【疎開日記2020#11】 失恋にも似た
疎開生活7日目
4月6日月曜日。ブンタウのトイレの臭いマンションに、夜逃げでもするかのように引っ越してきて、やっと1週間が過ぎました。毎日何かが起きるので、盛りだくさんすぎてお腹いっぱいですが、まだまだこんな生活は続きます。
夫が会社でトイレの臭さをアピールしてくれたおかげ(?)で、同じマンション内の部屋が空いたら引っ越せる可能性が出てきました。私たちの希望はただ一つ、トイレが臭くない部屋に住むこと。簡単なようで簡単ではないリクエストです。
早速、今日の3時に内見に行けますと連絡がありました。二部屋見られるそうです。夫は仕事中なので、娘と2人で不動産屋さんと出かけることになりました。
一部屋目は同じ階の部屋。入るなり娘がウワーッと喜びの声をあげます。今の部屋よりずっと広い!
写真じゃわからないけれど、照明は埃だらけで、家具もボロボロなんだけど、しばらく狭い部屋に3人でギュッとしていたものだから、広いというだけでテンションが上がります。
でも、大事なのは部屋の広さではありません。そう、忘れちゃいけないトイレチェック!
マスクをつけながらの内見、広さにテンションが上がっていたので、忘れてそのまま通り過ぎるところでした。娘がマスクをずらして、お母さん!ここ、臭くないよ!このにおいなら大丈夫!と言ってくれたので、ホッと一安心。
娘はこのカプセルのようなシャワーが気に入った様子。ホーチミンの友達の部屋にもこういうシャワーがあって、娘はそこが気になっていたらしく、〇〇のお部屋と同じだねと大喜び。
同じ並びなので、西日は当たるし、2ベッドルームあるけれど、エアコンは一部屋にしかついていないという突っ込みどころはいろいろある物件ですが、まずは広さとトイレのにおいクリアの2つのポイントで有力な候補となりました。
続いてもう一部屋。さっきが思ったより悪くなかったので、もっといい部屋かもしれないという期待で、バキバキに筋肉痛の足ですら足取りが軽くなります。
おおぅ!リビングはザ・ベトナムな木製家具!
なのに、ダイニングはこんな感じ。テイストが違いすぎる!
そして、バスルームもさっきとは違う意味でザ・ベトナムな感じ。すみっこに「ゴキげんよう、お久しブリ」さんが死んでらして、娘がこのシャワーは絶対嫌と言うので、すみません、これはちょっと無理です、となりました。
シャワー浴びるとトイレから洗面所からビチョビチョになるこういうタイプ、ベトナムでは結構あるのですが、娘は苦手なようです。
娘は日本のお風呂に入りたいといつも言っています。ホーチミンの部屋もシャワーのみ。でも、近くに韓国の健康ランドみたいなのがあるので、お風呂に入ろうと思ったらそこで入れます、ホーチミンなら。
そうそう、筋肉痛があまりに酷くて、それをかばうので腰に痛みがきてしまい、夫がマッサージをしてくれたのですが、うつ伏せに寝っ転がったら夫が一言。
「膝の裏、汚れてるよ」
ヒィー!見えないところ、手抜いてた!
