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【あつ森】クリーム島青春与太話(ラムネルート4)

(前回↓↓)


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唐突に始まったラムネとのお忍びデートはまだ続く。今はプールから繁華街まで戻ってきたところで何処か休憩場所を探そうとしているところだ。お金持ちのラムネのことだからその辺のカフェにはあまり興味を示さないかと思いきや、とあるコーヒーチェーン店の前で彼女は足を止め、食い入るように外に立てかけてあるメニュー表をめくり始めた。

「『シャムロック・コーヒー』ならどこにでもあるぞ?」

ラムネ「知ってるわ。クラスの女の子達がよく話してるのを聞くもの。でも私、まだ1度も入ったことないの。」

メニュー表をめくりながらラムネは続ける。

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ラムネ「小学生の頃にね、ピアノの発表会を頑張ったご褒美にこのお店のドリンクが欲しいってせがんだことがあるの。でもお母様は連れてってくれなかったわ。『そんな安物じゃなくてちゃんとしたもので舌を鍛えなさい』って。」

あー、あの奥方様なら言いそうだな。俺はお茶会に同席したラムネの母親の顔を思い浮かべた。あの人、ハンバーガーとかポテチとか嫌いそうだ。

「気になるなら行ってみよう。今なら母親の目もないさ。」

ラムネ「本当!?ありがとう加納くん!じゃあ私、ここでお茶したいわ。」

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やはり女子に人気の店だけあって休日の午後は女性客でゴミゴミしている。だがちょうどいいタイミングで店の奥にあるカウンター席が2人分空いたのを目視出来たのですかさずダッシュして席を確保した。大人気ない行動だと我ながら思うが、窓側でなく壁と向き合うカウンター席ならトビーの目を誤魔化せる可能性があるかもしれない。

それからレジの前に並んでようやくドリンクの注文に入るが…シャムロック・コーヒー自体が初めてなラムネは種類豊富なドリンクを眺めるだけでなかなか決まらない。俺が期間限定の『グリーンティー・ソーダフロート』を注文すると結局ラムネも俺と同じドリンクを注文するのだった。

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ラムネ「うふふ、こんな機会に恵まれるならお腹を空かせておけば良かったわ。そしたらここのドリンク全部頼めるでしょ。」

「ぃやー、それは流石にカロリー的に良くないんじゃないか。」

ラムネ「残念。なら丁寧に味わっておかないとね、頂きます。」

が、ラムネのドリンクは一向に減らない。不思議に思って「飲まないのか?」と声をかけるとラムネは困った様子で…

ラムネ「加納くん、これどうやって飲めばいいの?恥ずかしいわ…これの飲み方を知らなくて。あとこれスプーンみたいだけどストローなのよね。」

と話す。というかシャムロック・コーヒーでドリンクの飲み方とか俺も気にしたことなかった。

「これを飲むのに特別な礼儀作法とかないよ。普通に飲めばいいんじゃないか。そのストローでクリームを崩しながら飲むとか中のソーダだけ先に飲むとか色々あるけどな。」

ラムネ「まぁ、すごいわ!1つの飲み物でいくつも楽しみ方があるなんて。私、どれもやってみたい。」

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そんな感じでラムネはラムネなりに念願のシャムロック・コーヒーを満喫出来たようだ。ご機嫌な様子の彼女を連れて店を出ようとする。

ラムネ「加納くん、ありがとう!こんな経験出来るなんて夢みたい。」

「そんな大袈裟な。でも楽しんで貰えたようで良かったよ。」

…ん?今何か視線を感じたような。俺は辺りを見回すがトビーの姿は見えない。気のせいか??

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「ラムネ、この後はどうするんだ?そろそろ暗くなるし家まで送るか?」

だがラムネは静かに首を振る。パーティを勝手に飛び出してしまったことに対してどう説明するのか、まだ整理がついてないんだろうな。

ラムネ「あのね加納くん、行きたいところが1つあるの。一緒に行ってくれるかしら。」

「いいけど、今からどこに行くんだ??」

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ラムネが行きたいと言って連れてきた場所は空港だ。日が落ちてるにも関わらず飛行機を見送る屋上展望デッキには何人か人がいた。よく見ると殆どカップルだ。俺は飛行機を使って旅行とかしないからな、空港に来たのはいつ以来だろう。ラムネは何も言わず、飛び立つ飛行機を静かに見るだけだ。

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ラムネ「今までお出かけした場所で1番気に入っているのがここなの。よく飛行機に乗るお父様のお見送りに行ったわ。」

「飛行機かー。ラムネはよく飛行機に乗るのか?」

ラムネ「ううん、私は乗らない。乗るより見てる方が好きなの。」

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ラムネ「ねぇ知ってる?この空港には素敵な言い伝えがあるの。」

