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【あつ森】クリーム島青春与太話(ラムネルート6終)

前回↓↓(最後の目次で『ダメだ!』を選ぶ)


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猫宮キャビアの言う通り、トビーは親の会社の資金を横領した罪に問われ逮捕された。なんでもトビーの父親が猫宮家の主…つまりラムネとキャビアの父親に会社の資金の辻褄が合わないことを相談してたんだそうだ。で、双方による密かな調査の末トビーの金使いが怪しいということになった矢先にラムネとトビーがパーティーの後から連絡がつかない事態になり、メイド達に2人の居場所を突き止めさせたという。

一方、トビーの指示で俺を暴行したファンクラブ幹部らの話は学校の偉い人の耳に入り、幹部の何人かは停学または退学処分をくらったそうだ。更に後日俺は暴行被害について、ラムネはトビーの金の横領についてそれぞれ警察から事情聴取を受けたが、キャビア達のおかげで話した内容が真実であることが証明されあっさり解放された。もうあんな思いは2度としたくない。

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ドラマのような怒涛な夜を越えて数日が経った今、俺は学校に行って友人と駄弁って適当に授業を受けて帰る…そんな平凡な日常を過ごしている。因みにラムネファンクラブはまだ続いているようだが、幹部の件以来過激な行動がめっきり減ったらしい。まぁ、ラムネに対して過保護すぎなきゃどうでもいいが。

いつものように靴を履き替えようと下駄箱を開けたが…下駄箱の中に手紙が入っていた。封を破り、誰にも見られないようそーっと中の手紙を読む。手紙には整った手書きの字で一言綴られている。

『今日の午後5時 たぬき国際空港の展望デッキで待ってます 猫宮ラムネ』

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前に呼び出しの手紙でめんどくさい目にあったが今度は間違いなく彼女だ。根拠はないが確信はある。俺は下校したその足でたぬき国際空港の展望デッキまで向かった。今日は平日だから前にラムネと一緒に来たよりも人が少ない。それでもカップルだらけだな。

時計の時刻を確認する。午後5時まで残り2分前くらいだ。手紙の送り主は来てるだろうか。俺が周辺を見回してみると…

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離陸する飛行機を静かに眺めている1人の女子高校生がいた。間違いない、猫宮ラムネだ。

ラムネ「良かった!来てくれたのね。」

俺に気付いたラムネはホッと胸を撫で下ろしながらこちらに近寄ってきた。

ラムネ「加納くん。私、あなたに話したいことが沢山あるの。でもどうしましょう、なんだかすごくドキドキしてるの。何から話したらいいかしら。」

「うーんそうだな…話したいことを順番ずつ言うのはどうだ?」

ラムネ「そうね、そうする…。」

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ラムネ「加納くん、あの時私がトビーさんに結婚の返事をしようとしたの…止めてくれてありがとう。私思うの…自分が加納くんの立場だったら同じことが出来たかなって。多分、怖くて出来ない。他の人が助けてくれるの期待するしかないと思ってる。」

俺だって最初は迷った。俺みたいなやつがラムネの人生を動かすようなことを勝手に口出ししていいのか本当に迷った。それに痛い思いをしたくなければ黙っていれば良かったんだ。

ラムネ「それでも加納くんは私にダメだって言ってくれた。だから私も勇気を出してトビーさんの結婚を断ることが出来たの。本当に…ありがとう。」

でも身の危険を承知の上で止めたのはラムネの気持ちを知ってるからとかラムネの為を思ってとかそんな大した動機じゃない。単純にトビーなんかに彼女を取られたく無かったからだったんだ。

ラムネ「あとね、もう一つ…どうしても言いたいことがあるの。私の中ではこっちが本題かしら。」

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ラムネ「加納くん、私がここで話した空港の言い伝えのこと…覚えてる?」

「飛行機が離陸するまでに告白が成立したら永遠に結ばれるってやつだよな。」

ラムネ「そうよ。私もね、好きな人が出来たらここで告白しようってずっと思ってるの。本当は尊敬するお父様に見守られながらと思ってたんだけど…私、もう今からでも伝えたい。だから加納くん、私が今から言うこと…聞いてくれる?」

