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ママとしての思い

女の子を度々食事に誘い、食事する場所が少しずつ遠くなるN氏に真面目にメールした。

Nさんへ

いつもお店やスタッフを可愛がっていただきありがとうございます。
女の子へのお食事のお誘いも感謝しています。
またMちゃんを連れ出して良いかということにつきまして、私のママとしての気持ちをお伝えさせていただきたいなと思います。

スナックは事業形態としてちょっと特殊です。
マニュアルや「普通は」と言うのが無く、ママの考え方ひとつで成り立ってると思うんです。
過去に『ドアの内側はママが法律』と言ったお客様がおりまして、そうなんだろうなと雇われ時代に思ったことがあります。

私が10年勤めたお店は「同伴アフター禁止」でした。その理由はママが「雇われ時代に嫌な思いをたくさんしたから」「お客様とトラブルがあったから」「お店の外での出来事はスタッフを守れないから」でした。
そうは言いましても私個人と致しましては「いや、大人ですから。自分で判断できますから。」と言う反抗心は正直ありました。

ただ13年間水商売をする中で見てきたものは、やはり同伴を強いるお店は少なからず色恋営業になるんですよ。
お客様を呼ばないとママに叱られるから、お給料の査定に響くから、女の子たちも必死なんです。
そしてお客様はお気に入りの女の子と度々お食事を共にしていたら、お店の外でも中でもそれなりのお金を使っていたら、独身の方は彼女感覚になってしまうし、既婚者の方は愛人を望んでしまう。
そしてその想いが叶わないと知ったとき殆どのお客様がお店から去ってしまう。時に女の子に暴言を吐いて傷つけてしまう人もいる。それが理由で辞めてしまう女の子もいる。
男性からすれば「楽しく過ごしたじゃないか。美味しいもの食べさせたじゃないか。プレゼント受け取ったじゃないか。勘違いさせたのはそっちじゃないか。」となるのも分からなくはない。だけどホステスってそう言う部分は少なからず仕事としてあるじゃないですか。特に営業に厳しいお店や同伴をしなければいけないお店なら尚更です。

私は基本的に同伴をせずにやってこれたので、そう言うあれこれを見ては「ママが言うことは間違ってなかったのねぇ」とちょっと冷めた目で傍観していましたよ。
私が色恋営業しないのはNさんも十分に分かってくれてると思います(よね?)。

ご存知の通りウチのスタッフは学生さんです。
差別するわけではないけれど、どちらかと言えば正直エリート組ですよね。就職してしまえば、水商売は過去の経験のひとつとして思い出となる女の子たちです。
日常が充実していれば、学生時代のアルバイトのことなど簡単に忘れてしまうでしょう。
たけど、現実には大変なことやキツいこと、学歴ではカバーできないこと、人生がままならないことがたくさん押し寄せてくる中でそれら多くを経験し学び生きることの厳しさを知ってゆくのだと思います。
そんな中でふと「ああ、あのアルバイトは楽しかったなぁ」と、私や共に働いたスタッフ、可愛がってくれた大人たちの笑顔を思いだしてくれれば私は本望です。
そんな仕事を彼女たちに与えてあげたい。

お客様とのかかわりについて、女の子にはLINE交換は嫌な人とはしなくていいよと言っています。
ただ、同伴に関してはお店としてはしなくていいけど、大人なのでそれは自分で判断してください。
お友達とは食べにいけないような美味しいものを食べさせてもらえるのはこの仕事の特権だと思うからね。と…。

これまでは、Nさんのように遠くに食事に行くお客様はいなかったので、そこは女の子にも伝えてなかったのですが私としては賛成はできかねます。
ごめんなさい。
Nさんを許すと他のみんなも許さないといけなくなる。俺もいいよね。
ココがいいならアソコでもいいよね。ムコウでもいいよね。ソノムコウでもいいよね。とどんどん遠くを言い出すお客様が必ず出てくる。

そうなると私は女の子を守れない。
親御さんの中には水商売をしていることを知らない親御さんもいるし、私を信じて託してくれている親御さんもいる。
私は親御さんたちに対しても責任があるのです。
この仕事の中で女の子たちに傷ついて欲しくないのは親心と同じです。

幸い私のお店は優しいお客様ばかりで、女の子たちもいろんなとこに食事に連れていってもらっています。
それは私としては嬉しいことです。
だけど今後は同伴はお店から歩いて行ける場所にお願いします。
お客様の車に同乗しないことも付け加えたいと思います。
ただ、Nさんを信用してないわけではないことだけはお伝えさせてください。
いろんなお客様がおられますので、ママとしてルールは平等にしておきたいという私のわがままです。ごめんなさい。
この人はいいけど、この人はダメということは私はできませんし、それはこれから新しくスタッフとなる女の子たちにとってもこのお仕事の指針となる大切な部分であり、私がお客様に甘え過ぎていたのと考え不足であったのだと思い至りました。

ご理解ください。
このことでNさんを怒らせてしまい、お店に来られなくなったとしても…それはとても残念なことですが、受け入れたいと思います。お店を選ぶのはお客様ですから。
できることなら、今後ともこれまでと変わらず、お店やスタッフと仲良くしていただけるととても嬉しく思います。

思いがけず長くなってしまい申し訳ありません。
長文になりましたことをお詫び申し上げます。

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