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【あつ森】クリーム島青春与太話(共通ルート中編)

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食堂は全学年の生徒が利用出来るが、この学校で昼飯を食べる手段はかなり多いからいつもそんなに混んでいない。あー…前に購買のパンの入荷が間に合わないっていうアクシデントがあって、購買派の生徒達が食堂に押しかけてきた時は大変だったな。まぁそういう話は置いておこう。

俺はカウンターで食券とラーメンを交換すると、ハムカツとシベリアが取っておいてくれた席に座った。ここのしょうゆラーメンは食堂のメニューの中でも手頃な価格で腹を満たせる。食堂のメニューで食べたいものを特に決めてない時は大抵しょうゆラーメンにしている。

ハムカツ「あ……………」

ハムカツが何かに視線を取られたのか食事の手を止める。ハムカツの顔があまりにもぽけっとしているから、俺とシベリアも気になりハムカツの視線を追ってみた。

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視線の先にいたのは色とりどりのサラダを食べようとする清楚な雰囲気の女子生徒だった。

シベリア「あの子、猫宮ラムネじゃないか。ほぉ、いつ見ても可愛いねぇ。」

猫宮(ねこみや)ラムネ。俺たちの学年の間では成績優秀な心優しい美少女として頻繁に話題に出てくるので、俺も名前だけは何となく知っていた。だが実際に顔を見るのはこれが初めてだ。

ハムカツ「ラムネちゃんを拝めるなんて。今日はなんていい日なんだ。」

確かにこちらが見惚れてしまう程、猫宮ラムネは小綺麗で佇まいが丁寧だ。それに誰かと話している時は常にニコニコしている。これは皆にチヤホヤされるのもなんとなく頷ける。

ん?そういえば猫宮って単語、ついさっき聞いたような。

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すると食堂に誰かが入ろうとしているのを見つけた。教室で隣の席だった猫宮キャビアさんが席を覗きこんでいる。彼女もここで昼飯を取るのだろうか。

しかし猫宮さんは視線の先に何かを捉えるとすごく困ったような表情を浮かべてそのまま回れ右して食堂を出ていった。一体どうしたんだ?

シベリア「柊二。さっきからキョロキョロして、何かいたのか?」

ハムカツ「何も無いならさっさと飯食えよー。」

それもそうだ。昼休みの時間は限られている。俺は残っているラーメンを食べ切り、チャイムが鳴る時間までに教室へ戻った。

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今日1日の授業とホームルームが全部終わった後、俺は帰り支度をしようと荷物をまとめている。生徒の何人かは部活動の為に学校に残るだろうが、俺はどこの部活にも入ってない。放課後は必要以上に残らずさっさと下校する。家に持ち帰る荷物を全部鞄に入れ終えた時だった。

クラスの女子「加納くん、呼ばれてるよ。」

俺を?一体誰が?? クラスの女子に促され廊下に出てみると、そこには明らかに場違いの人物が立っていた。

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ルナ「ヤッホーしゅうちゃん!早速来ちゃった。」

ゆきみ「る、ルナさん。ここは2年生の教室ですよ。私達が行って大丈夫ですか?」

ゆきみの言う通りだ。この廊下は2年の教室しか繋がっていない。そんな場所を歳下の1年だけで下手に闊歩したら悪絡みされるかもしれないだろう。

ルナ「だーいじょうぶだよ。だってルナ、実年齢なら2年生だもん。」

本当に怖いもの知らずだな、コイツは。そもそもルナはどうやって俺のクラスの教室まで来たんだと思ったが、大方ゆきみから吐き出させたんだろう。

「そもそも2年の教室まで何しに来たんだ。」

ルナ「これからゆきみちゃんと一緒に部活見学に行くんだ。だったらしゅうちゃんも誘おうと思って迎えに来たの。」

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「部活見学?悪いけど俺は興味ないな。お前達だけで行ってこいよ。」

興味以前にそもそも俺は2年だ。新入生達に混じって見学に行くのはどうなんだ?明らかに俺、浮くだろ。

ルナ「えー!?一緒に行こうよ〜!しゅうちゃんと部活見学行きたい〜!」

ゆきみ「柊二くん、私からもお願いです。校舎の案内も兼ねて一緒に行ってくれませんか?」

駄々っ子モードのルナだけならともかく、期待の眼差しを向けたゆきみにまでお願いされると流石に断りづらい。…うん、今日だけだからな。

「…分かったよ、すぐ準備するからそこで待っててくれ。」

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2人に半ば強引に連れられた俺は部活見学がてら校舎を案内した。1年の頃から俺は部活動に興味が無かったから、生徒達が各々の場所で多種多様なことをしている姿を見るのは初めてだった。かなりの数を見学したと思うが、まだルナとゆきみのお眼鏡に叶う部活動は見つかってないようだ。