「ラムネ…………?」

ラムネが深呼吸するのと同じタイミングで新たに飛行機が一台滑走路に来た。そして離陸の態勢をとった飛行機がすごいスピードで滑走路を走り始めた時だった。

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ラムネ「加納くーーん!あなたが好きでーーーーす!!!私、あなたの女になりたいでーーーーす!!!!」

「…え!!!!!??」

飛行機の走る音で全部を聞き取ることが出来ない。ラムネは一体何を言ってるんだ?…待てよ。言い伝えのことを話した上でこの状況ってことは…まさか告白?!待て待てラムネ、本当に俺でいいのか?!ていうか俺自身はどうなんだ??………いや、分かりきってるじゃないか加納柊二。あの時必死にトビーから彼女を遠ざけようとした。どんなにボコられてもトビーのとこに行かせるぐらいならと踏ん張った。そうまでしたのはラムネのことが………。

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そもそもラムネが今言ってるのが告白じゃ無かったら?いや、悩むのはやめよう。

俺も大声で返事をしようとしたが飛行機の音がうるさ過ぎて声が掻き消される。とにかく飛行機が飛んでいってしまう前にラムネに気持ちを伝えたい。そう思った瞬間、気付けば俺はラムネの肩を掴んで引き寄せていた。離れないように抱きしめてハッキリとラムネに聴こえるよう耳元に顔を寄せる。

「ラムネ…ラムネが好きだ。」

ラムネ「………。」

多分必死だったんだろう。ラムネを抱きしめてる間、地鳴りがするぐらいうるさかった飛行機の騒音がピタリとやんだ。代わりに聞こえるのは誰のものか分からない心臓の音だ。聞けば聞くほど思考が止まり息が出来なくなる。

だがなんてことないタイミングでよく分からない時の流れが途切れた。

「…あ!ごめん!!」

もう飛行機はとっくに夕暮れの空へ飛び立っているにも関わらず未だにラムネを抱きしめたままだ。俺は慌ててラムネから離れる。ドン引きしてしまっただろうか。

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ところが俺の予想に反してラムネは顔を赤くしてその場で俯いてもじもじしていた。が、顔を上げると心の底から嬉しそうな満面の笑みを見せる。

ラムネ「ううん……。嬉しい!すごく嬉しい…!!」

あぁ、やっぱり。ラムネはこの笑顔が1番いい。俺にだけ見せてくれる取り繕わない笑顔。これだけでご飯3杯はいける…は言い過ぎか。

ラムネ「私、嬉しすぎてどうにかなっちゃいそう。早速お姉ちゃんやお母様、それからチェルシーに加納くんのこと紹介したい!」

「えぇ…いきなりそれは恥ずかしいな。」

育った環境のせいもあるのか、やろうとすることが少々ぶっ飛んでいるがそれもまた彼女の魅力の1つでもあるだろう。

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側から見たら身分違いの恋の末に成立したカップルだともてはやされるだろうか。それとも皮肉に思われるだろうか。いいや、育った環境や周りの境遇に振り回されて、本当の気持ちを押し殺す必要はないということを俺達は知ったんだ。…とは言ったが、ラムネの面子を潰さない為にお茶会に参加出来るよう礼儀作法を少し学ぶとするか。

…………………

*・゜゚・*:.。..。.:*・GOOD END・*:.。. .。.:*・゜゚・*


※後書き

こんにちは、びゅーんです。そんなこんなでラムネルート書き終わることが出来ました!ここまで読んでくださりありがとうございます!そして完走おめでとうございます!!

与太話の初期からラムネちゃんは清楚系学園アイドル!あるいはお金持ちのお嬢様!という設定が真っ先に浮かびましたが…これをどうグッドエンドに持ち込むか自分で設定しておいて結構悩みました。可愛く書けてたでしょうか。もしそうなら嬉しいです…!

それから今回はラムネルートで悪役を最後まで演じきったトビーにも大きな拍手をお願いします。どうぶつの森のどうぶつ達もそれぞれ誰かの推しです。与太話の中とはいえ救いのない悪役に仕立てるのはあまり良くないかと迷いましたが、トビーのような役が無ければ恐らくラムネルートは最後まで書けなかったと思います。

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