娘と一緒だからゆっくり入れないというのは言い訳でしかありません。深く反省して、体をゴシゴシ洗うようにしました。
そんなわけで、お風呂が恋しい我が家。シャワーだけでもいいから、せめて気持ち良く入れるところがいい。
二部屋見終わって、夫に連絡。とりあえず見たままを話し、最初に見た方でいいんじゃないか?という結論に。
もう終業時間なので明日会社と相談するねと言われ、娘と引越したら部屋で何しようと話に花が咲きます。広い部屋でYou Tubeで音楽かけながら踊ろうか、あの部屋ならヨガマット何枚敷けるかね、走り回れるね、と。
翌7日。
契約に向けて会社側が動いてくれることとなりました。わたしたちは疎開中の住居として使いますが、その後は会社の従業員用部屋になるので、会社を通して契約してもらいます。
こちらの賃貸契約は、契約前に大家といろいろ交渉します。例えば、電化製品などの設備で欲しいものがあれば買ってもらうことができるし、古いものを交換してくださいということもできます。入居前のエアコンの掃除とか、換気扇の掃除とか、頼めばやってくれることもあります。全ては大家との交渉次第。
言ってダメなら仕方がないので、とりあえずエアコン掃除と扇風機、ウォーターサーバーが欲しいと伝えてもらうことにしました。
そして、8日。
すっかり契約の話が進んでいるものと思っていたら、出勤した夫から連絡があり。大家さん曰く、あの部屋は構造上の問題で排水が悪いらしい。どのくらい水の流れが悪いかわからないから、一回チェックに行ってくれないか?
そっか、それは困るな。シャワー浴びても、アワアワの水がなかなかひかなくて、足元だけ水に浸かったままで待ってるのって寒いんだよね。水がひいても泡が残るから、何度も何度も水をかけての繰り返し、イライラするんだよね。経験者はわかります。
じゃ、一回見に行こう。何時でも良いよ。
部屋を見に行く気満々で待っていると、大家さんは今日都合が悪いそうだと連絡を受けます。その上、他にも部屋を見にきている人がいたから、あの部屋に決めるなら早く決めて欲しいと言われたとも。
うーん、嫌な予感。大家は早くわたし達に契約させようとしている?排水具合によって契約がなくなるのを恐れて、チェックする前に決めさせようとしている?
どうしよう、どうしよう、でも、娘はあの部屋気に入っていたし…
排水が少しくらい悪くても、今の部屋よりマシならいいか、契約話を進めてもらおう。夫婦で話し合った結果、やはりあの部屋でいこうということになりました。
そして、夕方、夫が帰宅。
ちょうど、ホーチミン で14日間マンション隔離されていた友人が、晴れて解放された日だったので、ネット飲み会をしようとビールで乾杯しているところでした。
あの部屋、他の人に借りられちゃったって。
えええーーーー!なんてこった、パンナコッタ!(茂造風に)
何ていうか、好きでもない人に告白されて、返事待ってるって言われたからどうしようか悩んで、そんなに好きでもないけど良い人っぽいからちょっと付き合うのもありかもっていう気分になってきたその時に、やっぱりさっきの告白なし!別の人と付き合うから!って言われたような気分。
そんな経験ないけれど。
告白してないのに振られたような、軽く失恋した気分。
横で夫との会話を聞いていた娘が、あの部屋住めないの?ヤダー!と泣き始め、声はだんだん大きくなっていき…もう手がつけられないくらいの大号泣!
飲んでる場合じゃないや、ごめんね、と断りを入れて、娘をなだめるわたし。
たぶん、日頃のストレス、もう3ヶ月目だもんね外出自粛生活も。ブンタウに来て一番辛いのは、わたしじゃなく娘だったのかもしれない。友達と遊ぶこともできないし、おもちゃだって少ししか持ってこられなかったし。好きなお菓子も買えないし、走り回ることもできないし、狭い部屋で映画を見ながらじっと耐えてたのが、大爆発起こしちゃったんだよね。ごめんよ、娘。
それでも、わたしと夫は思いました。あの部屋はわたし達が住むべきところじゃなかったというだけ。たぶん大家さんはいろいろ注文つけてくる外国人が面倒臭かたんだろうな。住めたとしても、大家さんとも気が合わなくて、修理とかトラブル発生した時に揉めることになったはず。先にわかってよかった!
こんなことになるなら、もうこの部屋のままでいいんじゃないか?
心の中で、そう呟いているわたしがいました。
が、この物件探しの旅はまだ始まったばかり。その後数日でまたまた急展開を迎えることとなります。ああ、忙しい。
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