読書ノート 量子で読み解く生命・宇宙・時間

吉田伸夫 
幻冬社新書

量子論によって初めて説明が可能になる物理的な効果ー「量子効果」と呼ばれるーは、物質に関わるあらゆる物理現象に見られる。物質に形や大きさがあるのも量子効果である。われわれが住んでいるのが、生命を宿し複雑精妙なできごとに満ちあふれた美しい世界であるのは、量子効果のおかげである。

いくつもの原子から構成される分子が安定な構造を維持し、複雑な反応を実現するのは、原子レベルの物理現象を支配するのが、量子論だからである。

量子論は、生物であろうとなかろうと、原子レベルのあらゆる現象を支配する。物質に大きさや形があるのも、水分子が一定の角度で折れ曲がりクロロフィルが複雑な構造を保つのも、量子効果の現れである。

物質の構成要素の間に働く電気的相互作用を量子論によって記述すると、複雑な構造が自律的に(外部の誰かが意図的に形を整えたのではなく)形成されることがわかる。

量子論の本質は、あらゆる物理現象の根底に波動が存在することにある。量子効果とは、根底に存在する波動の特性が表面化することだと言って良い。

量子効果は場に生じた波動に起因する。あらゆる物理現象の根底に波動があるとイメージできれば、量子効果が生じるメカニズムがすんなりと腑に落ちるはずである。

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