「言い伝え??」

俺は今の家に長いこと住んでいるが、空港の言い伝えなんて聞いたことが無い。この空港に何かありがたいご利益でもあるんだろうか。

ラムネ「滑走路にいる飛行機が離陸するまでに、屋上展望デッキで告白して相手がその告白を受け入れるとそのカップルは永遠に結ばれるって言い伝えなの。」

「だからここはカップルが多いんだな。でも飛行機が飛び出すまでの間って告白するのも返事をするのも大変そうだな。」

ラムネ「それはね、告白が成立したことで形になる本物の愛を飛行機が神様のところまで運んでいってくれるからなんですって。そう考えるとロマンチックじゃない?」

そう話すラムネの表情は優雅なお嬢様というより恋バナにときめく普通の女の子のそれだ。お茶会の時よりも年相応でずっと輝いて見える。

ラムネ「私、いつか好きな人が出来たら飛行機に乗ったお父様に見守られながら告白したいな、って思ってるの。加納くんは…好きな人とかいる?」

言い伝えに思いを馳せるラムネに見惚れてたところで急に話を振られたもんだから俺は思わず「へ?」と間抜けな声をあげてしまった。好きな人か…………。

「俺は…………」

だがその先の言葉を伝える前に別の横槍が入ってきた。

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トビー「前にも話しただろ。その言い伝えってやつは空港が勝手に作った根拠のない低俗な宣伝によるものだよ。」

トビーだ。そいつが現れたということはここでラムネとのデートは強制的に終了だ。隣でラムネが青ざめ表情を強張らせている。

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トビー「僕のフィアンセ、やっと見つけた。ここまで随分探し回ったよ。」

ラムネ「あの、トビーさん…パーティーを抜け出したことは謝ります。その…」

トビー「あぁ気にしないで。僕の方こそ君を驚かせてしまってすまなかったね。それにしても…」

トビーが俺に視線を向ける。お茶会の時のスマートなものとは全く違う、ゴミを見るような目だ。

トビー「キツく忠告してやったというのに、悪い虫が執拗に居続けるなんてね。これはいけない。」

怯むどころか嫌悪感だけが増す。俺もトビーを睨み返してやるとヤツはゆるりと口角を上げた。

トビー「どうしてここが分かったかって顔をしてるね。なに、土地勘のある人達に協力してもらっただけさ。皆、いいかな?」

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トビーが指パッチンするタイミングで男達が何人か集まってきた。その男達は私服だが…

「お前ら、あの時絡んできた…!!」

そう、顔で分かった。屋上で俺を呼び出しイチャモンをつけてきたラムネファンクラブの幹部達だ。男達はトビーに群がり何かちょうだいのポーズをとってる。どういうことだ??

「彼らに君達の捜査と追跡をお願いしてたんだ。そしたら安っぽいコーヒーショップから君達が出てきたところを目撃したと連絡が入ってね、そのまま尾行をして貰ってたんだよ。」

そうか…!シャムロック・コーヒーで感じた不可解な視線の正体はアイツだったのか!!やられた…トビーのことばかり意識してたのが裏目に出てしまったか。

幹部の男「そういうことでトビーの旦那。早速約束のアレを頼みます。」

トビー「そうだったそうだった。いいよ、持っていくといい。」

男達にせがまれたトビーは懐から札束を取り出し、幹部の男達にばら撒いた。紙吹雪のように舞い散る紙幣を男達が必死に漁る。なんだよコレ………胸糞悪い。

トビー「あぁでも……君達の大事なアイドルを守る為にもうひと仕事お願いしてもいいかな?」

幹部の男「もちろんでっせ!で、俺達は何します?」

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トビー「今から僕が指示する場所にこのドブ鼠を運べ。」

すると男達が今度は俺の周りに群がり複数人で両腕を拘束し引き摺っていこうとする。嫌な予感しかしないので勿論暴れて抵抗した。

「何すんだよ!!金貰ってこんなことして恥ずかしくないのか!!」

幹部の男「オメーこそまだ痛い目みたくねーなら抵抗すんじゃねえ!!」

ここまで来て違和感に気付いた周りのカップル達が戸惑い騒めく。「なにあれ?」「ちょっとヤバくない?」「警察呼ぶか?」とヒソヒソ声が聞こえる。これならまだ……と思ったがその希望はあっけなく打ち消されてしまった。

トビー「ああ皆さんお楽しみ中すみません、映画の撮影なのでお気になさらず。今からロケ地を変えるところなのでご安心ください。」

トビーがそう声をかけただけでカップル達は安堵の表情を浮かべて次々と視線を外していった。コノクソヤロウ!!!!!!!!!

ラムネ「トビーさん待って、これは私が勝手にしたことなの!加納くんは悪くないわ!」

トビー「ラムネ、僕と一緒についていくんだ。今回は君にも分からせないといけないからね。」

あぁ…最悪の意味で長い夜になりそうだ……。

(次回↓↓)


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