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改正感染症まとめ

こんにちは!
ヴィガラクス株式会社です。
2022年12月に国会で感染症法が改正されると可決され、ニュースになっていたのを覚えていらっしゃいますか?
テレビでも、新型コロナウイルスが5類に移行されると取り上げられていましたね!

ただ、感染症法ってなに?という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、感染症法ってそもそもどんな法律なの?何が変わるの?という疑問を、わかりやすくまとめてお伝えします^^

1.感染症法とは

感染症法の正式名称は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」といいます。
従来の「伝染病予防法」「性病予防法」「後天性免疫不全症候群(エイズ)予防法」の3つを統合し、1998年に制定・公布され1999年4月1日に施行されました。

感染症法の目的

感染症法の目的とは「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発症を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。」とされています。
要するに、感染症の発生・まん延を防止し、国民の健康を増進させることが目的の法律です。

感染症の分類

感染症法では、症状の重さや病原体の感染力・危険性などから、感染症を1類~5類の5種類と、指定感染症・新感染症の計7つに分類しています。
さらに2008年5月の改正により、新たに「新型インフルエンザ等感染症」が追加されました。感染症の種類により医療機関の対処法も異なり、それぞれの危険度に応じた対策を可能としています。

図1 感染症法による分類の例

2.改正感染症法について

改正されるのはいつ?

2022年12月に国会で可決成立され、2023年4月より順次施行されます。

改正される理由

新型コロナウイルスの流行で浮き彫りになった問題や課題を教訓とし、今後の感染症の発生・まん延に備えるため改正されることが決まりました。

何が変わるの?

今回の改正は、大きく3つに分けられます。

・保険・医療体制の整備
・ワクチン接種に関する体制の整備
・水際対策の実効性の確保

今回の記事では「保険・医療体制の整備」に焦点を当てて解説していきたいと思います。
では、ポイントとなる部分を1つずつ確認していきましょう。

Point1 予防計画の充実

都道府県が感染症法に基づいて策定している「予防計画」の内容が改善されます。
検査の実施体制・検査能力の向上や患者の移送体制の確保、宿泊・自宅療養体制の確保などが義務として追加され、体制を整備するために数値目標を定める方針が盛り込まれました。

図2 予防計画の充実 記載事項の追加と数値目標の例
出展:令和4年10月13日 第92回社会保障審議会医療部会 参考資料

図2にあるように、現在の予防計画に記載されている「2.医療提供体制の確保」に、協定締結医療機関への「入院、発熱外来、自宅・宿泊施設・高齢者施設での療養患者等への医療の提供、後方支援、医療人材、PPE」の各項目が数値目標の例として設定されました。
その他、同じく「2.医療提供体制の確保」に①~⑧の各項目が追加で記載され、それぞれ数値目標が設定されているものもあります。

Point2 都道府県と医療機関の事前協定

全ての保険医療機関(厚生労働省の指定を受け健康保険で診療を受けられる医療機関)は、都道府県が定める予防計画に沿って、病床、発熱外来、自宅療養者等(高齢者施設等の入居者含む)への医療の確保などに関する感染症対策について都道府県との協議に応じる義務が課されます。
さらに公立・公的医療機関等、特定機能病院、地域医療支援病院においては感染症の発生・まん延時に医療提供を行うことが義務付けられました。
これにより、協議が合意に至った場合、医療機関は協定に沿って感染症発生時の対応を行うこととなります。
また、※正当な理由なく協定に基づかない対応をした場合、事実上の罰則も設けられました。

※正当な理由・・・クラスターが発生してスタッフの確保が困難なケースや別の災害対応が必要な場合など。

Point3  流行初期の財政支援「流行初期医療確保措置」

初動対応を含む協定を締結した医療機関が協定に沿って感染症患者を受け入れ、一般医療を制限するなどした場合、流行前と同水準の医療の確保を可能とする「流行初期医療確保措置」を新設し、経営を支援する措置が決められました。
具体的には、協定に基づいて感染症医療の提供を行った月の診療報酬が、感染症流行前の同月の診療報酬を下回った場合、その差額が補助される仕組みです。
費用に関しては、公費(国・都道府県)と保険者(被用者保険・国保・後期高齢広域連合)が折半することが決まりました。
また、見込み以上の収入が得られた場合、医療機関は補助金を事後に返還することも決められています。

Point4 自宅・宿泊療養者等への医療や支援の確保

現行、都道府県は自宅・宿泊療養者に対して健康状態の告知(健康観察)及び自宅・宿泊療養施設等から外出しないよう協力を求めることができ、都道府県は自宅・宿泊療養者等へ生活の支援(食事の提供・日用品の支給など)を実施し、必要に応じて市町村と連携するよう努めなければなりません。
改正案では、この都道府県の健康観察の実施を、協定を締結した医療機関に委託して行うことができるようになりました。
さらに、自宅・宿泊療養者や高齢者施設での療養等について、患者の自己負担分を公費で負担する仕組み(公費負担)が創設されました。

出展:令和4年10月13日 第92回社会保障審議会医療部会 参考資料

Point5 医療人材派遣の仕組みの整備

新型コロナウイルス流行時の人材派遣が厚生労働省関係病院からの派遣に偏り限界が生じたことの反省から、都道府県と医療機関の協定に人材派遣についての項目を盛り込み、あらかじめ準備をして大まかな派遣可能人数を把握する仕組みが作られました。

医療ひっ迫時には、

県内医療機関から派遣 → 県外医療機関から派遣 →(緊急時)公立・公的医療機関等からの派遣

となり、広域派遣についての要件が明確化されています。

Point6 医療機関等に対する財政支援

医療機関等に対する財政支援の費用負担に関する規定も改定されました。
具体的には、現行の補助・負担割合を前提として

①設備整備については対象施設を拡大
②宿泊・自宅療養者の公費負担医療及び流行初期医療確保措置(費用は公費1/2、保険者拠出金1/2という負担割合にする)に関する負担規定を新設
③協定締結医療機関等が実施する措置に関する補助規定を新設

の3つの事柄が決められました。
図で1つずつ見てみましょう。

3.まとめ

今回の改正感染症法のポイントを最後にまとめておきます。

①予防計画の充実
②都道府県と医療機関の事前協定
③流行初期の財源支援「流行初期医療確保措置」
④自宅・宿泊療養者等への医療や支援の確保
⑤医療人材派遣の仕組みの整備
⑥医療機関等に対する財政支援

今回の改正は主に新型コロナウイルスの流行で浮き彫りになった点や反省点に焦点を当てて作られ、平時から感染症の流行を想定した準備をし、人材の確保にも備えるということに重点が置かれています。
改正は2023年4月から順次施行されますので、協定による医療の確保の実効性など、今後の展開が注目されます。


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