vigny

なんかちょっとでも、、

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なんかちょっとでも、、

最近の記事

存在しない

パルティータで蘇る記憶は存在しない記憶 本を手に取って蘇る記憶は存在しない記憶 たくさんの存在しない記憶に囲まれて わたしはわたしを探している それはまるでにおいを辿るように 霞のなか どうかいかないでくれと足取りをすすめて

    • からの椅子

      死んだ人に会いたいと願うとき その人を生に引きとめることができないことを わたしはすでに知ってしまっている もうここにはいない死んでいった人たちは わたしのために生きていたわけではないから いまわたしだけがここで生きている からの椅子ばかりが 増えていってしまってはしかたがない 独立した、からの椅子を眺めていると 歩きださなければという気になってくる

      • ホームで列車を待っていた。 けたたましい警笛とともに鉄の塊が目前をよぎる。ぼんやりしたわたしと世界のあいだに豪速で割り込む電車の警笛の音は、圧を放って、わたしの深部まで震わせた。 列車に乗ろうとドアの前に立ったが、ドアは開かなかった。この停止している列車は通り過ぎる列車で、信号の関係で停止しているのかとしばらく眺めていたが、どうやらなにかがおかしいらしい。なにかがおかしいと気づいたときには、駅員が2人、右手から視界に入り込んだ。 「なにか見ませんでしたか?」 右手には、

        • 父さん

          春先にトマトの苗を買いました 祖父の遺したプランターを父が洗い ふかふかの 少しばかり行儀のよすぎるやらかい土に 手を浸して トマトの根を陽の光から隠しました それからあやめがすくりと立ち上がって すずらんは松の下に身をふるわせて 梅は青い実をぶらさげ 野良猫が庭をよぎりました 父さん、私は東京へ行くことにしました お前さんが経つまでにトマトは赤くなるだらか 父さんは窓辺に座って言っていた 年をふるにつれて父さんのひとりごとは いよいよ大きくなってきた 腰の骨はステゴ

        存在しない

          tea for XXX

          夜になった。 どうやら地球はまわりつづけているらしい。 湯ざめしながら歩く煙草2本分の暗い道 燻る炎と天に溶ける煙 早くに締め出された家庭ごみは 夜半に腐敗をすすめる ゴミ収集車は朝方に家庭幻想をあつめる 膨らみ続けた夢は圧し潰されて弾ける 弾ければあたりに漂う腐敗臭 収集員の腕ににじむ汗 男の腕は夜に夢を抱く 膨らみ続ける夢は家庭から締め出されて 折り重なって集められるのを待っている ごみだ、ごみだあ 女は窓から烏がゴミを漁るのを見ている 眉を顰めて見る夢に 淹れた

          tea for XXX

          日常と原世界観

          一度、自分の底を見たものは二度とおなじところへ戻れない。 水に落ちたおまえは水の中から見る世界みたいな輪郭が朧げな現実を生きろ すべての人間にそれぞれのおもいや思い出があることを認めると安心したみたいによく眠れるのは、おまえが風景になって、水の中に沈むことができるからだよ

          日常と原世界観

          行進

          ふわりとしてしゃなりと 右と左の間に 上下は波打って軽やかな行進 前と後ろの間に右旋回左旋回 天と地を弾む足 すべての生き物に紛れて やっかみもどんな言葉も跳ね退けて 概念と観念の間をすり抜ける その背中に触れたくて追いかける へなりとしてたんたんと すべるようなステップ こおろぎの脚に付け替えて トカゲの捻りも忘れないで 山に入り谷底をひっそりと 風の中の行進 豊かさを知るまえの原初の鼓動に触りたい 口ずさんだ異国の歌とかじり捨てた果実の核 罪と罰に振れないたく

          海底に棲む

          旅は道づれというけれど 人生もまた旅であるときに 行き交ふ人々との出会いがかちりかちりと 歯車のように噛み合って 時間は直線的な律動で存在を包み込む 不可逆をにおわせた裏切りの繭を破りでた 散り散りになった粗い糸が存在にからみつく ここは地獄か胎内か 空が青いだけでいいじゃないか 水が美味い それだけでいいじゃないか 国や民族で祈りを捧げる記念日があり その瞬間は仏の慈悲を拝借して 繭の中におさめかえられる 繭の中は目が冴えるほどの碧 目を忘れるほどの深い色 最も死に

          海底に棲む

          隠れ家

          晴れてる日のかたつむりを見つけた

          隠れ家

          最後に

          おれはもっと自由になっていい。

          最後に

          呼吸

          その者、深けきところにあり 深けき森の静かさに ちゃッポン、水の跳ねる音が響く 誰も聴くもののないところに 音になる前の響きあり 深い森を小高い丘から視におさめている 森が守るは湖 彷徨える人々はその湖を道標とも呼んだりする 小石を投げ込むと 飛沫をあげて波紋が広がる 粗い石は手元を離れれば熱を忘れる 湖により命が結ばれる その石は言葉であり 言葉は光の弧を描きなめらかな水に命を預ける 森には多くの彷徨える人々 湖は言葉を抱いて 永遠にもよく似た距離を携えており 湖面

          鴎のうた

          切り立った崖の上で夕暮れに立ち合う 日本海に沿ってゆく道は発った地と向かう地を結んでいる 道は結ばされている わたしはゆくが道の先を知らず 道は道の先を知っているのか 道は要らぬが人にうまれたさだめはある 潮風を纏って遠い国を思い出した 太陽はひとつしかありはしなかった 宝玉のように空にあり それでもただあるようにしか思われず 朽ちかけた木柵に足をかけて鴎たちが言うには 地球が地球である前に太陽は誰かの子であったと 私の知らないその光を鴎たちは知っているという 潮風

          鴎のうた

          健やかなからだがあればいい

          健やかなからだがあればいい 健やかであるときできないことは、 到底手に負えるものではないから これから、ふわふわと生きていくにあたって、 ただ健やかであればいい 欲に溺れず 慎ましく 生きよう 立って半畳 寝て一畳 天下とっても二合半… ただ健やかであろうするわたしを 社会が許さないのなら そのときは潔く死んでしまおう ただ健やかに 慎ましく生きよう

          健やかなからだがあればいい

          人間の肉体の有限性

          循環の中にある 人間の肉体の有限性を思うとき、 双眸は光を見る 闇を含んだ光だ わたしはこの光を受け容れる

          人間の肉体の有限性

          骨と肉

          10代の頃、心にあるのは置いていかれた実感と裏腹に成長を続ける骨と肉。 さようなら、さようなら、 さようなら、 またひとり、死んでいった わたしは少し疲れた

          骨と肉

          カップラーメン

          初めてカップラーメンを食べたのは小学生のとき、しめ縄をつくっていたときに、差し入れでもらった。 カップ麺は、円カロリーはいいし、(1円あたりのカロリー数)、味も美味しいものが多いけど、量が少なかったので贅沢品ではあった。 お菓子も同様である。 子供のころ、金持ちの友達がおり、妙に気に入られていた私は、その子の送り迎えの車に同乗し、学校→おやつを買う(買ってくれる)→帰宅即友達宅の日々を送っていた。 友達はぬいぐるみ遊びが好きで、わたしはお菓子を食べるのが好きだった。

          カップラーメン