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ショートショート

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自作のショートストーリーです✏️心温まるストーリーや不思議ストーリーなどを描いてます😊
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記事一覧

【ロッカールームの真実】#05ショートショート

部屋に入ると、1から100までの番号が振り分けられた扉が並ぶ。 人々は受付でやりとりしたのち鍵を受け取る。その受け取った鍵が記され、番号の扉を使用する。 注意点、一、決して鍵は無くさないでください。二、お連れ様といらっしゃった際鍵の交換はご遠慮ください。三、使用後は必ず受付にて鍵の返却をお願いします。※万が一持って帰りが発見された際は100万円以下の罰金となります。 当店のご説明をさせていただきます。 当店は、なりたい自分をコンセプトに作られました。今があるということは未来

【呼び止めたのは】#04ショートショート

夕刻、空き地で友達三人と隠れんぼをしていた智(さとし)は、見つからないように息を潜めていた。けれど、鬼となったその友達はそろそろ帰らないと怒られる、とぼやきながら歩いてる。罠だな、と智は思いながら不要となったドラム缶の影に身を潜め、鬼となった友達が来ないかソワソワしていたが、ポツンと一人だと感じた瞬間、智は思った。 「俺は帰っても誰もいない」 去年の夏、智の母は病気で亡くなった。父は仕事で帰りが遅く、時々祖母が様子を見にきたりしていた。誰もいない家にまだ帰りたくはなかった。

【あの日の市子】#03ショートショート

  マンションのエントランスで一人ボールを壁に投げていた。市子は学校から帰ると、毎日のように外へ遊びに行く。誰かと約束することもあれば、そうでない時もある。けれど、市子は外で遊ぶことが好きで、周りの友達が全て市子と同じように外が好きと言うわけではない。  小学校四年生になっても、市子は泥団子を作ることが大好きだった。粘土質の土を水を加えて柔らかくし、サラサラの砂でコーティングする。すると綺麗なボールのような泥団子ができる。市子は時々無性にそれを作りたくなる。けれど、女の子た

【三間のない祭り】#01ショートショート

みんなが集うのは、満月の夜。 車の窓から眺める輝く月は、暗闇を照らす唯一の光、まるで昔見た街灯のようだ。蒸し暑い熱帯夜は、僕らから水分を奪っていく。 都心から離れた草木が茂る空き地、もうここも最後の場所となったと噂で聞いた。 僕が車から降りると、見慣れた顔ぶれがすでに並んでいる。指を指し、一人一人の顔を数える。 「今日の祭りの参加者は15人」 持ち寄った一人ひとつの遊びとお菓子。僕はここ最近、進行役を担っている。本当は率先して前に出て何かするなんで僕には向いてないし、やりたく

【ショートケーキ】#02 ショートショート

 信号が黄色から赤に変わると、左方の車が動き出した。立ち止まる女の顔は、外の空気でほんのり赤く染められている。帰宅者たちが女と同じように、信号が変わるのを待っている。女は携帯を取り出すと、メールを打ち始める。 『今から帰るよ』 ポケットに携帯をしまうと、冷気で手が冷たくなった。周りに人が集まり、人の多さからこれから乗る電車が億劫になる。一つため息を着くと、信号を渡った先のケーキ屋目に留まった。懐かしい、思い出したのは、三年前の誕生日のことだった。    致し方ないが、と先輩に