「次は体育館だな。今日はこれで最後にするぞ。」

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体育館に入ると、そこでは3つのグループがそれぞれ部活動っぽいことをしている。3つのうち2つのグループは体育館のフロアを半々に分けて活動してるようだ。1つはバスケをしてるからバスケ部なんだろう。もう1つはバレーボールを使ってるからバレー部か。

「ルナは今も運動得意なら、運動系の部活とかいいんじゃないか。」

ルナ「確かにルナは運動に自信があるけど…うーん。そうだしゅうちゃん!あっち行ってみたい。」

ルナが興味を示したのは体育館の壇上で活動してる3つめのグループのようだ。

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壇上ではジャージを着た複数の女子達が音楽に合わせて踊っている。1人1人動きに無駄がなく揃っているし、音楽の合間に女子生徒達が発する掛け声もハキハキしてよく通っている。

しばらくその様子を見ていると1人の女子生徒が俺達に気付いたのか、音楽を止めることを他の女子達に指示して休憩を促した。そして壇上から降りてダンスを見ていた俺達に近付いてくる。

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???「新入生かな?ようこそチアリーディング部へ…おや?」

話しかけてきた女子生徒は俺の顔をマジマジと見つめる。

???「わぉ!!キミ男子の入部希望者!?いいねー!!ウチは男子部員もウェルカムだよ。分からないことがあったらアタシ達先輩がじーっくり、手取り足取り教えてあ・げ・る。」

更に上半身を少し曲げ、わざと俺を見上げるような姿勢で顔を上げてウインクしてきた。正直、ちょっと色っぽいと思ったけど俺は色仕掛けにすぐ引っかかったりしないぞ。ただ着ているジャージの色から察するに俺より1つ上の学年だ。丁寧に、けど意思ははっきり伝えなければ。

「すみません。そういう冗談は好きじゃないですし、俺は入部希望者じゃないです。」

女子生徒はキョトンとした表情を浮かべたが、すぐにクスクスと笑いだした。

???「アハッごめんごめん!そうだろうとは思ってたの。そうだ、自己紹介がまだだったね。アタシは大神(おおがみ)モニカ。チアリーディング部の部長だよ、よろしくね。」

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ゆきみ「とっても素敵で見てると元気になれそうなダンスでした。」

モニカ「ありがとう!まだ練習段階なんだけどね。ねぇ、キミ達はチアリーディング部に興味ある?なんなら体験入部とかしちゃわない!?」

大神さんは捲し立てるようにルナとゆきみにぐいぐい入部を勧めてくる。特にゆきみは返事にすごく困っているみたいだ。ゆきみ、押しに弱いもんな。

モニカ「まぁ部活動は他にもいっぱいあるから、何処に行きたいかよく考えていっぱい悩みなさい。そうだ!折角来てくれたんだしコスチューム着てみる?」

ルナ「いいんですか?やったー!ゆきみちゃん、チアコス着てみようよ。」

ゆきみ「え??私はそんな…」

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部長の大神さんは大はしゃぎするルナと遠慮がちなゆきみを連れてどこかに行ってしまった。取り残された俺に構わず女子部員達は休憩したりダンスを続けている。この中途半端に放置されてる時間がしんどい。こっそり先に帰るか?

???「じー………」

1人の女子生徒の視線に気付いた。青のジャージからして俺と同じ学年の子か。

「あの、俺に何か??」

恐る恐る尋ねてみる。するとその女子生徒は目をクワっと見開いて俺に詰め寄ってきた。

???「ちょ!!アタイのこと忘れてるんかい!チョコ、甘露(かんろ)チョコだよ!」

「かんろチョコ?…あ!もしかして『たぬき中』の甘露か?」

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今思い出した。俺のことをガン見してた甘露チョコは中学時代のクラスメートだ。それも3回のクラス替えを経てもなお同じクラスであり続けた子だ。進路先を知らないまま別れたと思ってたが、俺と同じ学校に通ってたのか。

チョコ「ていうかアンタ何しに来たの!?ここチア部!女子しかいないとこ!」

「別に入部したいとかじゃなくて色々あって。ていうか久しぶりだな、甘露。相変わらず元気そうじゃないか。」

チョコ「うん…。久しぶり…て!!アタイは別に会えて嬉しいとか思ってないんだからね!?」

出た。この「結局どっちなんだ」と思う喋り方。中学の頃から変わってないな。俺と話す時の甘露は何故か捻くれていたり突き放すような態度を取ろうとしてる。本人はそうしているつもりなのだが全然本気に見えない。

モニカ「おーい、チョコちゃん!そろそろ練習始めるよー!!」

壇上から大神さんの呼ぶ声が聞こえてきた。チョコは大声で返事をして壇上に戻ろうとした。が、寸前に俺の方へ向き直りビシッと指さしてきた。

チョコ「アタイという存在に懲りたらもうチア部を覗きに来ないことね!」

なんだそりゃ。



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