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人称代名詞の攻略 ~本質から基本・応用まで~

はじめに ~すべては人称代名詞からはじまる~

ベトナム語の人称代名詞は数が多く、使い方が複雑でわかりづらい...…ベトナム語文法で学習者を最初に悩ますのがこの人称代名詞です。

英語の場合「I」と「you」の2つを覚えていれば会話はできますが、ベトナム語は性別、年齢、親密度合いなどによって様々な「あなた」と「わたし」が存在し、相手によってそれぞれ使い分けなければなりません。

つまり最初に人称代名詞の知識や使い方がしっかり頭に入っていないと会話の一言目すらまともに言えないのです。

「人称代名詞なんてもう知ってるよ!一人称はtôiだし、anhは年上の男性に使って、chịは年上の女性に使う二人称でしょ。簡単だよ!」と思ったあなたへ...

では以下の現象がなぜ起こるのかその理由を答えてみてください。

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1. ベトナム人はtôiをほとんど使わない。
2. 初対面の女性同士がお互いに二人称のchịで呼び合っていた。
3. ある男性がホテルでクレームを入れたらその男性と同年代くらいのマネージャーがきて、二人称のchú(=おじさん)を使われて謝罪された。
4. 妻が夫より年上であっても、夫は妻をchịではなくemと呼ぶ。
5. 普段はanh - emと呼んでいるカップルがケンカをしてtôi - ông / bàに変化した。
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以上の現象の理由をきちんと答えられない人はベトナム語の人称代名詞の本質を理解してないと言えるでしょう。
上の現象は決して例外的なものではなく、ベトナムでは日常的に起こりうることです。(※1~5の質問の解答はすべて本文中で解説しています)。

参考書にあるような年齢の上下を基準とした人称代名詞を覚えることは最初はもちろん大事ですが、それらは表面的な知識の一つにすぎません。人称代名詞の本質を理解していれば年齢による基準からずれたパターンでも自由に使いこなすことができます。

この記事を読んで人称代名詞の本質をしっかりと理解し、瞬間的、感覚的に人称代名詞を使いこなし、会話の第一声を自信を持って言えるようになりましょう。

読者の声

詳細目次

第一章 人称代名詞の起源と本質 ~儒教をキーワードに~

1. 儒教とは
2. 儒教とベトナムの歴史
3. 儒教と人称代名詞
4. 人称代名詞の本質は「仁」にあり

第二章 人称代名詞の基本

1. 会話に必須の二人称まとめ
2. 一人称の考え方 ~「あなた」は「わたし」である~
3. 人称代名詞の対応関係
4. tôiからの卒業
5. 二人称を瞬間的に出すコツ
6. 人称代名詞の類別詞的用法
 +α(補足解説) 動物と人称代名詞
7. 人称代名詞の複数形
 7.1 一人称複数形
 7.2 二人称複数形
 7.3 三人称複数形
 7.4 三人称のấyとtaの違い
 +α(補足解説) 南部弁における三人称の省略法則

第三章 (応用編) 人称代名詞による敬意の表し方

1. 一人称(主語)をつける
 1.1 文末の二人称
2. 見た目よりもあえて年上の人称代名詞を使う
 2.1 トマトはなぜ同年代からchúを使われたのか
 +α(補足解説) 空想上の人物や偉人の人称代名詞

第四章 (応用編) 人称代名詞による軽蔑の表し方、距離の取り方

1. 親疎の人称代名詞を使う
 1.1 人称代名詞における「親疎」とは?
 1.2 「親疎」を表す単語の代表例
 +α(補足解説) 不特定の人への人称代名詞
2. tôiやông - bàなどを使う
 2.1 tôi
 2.2 ông - bà ~「年齢差は距離感の差」~
 +α(補足解説) 夫婦や恋愛関係にある男女の人称代名詞

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