【あつ森】クリーム島青春与太話(モニカルート1)
前回(最後の目次で『大神モニカを思い浮かべた』を選ぶ)↓↓
-----------------------
突然の話だがあれから数日後、シベリアが盲腸で入院した。退院するには数日かかるらしい。シベリアが学校を休んでから5日後くらいのことだ。ホームルームが終わった後、ハムカツが鞄を背負って俺の机の前にきた。
ハムカツ「昨日アイツから手術終わったってメール来てたろ。今日の放課後、シベリアに会いに行ってやろうぜ。」
そういえばシベリアからメールが来てたな。メールを打てる余裕が出てるってことは病院で落ち着ける時間が増えたということなんだろう。
「そうだな。律儀に入院先の病院まで教えてくれたんだ。きっと人恋しいんだろ。」
ハムカツ「だな!思いきりからかってやるぞー!」
俺自身も放課後は暇だったから、弄る気満々のハムカツと共にシベリアが入院している病院『たぬき総合病院』に行くことにした。
ハムカツ「おーっすシベリア!くたばってるかー!」
シベリア「ハムカツおめーなー、それが人を労る言葉か!?」
病院に着いてから案内された病室には、ベッドに背中を預けているシベリアがいた。だがいつものシベリアと違い、ハムカツがからかっているのを間に受けている感じだ。学校にいる時より多少気分が沈んでたんだろうな。でも…
「思ったより元気そうで安心したよ。」
人と罵り合いをする程度まで回復してきたようだ。
シベリア「ああ。来てくれてサンキューな。お前らと話すだけでも辛気臭い気分が紛れるぜ。」
ハムカツ「結局のところさ、お前のいない学園生活ってなんか味気ないよ。早く治して退院しろよな。」
ハムカツの言う通りで、気の知れた友人が欠けた日常というのはやはり寂しいと思う。俺にとってもシベリアは、なんてことない日常に微々たる刺激を与えてくれている。
シベリア「そんな切ない顔しなくたって分かってるって。早く退院して学校でこの顔を拝ませてやるさ。きょうだいのことも放って置けないしな。」
「へぇ。シベリアにはきょうだいがいるのか。初めて聞いた。」
ハムカツ「オイラもだぞ!なー、そいつどんなやつなんだ!?」
シベリア「あー、姉が1人いるんだけど………顔はいい方か。」
それから学校にいる時のように俺たちはなんてことない話で大笑いしながら話し込んだ。盛り上がりすぎて看護師達に注意されてしまったが、それでも楽しい気持ちで満たされた。
それから翌日の昼休みのことだ。この日の5限は体育館で球技の授業の為、俺は身体を慣らそうと少し早めに着替えを済ませて体育館に向かっていた。残りの昼休みを雑談で潰そうと廊下に出ている生徒達の横を通り過ぎ、2階の廊下から繋がっている体育館の入り口に入ろうとした時だった。
「誰かもう中にいるのか?」
体育館は開けっ放しにされている為、誰が自由に使っても別に問題はない。それでも俺は入り口からそっと顔だけ出して中を覗いてみた。
体育館のステージの上で1人の女子生徒が汗を流しながら踊っている。あれは…チアリーディング部の部長の大神さんだ。
モニカ「ハッ……ハッ……………ハッ……ハッ………………」
短く息を切らしている様子からして長い時間ああして踊っているのだろう。リズムをとりながら踊っているが時折身体の動きが一定のリズムとずれる。それでも尚踊り続ける大神さんの姿を、俺はずっと見つめ続けていた。だが…
モニカ「誰かいるの?」
大神さんはピタリと動きを止めて俺を視界に捉えた。ステージの上から飛び降りるとゆっくりこちらに向かって歩いてくる。
「あ、ども。練習中にすみません。」
モニカ「あれ?君は……………ああ!部活見学に来た男子入部希望者ね。」
「違います、俺は入部希望してません。」
モニカ「アハ!そうだったっけ。」
大神さんは笑いながら馴れ馴れしく俺の肩をポンポンと叩く。
「でも俺のこと、覚えてたんですね。」
モニカ「そりゃそうよ、だってチア部の見学にきた男子なんて後にも先にも君1人だけだよ。」
「えっと、大神さんは…」
モニカ「あたしのことはモニカでいいよ。」
「あ、はい。モニカさんは昼休みの時にいつもここで練習してるんですか?」
モニカ「昼休みに時間があればいつも練習してる。これは部員の皆に強制してないの。自主練ってやつね。」
「すごいですね。部長自らが自主練に励むだなんて。」
モニカ「そう?ありがと。皆の足を引っ張らない為にやってるんだけどね。」
そう言うとモニカさんは少し複雑そうな表情を浮かべる。部活見学の時に部員達をまとめているモニカさんが足を引っ張るだなんて有り得るだろうか。
モニカ「君が来たってことはそろそろ5限の時間かな。ならあたし、そろそろ戻らないとね。」
「手伝いますよ。」
モニカ「あら、気が効く〜!」
気付けば5限の授業が始まるまであと5分といったところだ。そろそろ俺と同じ授業の連中が体育館に入ってくるだろう。俺はモニカさんが練習に使っていた道具を一緒に片付けた。
モニカ「そうだ。折角だから君の名前、聞いていい?」
片付けた道具を持って体育館から出ようとするモニカさんから唐突に聞かれた。そういえば俺はこの人に自分の名前を言ってなかったな。まぁ言って減るもんでもないか。
「加納柊二です。」
モニカ「かのうしゅうじ…よし。覚えたわ、加納少年!またいつか会えたら今日みたいにお喋りしましょ。それじゃあね!」
モニカさんは爽やかな笑顔で手を振り、汗を光らせながら颯爽と体育館から去っていった。それと入れ違いになるかのように、俺と同じ学年に男子達が体育館に入ってくる。
「なんだよ加納少年って。」
そういえば前々から思っていたけど、モニカさんの大神という苗字。シベリアと同じ苗字だよな。シベリアが言っていた姉というのは………いや、苗字が同じだからといって同じ家の者同士とは限らない。でも少し気になるから今度シベリアにそれとなく聞いてみるか。
そんなことを考えながら帰路についた時だった。俺の家の窓から掃除機の音が聴こえる。もしかしてオフクロが帰ってきたのか?
「ただいま。オフクロ、帰ってたのか。」
オフクロ「おかえり柊二、今日は久々に早く帰れたのよ。待ってて、すぐリビングの掃除終わらせるから。」
「掃除くらい俺の方でやってるのに。」
オフクロ「そうね、いつもありがとう。でもお母さんも自分で主婦らしいことをしておきたいのよ。またいつ家のことが出来るか分からないからね。」
テレビ局でADの仕事をしているオフクロは、家に帰ると自分があまり家事をしないことを気にかけ、自分がしたいからと掃除や料理に変に気合を入れる傾向がある。そんな時は決まって次の日または週末に家を長く空ける仕事が入ることが多い。
「…………また長期の地方ロケが入ったんだな。」
オフクロ「ええ。だから今週末もお母さん、帰ってこれないの。ごめんね柊二。だからせめて!年頃の女の子を家にあげても大丈夫なように家を綺麗にしておくからね!」
「どうしてそうなるんだよ!?」
冗談にしか聞こえなかったが、オフクロが予感していたことが後日実際に起きてしまことを当時の俺は知りもしなかったのだ。
(次回↓↓)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?