはそのせい)

お金を払ってメンターにつこうとしている人には酷な話ですが、できればきちんとその人それぞれに合わせながらも、きっちりとプロへの道筋を示せる力のある人にメンターになってもらう方が良いのでは・・・と常に心配してしまうのです。

※また、上記に書いている「Web制作スクール」については、安価で課題だけを自習形式でこなしていくだけのところや、サロン形式で「儲かる」をキーワードで集めているようなところに多い傾向だという話であって、時間をかけてきちんとしたカリキュラムを学習できるつくりであったり、マンツーマン等できっちりと指導しているところもあります。

一応、私もメンティー自体はお受けしていますが某所か直接交渉でのみとしています。頑張って見つけた人のみの対応になりますので、ここから(note)の交渉はできませんのであしからず(´・ω・`)b

記事を読んで「コンビニコーヒーでも1杯おごってあげよう!」と思った方はサポート頂けると嬉しいです♪ ※高額はやめてくださいね。あくまでもコーヒー代の足しにさせていただければこれ幸いです(笑